カテゴリ:沖縄県(地域)
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+ | 県が24日発表した沖縄子ども調査概要版からは、子育て世代の収入が低い沖縄で、家庭の困窮が子どもの経験の幅を狭め、大学進学などの進路に影を落としている状況が浮かび上がる。<br> | ||
+ | 小学1年生の保護者のほか、小学5年生と中学2年生、その保護者を対象にした調査の結果と、識者の考察を紹介する。<br> | ||
+ | 沖縄子ども調査学識協力者(敬称略)<br> | ||
+ | 山野良一(千葉明徳短期大教授) 加藤彰彦(沖縄大名誉教授) 湯澤直美(立教大学教授) 阿部彩(首都大学東京教授) 中村強士(日本福祉大准教授)<br> | ||
+ | '''□将来の夢 抱く希望 県「世帯差はない」''' | ||
+ | 将来の夢はあるか-。<br> | ||
+ | 「ある」と答えた小5の割合は84・1%、中2は71・5%。貧困世帯の子も、そうでない子も、夢のある、なしに差はほぼなかった。<br> | ||
+ | 貧困世帯の子どもに夢の「ない」割合が多く、家庭の経済状況と将来の夢の有無に関係性がみられた大阪府子ども調査とは異なる結果になった。<br> | ||
+ | 将来の夢が「ある」と答えた小5の割合(かっこ内中2)は、貧困世帯の子で85・2%(73・5%)、非貧困世帯の子で83・8%(70・5%)だった。<br> | ||
+ | 両者の割合に微妙な差はあるものの、県は「統計的にほぼ差はない」と分析している。<br> | ||
+ | 一方で、貧困かそうでないかにかかわらず、年齢を重ねるにつれて夢を持たない子の割合は増える傾向だ。<br> | ||
+ | 将来の夢が「ない」と答えた中2に理由を尋ねたところ、最多の67・2%を占めた回答が「具体的に、何も思い浮かばないから」。<br> | ||
+ | 次いで「(理由が)わからない」で16%、「夢がかなうのが難しいと思うから」が7・8%だった。<br> | ||
+ | '''□家計と子どもへの支出 子の成長と共に家計赤字'''<br> | ||
+ | 子どもが年齢を重ねるにつれて家計が苦しくなる-。<br> | ||
+ | そんな貧困家庭の姿が浮き彫りになった。<br> | ||
+ | 小1から小5、中2と上がるにつれて、家計が貯金の切り崩しか、借金の「赤字だ」と答える保護者の割合が増加。<br> | ||
+ | 最も「赤字」の割合が高い、中2の貧困世帯では、半数超に当たる50・7%に達した。<br> | ||
+ | 親の経済的事情によって、子どもに「経験格差」が生まれかねない状況も明らかになった。<br> | ||
+ | 貧困世帯のうち、経済的に子どもを学習塾に通わせられない保護者の割合は小1で49・1%、小5で53・4%、中2で46・6%と、約半数。<br> | ||
+ | スポーツなどの習い事も似た傾向で、3学年とも4割前後で推移。<br> | ||
+ | 経済状況で子どもの学びの機会が制限されている。<br> | ||
+ | 家族旅行の出費も、大きな負担だ。<br> | ||
+ | 年に1回の家族旅行が、経済的にできないと答えた貧困世帯の保護者は小1で71・9%、小5で81・7%、中2で79・7%にもなる。<br> | ||
+ | 塾や習い事、家族旅行は、子ども同士で共通の会話に上ることも多い。<br> | ||
+ | こうした経験のできない子どもが、会話に入れず「コミュニケーション上の課題を抱えることにもつながっていく」(湯澤直美立教大学教授)懸念も指摘されている。<br> | ||
+ | 一方で、貧困世帯で小5と中2の保護者の約1割が、経済的な事情で歯科医院に行かせられないとも答えた。<br> | ||
+ | 子どもたちの将来を支える健康な体の維持にも、黄信号がともっている。<br> | ||
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+ | 保護者の子ども期と今の生活状況を比較・分析したところ、15歳の時の状況が「普通」だった人に比べ、「大変苦しい」「やや苦しい」状況だった人の方が、今も「大変苦しい」と感じていることが分かった。<br> | ||
+ | 今の暮らしが「大変苦しい」と答えた中2の保護者でみると、15歳の時に「普通」だった人は7・1%だが、「やや苦しい」状況にあった人は13・2%、「大変苦しい」状況にあった人は19%に上る。<br> | ||
+ | 子ども期の生活が苦しかった保護者ほど、今も厳しい生活を余儀なくされている実態が浮かび上がる。<br> | ||
+ | その傾向は、買い物にも現れる。<br> | ||
+ | 中2の保護者の子ども期と、現在の「食料を買えない経験」を分析すると、「普通」だった人は24・3%だが、「やや苦しい」状況にあった人は33・2%、「大変苦しい」状況にあった人は47・2%に上った。<br> | ||
+ | '''□学校生活の楽しさ ほぼ全ての子 学校に楽しみ'''<br> | ||
+ | 小5、中2とも、貧困世帯の子どもかどうかで、学校生活の楽しさに差はほぼなかった。<br> | ||
+ | ただ全体平均で、学校生活で先生に会うのが「楽しみではない」と答えた割合は小5の17%に比べ、中2は34・4%に倍増した。<br> | ||
+ | だが大阪子ども調査をみると、先生に会うのが「楽しみではない」と答えた中2の割合は49%に上り、沖縄の中2に比べ10ポイント以上も高かった。<br> | ||
+ | 一方で、ほぼ全ての子どもが、多かれ少なかれ学校に楽しみを見つけていることも浮き彫りになった。<br> | ||
+ | 学校生活を8項目に分類したうち、全てに「とても楽しみ」「楽しみ」「少し楽しみ」のどれかを選択した小5の割合は36・5%、中2は36・9%。<br> | ||
+ | 逆に8項目全てに「楽しくない」「無回答」のいずれかを選んだ小5は0・7%、中2は0・8%にとどまった。<br> | ||
+ | '''□医療サービス 小5貧困世帯 20%受診渋る'''<br> | ||
+ | 「過去1年間に医療機関で子どもを受診させた方がよいが、実際には受診させなかったことがあるか」との問いに対し、小1と小5の貧困世帯のそれぞれ16・6%、20・5%が「ある」と回答し、非貧困世帯の12・2%、14・6%を上回った。<br> | ||
+ | 有意差はなかったが、中2も貧困世帯の方が「ある」と答える割合が多かった。<br> | ||
+ | 貧困の有無にかかわらない全体の受診させなかった理由では、どの学年も「最初は受診させようと思ったが、子どもの様子をみて受診させなくてもよいと判断した」が40~57%で最多。<br> | ||
+ | 「多忙で医療機関に連れて行く時間がなかった」21~24%、「医療機関で自己負担金を支払えなかった」12~16%の順で続いた。<br> | ||
+ | 大阪子ども調査では「実際に受診させなかった」ことがあった割合は、小5、中2とも20%で沖縄調査(16・2%、15・4%)より高かったが、「多忙で時間なし」は小5で18%、中2で22%(沖縄23・6%、24・4%)、「自己負担金払えず」はそれぞれ11%、10%(沖縄16・2%、15・6%)で、沖縄の方が高かった。<br> | ||
+ | '''□放課後の居場所 年収300万円未満少ない学童利用'''<br> | ||
+ | 子どもの放課後の居場所について小1保護者へのアンケート結果では、年収300万円未満世帯の子どもは学童保育施設(放課後児童クラブ)の利用が2~3割前後にとどまるが、300万円以上は4~6割前後に増加。<br> | ||
+ | 年収300万円以上になると、自宅より学童利用の割合が上回る。<br> | ||
+ | 沖縄の学童は大半が民設民営で、公設が主流の全国より利用料が割高。<br> | ||
+ | 月額1万円を超えるケースも珍しくなく、低所得世帯が利用したくてもできない状況がある。<br> | ||
+ | 民設民営の多さは、米軍統治下で本土並みの児童福祉行政が立ち遅れたことが大きな要因だ。<br> | ||
+ | 一方、低所得ほど児童館などの利用率が高い傾向にあり、学童に入っていない子どもの受け皿として、18歳まで、誰でも無料で利用できる児童館が一定の役割を担っていることがうかがえる。<br> | ||
+ | 一方、年収が900万円以上になると、再び自宅を居場所とする子どもが増えている。<br> | ||
+ | ただ、こうしたデータが出た背景について詳細に吟味するのはこれからだ。<br> | ||
+ | 県の担当者は「保護者の所得や就労状況、家族構成などをクロス分析することで、しっかりと実態把握したい」と話している。<br> | ||
+ | '''立教大・湯澤直美教授 雇用問題と相関関係強く'''<br> | ||
+ | 沖縄子ども調査では、学識協力者で立教大の湯澤直美教授(社会福祉学)が、中2保護者の回答票などをもとに考察を加えている。<br> | ||
+ | まずは世帯収入だ。<br> | ||
+ | 300万円未満が39%に上る一方、700万円以上は9.4%。「収入」のとらえ方などが違うため単純比較はできないが、2012年の内閣府の全国調査では300万円未満が17%にとどまる半面、700万円以上は35.2%に上り、低収入な沖縄の実態が読み取れる。<br> | ||
+ | 父・母の学歴と、現在の雇用状態や年収との相関関係も分析。<br> | ||
+ | 父親が中卒では父自身の年収が200万円未満層は60%なのに対し、大学・大学院卒は10.1%と大きな開きがある。<br> | ||
+ | 雇用形態にも学歴の差が顕著で、大学・大学院卒ほど正規の割合が高い。<br> | ||
+ | また父・母が大学・大学院卒の場合、大学までの教育を「経済的に受けさせられない」という回答は5%前後だが、中卒では4割弱に上る。<br> | ||
+ | これらのデータから、湯澤教授は「子どもの貧困対策には、保護者の安定雇用と所得保障の問題が切り離せないことが改めて示された」と語る。<br> | ||
+ | 家計の状況を聞いた設問では、回答した小1、小5、中2保護者の約6~8人に1人に借金があり、約3~4人に1人が赤字としたことにも着目。<br> | ||
+ | 「無償である義務教育期でも家計状況は厳しく、保護者の負担を減らす就学援助は公的支援制度として非常に重要だ」と強調する。<br> | ||
+ | 県は2016年度以降も、さらなるデータ分析を進め政策立案に生かす。<br> | ||
+ | 湯澤教授は「経済困窮が保護者に与える精神的な負荷や雇用状況などをより丁寧に分析・検討し、子どもの3人に1人が貧困状態という深刻な数値の背景を探りたい」と話す。<br> | ||
+ | 〔2016年4月3日・貧困ネット、平成28(2016)年3月25日 沖縄タイムス 朝刊〕 <br> | ||
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ひとり親世帯の43%に、経済的理由で食料を買えなかった経験があることも判明した。<br> | ひとり親世帯の43%に、経済的理由で食料を買えなかった経験があることも判明した。<br> | ||
地方版の貧困率は、地域の実態に即した対策には不可欠のデータだが、独自に算出した都道府県は沖縄県が初めて。<br> | 地方版の貧困率は、地域の実態に即した対策には不可欠のデータだが、独自に算出した都道府県は沖縄県が初めて。<br> | ||
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県経営者協会も、子どもの貧困の改善に向けて所得や雇用の安定の必要性で一致した。<br> | 県経営者協会も、子どもの貧困の改善に向けて所得や雇用の安定の必要性で一致した。<br> | ||
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2016年4月3日 (日) 20:08時点における版
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目次 |
沖縄県
周辺ニュース
◆[なくせ 子どもの貧困]沖縄子ども調査概要版 親の所得差 進路に影 (1面参照)
県が24日発表した沖縄子ども調査概要版からは、子育て世代の収入が低い沖縄で、家庭の困窮が子どもの経験の幅を狭め、大学進学などの進路に影を落としている状況が浮かび上がる。
小学1年生の保護者のほか、小学5年生と中学2年生、その保護者を対象にした調査の結果と、識者の考察を紹介する。
沖縄子ども調査学識協力者(敬称略)
山野良一(千葉明徳短期大教授) 加藤彰彦(沖縄大名誉教授) 湯澤直美(立教大学教授) 阿部彩(首都大学東京教授) 中村強士(日本福祉大准教授)
□将来の夢 抱く希望 県「世帯差はない」
将来の夢はあるか-。
「ある」と答えた小5の割合は84・1%、中2は71・5%。貧困世帯の子も、そうでない子も、夢のある、なしに差はほぼなかった。
貧困世帯の子どもに夢の「ない」割合が多く、家庭の経済状況と将来の夢の有無に関係性がみられた大阪府子ども調査とは異なる結果になった。
将来の夢が「ある」と答えた小5の割合(かっこ内中2)は、貧困世帯の子で85・2%(73・5%)、非貧困世帯の子で83・8%(70・5%)だった。
両者の割合に微妙な差はあるものの、県は「統計的にほぼ差はない」と分析している。
一方で、貧困かそうでないかにかかわらず、年齢を重ねるにつれて夢を持たない子の割合は増える傾向だ。
将来の夢が「ない」と答えた中2に理由を尋ねたところ、最多の67・2%を占めた回答が「具体的に、何も思い浮かばないから」。
次いで「(理由が)わからない」で16%、「夢がかなうのが難しいと思うから」が7・8%だった。
□家計と子どもへの支出 子の成長と共に家計赤字
子どもが年齢を重ねるにつれて家計が苦しくなる-。
そんな貧困家庭の姿が浮き彫りになった。
小1から小5、中2と上がるにつれて、家計が貯金の切り崩しか、借金の「赤字だ」と答える保護者の割合が増加。
最も「赤字」の割合が高い、中2の貧困世帯では、半数超に当たる50・7%に達した。
親の経済的事情によって、子どもに「経験格差」が生まれかねない状況も明らかになった。
貧困世帯のうち、経済的に子どもを学習塾に通わせられない保護者の割合は小1で49・1%、小5で53・4%、中2で46・6%と、約半数。
スポーツなどの習い事も似た傾向で、3学年とも4割前後で推移。
経済状況で子どもの学びの機会が制限されている。
家族旅行の出費も、大きな負担だ。
年に1回の家族旅行が、経済的にできないと答えた貧困世帯の保護者は小1で71・9%、小5で81・7%、中2で79・7%にもなる。
塾や習い事、家族旅行は、子ども同士で共通の会話に上ることも多い。
こうした経験のできない子どもが、会話に入れず「コミュニケーション上の課題を抱えることにもつながっていく」(湯澤直美立教大学教授)懸念も指摘されている。
一方で、貧困世帯で小5と中2の保護者の約1割が、経済的な事情で歯科医院に行かせられないとも答えた。
子どもたちの将来を支える健康な体の維持にも、黄信号がともっている。
□保護者の子ども期の状況と現状 苦しい生活状況 連鎖
保護者の子ども期と今の生活状況を比較・分析したところ、15歳の時の状況が「普通」だった人に比べ、「大変苦しい」「やや苦しい」状況だった人の方が、今も「大変苦しい」と感じていることが分かった。
今の暮らしが「大変苦しい」と答えた中2の保護者でみると、15歳の時に「普通」だった人は7・1%だが、「やや苦しい」状況にあった人は13・2%、「大変苦しい」状況にあった人は19%に上る。
子ども期の生活が苦しかった保護者ほど、今も厳しい生活を余儀なくされている実態が浮かび上がる。
その傾向は、買い物にも現れる。
中2の保護者の子ども期と、現在の「食料を買えない経験」を分析すると、「普通」だった人は24・3%だが、「やや苦しい」状況にあった人は33・2%、「大変苦しい」状況にあった人は47・2%に上った。
□学校生活の楽しさ ほぼ全ての子 学校に楽しみ
小5、中2とも、貧困世帯の子どもかどうかで、学校生活の楽しさに差はほぼなかった。
ただ全体平均で、学校生活で先生に会うのが「楽しみではない」と答えた割合は小5の17%に比べ、中2は34・4%に倍増した。
だが大阪子ども調査をみると、先生に会うのが「楽しみではない」と答えた中2の割合は49%に上り、沖縄の中2に比べ10ポイント以上も高かった。
一方で、ほぼ全ての子どもが、多かれ少なかれ学校に楽しみを見つけていることも浮き彫りになった。
学校生活を8項目に分類したうち、全てに「とても楽しみ」「楽しみ」「少し楽しみ」のどれかを選択した小5の割合は36・5%、中2は36・9%。
逆に8項目全てに「楽しくない」「無回答」のいずれかを選んだ小5は0・7%、中2は0・8%にとどまった。
□医療サービス 小5貧困世帯 20%受診渋る
「過去1年間に医療機関で子どもを受診させた方がよいが、実際には受診させなかったことがあるか」との問いに対し、小1と小5の貧困世帯のそれぞれ16・6%、20・5%が「ある」と回答し、非貧困世帯の12・2%、14・6%を上回った。
有意差はなかったが、中2も貧困世帯の方が「ある」と答える割合が多かった。
貧困の有無にかかわらない全体の受診させなかった理由では、どの学年も「最初は受診させようと思ったが、子どもの様子をみて受診させなくてもよいと判断した」が40~57%で最多。
「多忙で医療機関に連れて行く時間がなかった」21~24%、「医療機関で自己負担金を支払えなかった」12~16%の順で続いた。
大阪子ども調査では「実際に受診させなかった」ことがあった割合は、小5、中2とも20%で沖縄調査(16・2%、15・4%)より高かったが、「多忙で時間なし」は小5で18%、中2で22%(沖縄23・6%、24・4%)、「自己負担金払えず」はそれぞれ11%、10%(沖縄16・2%、15・6%)で、沖縄の方が高かった。
□放課後の居場所 年収300万円未満少ない学童利用
子どもの放課後の居場所について小1保護者へのアンケート結果では、年収300万円未満世帯の子どもは学童保育施設(放課後児童クラブ)の利用が2~3割前後にとどまるが、300万円以上は4~6割前後に増加。
年収300万円以上になると、自宅より学童利用の割合が上回る。
沖縄の学童は大半が民設民営で、公設が主流の全国より利用料が割高。
月額1万円を超えるケースも珍しくなく、低所得世帯が利用したくてもできない状況がある。
民設民営の多さは、米軍統治下で本土並みの児童福祉行政が立ち遅れたことが大きな要因だ。
一方、低所得ほど児童館などの利用率が高い傾向にあり、学童に入っていない子どもの受け皿として、18歳まで、誰でも無料で利用できる児童館が一定の役割を担っていることがうかがえる。
一方、年収が900万円以上になると、再び自宅を居場所とする子どもが増えている。
ただ、こうしたデータが出た背景について詳細に吟味するのはこれからだ。
県の担当者は「保護者の所得や就労状況、家族構成などをクロス分析することで、しっかりと実態把握したい」と話している。
立教大・湯澤直美教授 雇用問題と相関関係強く
沖縄子ども調査では、学識協力者で立教大の湯澤直美教授(社会福祉学)が、中2保護者の回答票などをもとに考察を加えている。
まずは世帯収入だ。
300万円未満が39%に上る一方、700万円以上は9.4%。「収入」のとらえ方などが違うため単純比較はできないが、2012年の内閣府の全国調査では300万円未満が17%にとどまる半面、700万円以上は35.2%に上り、低収入な沖縄の実態が読み取れる。
父・母の学歴と、現在の雇用状態や年収との相関関係も分析。
父親が中卒では父自身の年収が200万円未満層は60%なのに対し、大学・大学院卒は10.1%と大きな開きがある。
雇用形態にも学歴の差が顕著で、大学・大学院卒ほど正規の割合が高い。
また父・母が大学・大学院卒の場合、大学までの教育を「経済的に受けさせられない」という回答は5%前後だが、中卒では4割弱に上る。
これらのデータから、湯澤教授は「子どもの貧困対策には、保護者の安定雇用と所得保障の問題が切り離せないことが改めて示された」と語る。
家計の状況を聞いた設問では、回答した小1、小5、中2保護者の約6~8人に1人に借金があり、約3~4人に1人が赤字としたことにも着目。
「無償である義務教育期でも家計状況は厳しく、保護者の負担を減らす就学援助は公的支援制度として非常に重要だ」と強調する。
県は2016年度以降も、さらなるデータ分析を進め政策立案に生かす。
湯澤教授は「経済困窮が保護者に与える精神的な負荷や雇用状況などをより丁寧に分析・検討し、子どもの3人に1人が貧困状態という深刻な数値の背景を探りたい」と話す。
〔2016年4月3日・貧困ネット、平成28(2016)年3月25日 沖縄タイムス 朝刊〕
周辺ニュース
◆ <子どものいま これから>「子ども貧困基金」可決 県、市町村の就学支援補助 県議会2月定例会
県議会2月定例会で、子どもの貧困対策に約30億円を積み立てる「県子どもの貧困対策推進基金条例」が8日、可決された。
県は、県内の子どもを取り巻く厳しい貧困状況を解消する目的で、県や市町村が実施する事業に基金から費用を拠出する。
市町村が実施主体の就学援助に対しては次年度以降、県からの一部補助を検討。
都道府県による就学援助への補助は、全国的に例がなく画期的な取り組みとなる。
基金の設置期間は次年度から2021年度まで。就学援助への補助は、利用者の増加分を想定している。
県青少年子ども家庭課は「就学援助の認定基準を満たしている人を、できるだけ早く受給させるようにしてほしい。
市町村の財政負担が急激に増える分を支援したい」と話している。
県事業では、県による子どもの貧困実態調査の詳細分析や、貧困の世代間連鎖を把握するための調査費用に基金を活用する。
県は市町村に対して、子どもの貧困対策につながる施策の立案を呼び掛けている。
今後、市町村事業の内容を聞き取り、対象事業を決める。
県は支援対象の市町村事業としては、放課後児童クラブの利用料軽減や学力保障などを検討している。
〔2016年3月17日・貧困ネット、平成28(2016)年3月9日 琉球新報 朝刊〕
周辺ニュース
◆生活保護費以下の収入で暮らす子育て世帯の割合が13・8%となり、1992年から20年間で倍増したとの調査結果を山形大学の戸室准教授がまとめた。
都道府県別の貧困率では沖縄が最も高く、大阪(21・8%)、鹿児島(20・6%)と続いた。
准教授は「全国で子どもの貧困が深刻化している」と警鐘を鳴らしている。
〔2016年3月8日・貧困ネット〕
周辺ニュース
◆沖縄県が、子どもの貧困の調査結果をまとめた。
「子どもの貧困率」は29・9%で、全国平均16・3%の実に1.8倍。
ひとり親世帯の43%に、経済的理由で食料を買えなかった経験があることも判明した。
地方版の貧困率は、地域の実態に即した対策には不可欠のデータだが、独自に算出した都道府県は沖縄県が初めて。
〔2016年3月8日・貧困ネット〕
周辺ニュース
◆沖縄県は、児童養護施設の退所後に進学や就職をする人の生活を支援する、無利子の貸付事業を新たに実施する。
貸し付けは家賃補助(月3万2千円)、生活費(月5万円)、資格取得(上限25万円、1回限り)の三つ。
一定期間就労を継続すれば返還を免除。実質的な「給付」事業として自立支援に繋げたい考え。
〔2016年3月2日〕
周辺ニュース
◆子どもの貧困問題で、沖縄県の経済界も対応策の検討を始めた。
非正規率や1人当たり県民所得が全国最下位という情勢下で、経済界の役割は欠かせない。
沖縄経済同友会は2016年度の重点施策に貧困対策を盛り込むことを表明。
県経営者協会も、子どもの貧困の改善に向けて所得や雇用の安定の必要性で一致した。
〔2016年3月2日〕
周辺ニュース
◆沖縄県は来年度、子どもの貧困に対応する基金を創設する方針だ。
市町村の取り組みを支援し、困難を抱える子どもを全県的に救済するのが主な目的。
県単独で30億円規模、期間は6年間の案があり、枠組みや具体的な使途は最終調整している。
子どもの貧困対策の基金を都道府県レベルで設置するのは極めて異例。
〔2016年2月4日・貧困ネット〕
周辺ニュース
◆内閣府が来年度の沖縄関係予算で10億円を計上した「子どもの貧困対策事業」で、那覇市は全17中学校区に「貧困対策支援員」を配置することを柱とした総額2億5千万円の事業を実施する。
浦添市や南城市なども支援員の配置を計画するなど、沖縄県内の自治体では同予算を活用した事業の検討が本格化している。
〔2016年2月3日・貧困ネット〕
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