公立久米島病院
公立久米島病院
種類・内容 | 病院 |
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所在地 | 〒 沖縄県久米島町 |
運営者・代表 | |
連絡先 | TEL 098-985-5555 |
「発達障害を知ろう~合理的配慮とユニバーサルデザイン~」
公立久米島病院小児科 渡邉幸
4月2日は『世界自閉症啓発デー』でした。2007年に国連総会で決議され、毎年この期間に、全世界の人に自閉症をはじめとする発達障害について理解してもらう取り組みが行われています。
国連ではまた、世界で発達障害を早期発見・介入するシステムや、教育プログラムの充実、社会の理解や、平等に社会に参加できる環境づくりを強化していけるよう、推進しています。
日本では2024年4月から「合理的配慮の提供が義務化」されました。
これは、行政機関や事業者は事業を行うにあたり、障害のある人から「社会的バリアを取り除いてほしい」と意思表示があった場合には、建設的な話し合いのもと、事業者の負担が過重にならない範囲で配慮を行う義務です。
内閣府の例を示すと聴覚の過敏があるお子さんが飛行機の音が聞こえると興奮して授業に集中できない、という場合に、保護者から「教室の窓を防音にしてください」と訴えがあった場合。
塾や学校は「防音窓の設置は費用面からも難しい」「でも、飛行機が通る時間に教員がイヤーマフを使う様伝えることはできる」など、実施可能な方法でお互いが納得できる方法を導くことが大事とされています。
「前例がない」「特別扱いできない」などの理由で合理的配慮を断ることはできないという、画期的な法律です。
一方、障害の有無、性別、文化の違いなどに関わらず、誰にとっても使いやすい環境デザインを「ユニバーサルデザイン」と言います。
駅の標識やトイレをはじめ、街の中にユニバーサルデザインは実は沢山あります。
教育の場でも「学びのユニバーサルデザイン:Universal Design for
Learning( UDL )」という考え方が世界的に広がっています。
これは、発達障害の有無に関わらず、誰もが学びやすい学習環境のデザインです。
例えば、授業の流れや構成をあらかじめ示したり、口頭で説明するときは「1つ目~、2つ目~」と簡潔に伝えたり、「声の大きさ表」などを掲示することもUDLです。
書くのが苦手な人は黒板を写真に撮ることで書く量を減らせたり、読むのが苦手な人は教科書を読み上げるソフトを使えたりと選択できるようにすることもUDLです。
合理的配慮もユニバーサルデザインも障害のある人もない人も社会に「平等」に参画するために貴重な考え方です。
「合理的配慮の義務化」について詳しく知り合い方は下のURLから詳細なパンフレットを見ることができます。
(出典:内閣府政策統括官 障害者施策担当)
【URL】https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/pdf/gouriteki_hairyo2/print.pdf
〔広報くめじま 2024年5月号〕
公立久米島病院だより
1「小沢浩先生講演会『発達障害と不登校について』のご紹介」
公立久米島病院小児科 渡邉幸
東京都島田療育センターはちおうじ(通称:島はち)と公立久米島病院との発達支援連携システム「久米島ゆいまーるプロジェクト」は今年で5年目を迎えました。
本プロジェクトでは島はちから月1回リハビリスタッフや医師が来島し、久米島病院でお子さんの療育や診察を行い、病院スタッフへの専門的助言・指導を行ったり、年数回専門職向けの勉強会や講演会等を行っています。
今回は2023.11月3日に行われた小沢浩医師(島はち所長)による講演会の中から「不登校について」ご紹介いたします。
1)不登校の背景
不登校は中学生6.0%、小学生1.7%(令和4年)であり、30年前と比べ中学生6倍、小学生12倍に増えています。
不登校になる背景としては、1)勉強不適応、2)対人関係不適応、3)心身の不調、4)家庭的要因などがありますが、最近ではいわゆる「境界知能」( IQ:70~84)の子どもの中で学習困難から不登校に至る例が少なくないことが指摘されています。
小沢先生らの研究では、中学生においては境界知能の児においては、I Qが高めの児の方が不安や抑うつの指標が高いという結果もあり、子どもの学習困難にどのように対応するかは大きな課題と言えます。
2)不登校の経過
一般的な経過としては、少しずつ登校できなくなる前駆期があり、親子ともに最も辛い混乱期を通過し、休養期を経て少しずつ外に向かうことができる回復期へと向かいます(図1)。
不登校のお子さんの中には、学校に行けなくなる過程での様々な辛い体験がトラウマ(心の傷)となってしまうことがあります。
トラウマ記憶はその時の映像・感覚・感情がそのまま「冷凍保存」されるため、日常のふとした時に記憶が蘇ると(フラッシュバック)、まるで今そのことが起こったような感覚となります。
それが繰り返されることにより、神経が高ぶった状態が続いたり、その感覚を避けるためにぼーっとしたりと、お子さんの心身への大きな負担となります。
図1 小柳憲司「学校に行けない子どもたちへの対応ハンドブック」新興医学出版社
3)不登校の支援
小沢先生は、段階的に不登校支援を行っていくために「不登校の居場所分類」(図2)を提案されています。
子どもの現在の行動範囲を知り、現状を知ることで、無理のない支援を考えていくことができます。
また、不登校のお子さんはトラウマ記憶をはじめとした辛い「過去」の記憶に悩まされやすいため、支援者はお子さんが「今」好きなこと、楽しいと思えることを共有するなど、「今・ここ」を豊かにすることを意識した関わりが大切です。
小沢先生は診察室で手品を通して親子に「笑い」を届けたり、八王子不登校時支援ネットワーク(「プラス・パス」Hpあり)を立ち上げて不登校のお子さんの新たな居場所を提供したりと、不登校の子どもたちの「今・ここ」を豊かにする取り組みを沢山されています。
久米島でも不登校のお子さん一人一人の「今・ここ」が豊かになるためにどんなことが出来るのか、多くの皆さんと考えていきたいと思いました。
不登校支援や居場所づくりにご関心のある方はぜひ渡辺までお声かけください!
図2:「不登校の居場所分類」小沢浩先生作成
【電話】985-5555
受付時間:午前8時30分~11時、午後1時~4時
〔広報くめじま 2023年12月号〕
目指せ!健康あいらんど久米島
2023.11月号では「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」についてお話ししました。
しつけと体罰のいずれかに該当するのかの問いで、(1)~(9)の例は全て体罰に該当、としました。
ところが子どもに「落ち着かない、かんしゃくが多い、手を出したり、暴言がある。
ミスや忘れ物が多い」などがあると、しつけのつもりがついつい体罰となってしまうこともあるかもしれません。
そんな時は、生活リズムを整えることで上記のような子どもの状態が軽減される場合があります。
ズバリ!
1)早起きして朝の光を浴びる⇒結果)十分に眠ることができる
2)規則正しい三度の食事
(その他に親子のやりとりなども大切ですが、まずはこの2つの改善からおススメ)
1)早起きして朝の光を浴びる、について
起きる時刻の目安
未就学児:「6時~7時頃」
小学生以上:「6時~6時30分頃」(登校時刻に合わせ、はみがきやトイレの時間もあるとよい)
・早く寝かせようとがんばるよりは「起きる時刻の目安」を参考に起きて朝の光を浴びると、脳の活動スイッチが入ります。
また、眠りを誘い情緒を安定させるホルモンが15~16時間後にピークになります。
6時に起きると21時~22時にピークとなるので寝つきやすくなり、その結果十分に眠ることができます。
・寝ている間に成長ホルモンが分泌され「骨や筋肉を育てる。大脳や神経を育てる。
免疫力が高くなりケガや病気に負けない体をつくる」という効果をもたらします。
・寝つきをよくするために、寝る30分~1時間前にはスマホやタブレット、テレビなどを終了し強い光を目に入れないようにしましょう。
注意:睡眠時間を午後11時~午前9時まで10時間確保しているから大丈夫、は睡眠の質を考えるとおススメしません。
2)規則正しい三度の食事、について
・特に「朝ごはん」はしっかり食べましょう。身体(内臓)のスイッチが入り、体内時計が正しく動き出します。
いかがでしたでしょうか。
そんな当たり前のことなの!?と思った方もいるかもしれません。
ですが大人も子どももできている人は少ないのではないでしょうか。
大人も「イライラする。ミスや忘れ物がよくある。集中できない」などがみられる場合は、ぜひ上記1)と2)をとり入れてみてください。
そもそも人間は昼間に動いて、夜は眠る動物です!!
最後に!
今回お伝えした1)2)の方法で子どもの状態全てが解決できるわけではありません。
試してみてうまくいかないときは、子育て世代包括支援センターや信頼できる医療機関などへ相談してみましょう。
参考:「発達障害」と間違われる子どもたち 成田奈緒子 青春出版社
子どもノート2022保健活動を考える自主的研究会
(これまで本町にて妊娠・出産されている方へ配布している冊子です。年によって冊子の色が変わることもあります)
〔広報くめじま 2023年12月号〕
「発達凸凹とは」公立久米島病院 小児科 渡邉幸
新年あけましておめでとうございます。今年は発達のお話からスタートしたいと思います。
「発達凸凹」とは簡単にいうと、子どもの脳が発達していく過程で、発達が「早いところ」と「遅いところ」の差が大きく、脳機能に偏りが生じている状態と言えます。
例えば「人と関わる力(社会性)」「注意力をコントロールする力」「言葉を理解する力」などに偏りが生じると、幼少期から色々な困難さが出てきます。
「自閉症スペクトラム」「注意欠如多動症」「学習障害」などの「発達障害」もこの発達凸凹に入りますが、診断名がつかなくても発達凸凹で困っているお子さん(大人も)は沢山います。
では、そのような子たちにはどのように関われば良いのでしょうか?
〔家庭での関わり〕
大人が子どもに合わせて個別に柔軟に対応することができると、困り感は生じにくいです。
「出来ない」と思うことも、「今はまだ」出来ないだけで、いずれできるようになる、と信じて子どもの歩みに一歩一歩寄り添うことで安心感が生じます。
また、親子で笑い合える「楽しいやりとりの時間」があることは、子どもの成長発達の大きな支えとなります。
一方、周囲と比べたり、親の理想に当てはめようとしてしまうと、叱責が増え、親も子も安心感は減ります。
〔集団での関わり〕
保育園や学校ではどうしても「年齢相応の行動」が求められます。それが出来ないと「困った子」「困らせる子」と捉えられやすいですが、子どもは皆できることならうまくやりたいと思っており、できるのに「わざと」やらないということはまずありません。
出来ない時は、「うまくできるスキルがまだ身に付いていない」と理解し、「どうしたらできるようになるか?」と考えたり、本人に聞いてみることはとても大切です。
支援や配慮が「甘やかし」になるのではという不安の声もよく聞きますが、目が悪い子にとっての「めがね」と一緒で、他の子と同じスタートラインに立つためのものでしかないことを理解してもらえるといいと思います。
発達凸凹について少しでも多くの人が理解し、さまざまな人にとってすみやすい環境が作られていくいことを願っています。
問合せ:公立久米島病院
【電話】985-5555
受付時間…午前8時30分~11時、午後1時~4時
〔広報くめじま 2023年1月号〕