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脳神経系の学習ノート(2)
〔『記憶のメカニズム』高木貞敬、岩波新書、1976年〕
〔2011年春⇒2011年11月掲載〕
「Ⅳ記憶の分析―心理学者の研究」の章。
(1)記憶=「一度印象づけられ、刻みこまれた経験をふたたび思い出す精神機能である」(61ページ)。
記憶の4つの過程。
記銘=印象を刻みこみおぼえこむ過程。
刻みこまれたものを失わないように保持する過程。
保持する印象を思い出す、意識に再生させる、想起の過程。
新たに経験したことや思い出されたものが以前に記銘されたものと同一と認める再認の過程。
(2)レミニセンス<>
「おぼえた直後より、しばらく時間がたってからの方がより多くの内容が思い出されるという現象は、心理学者の間では以前からよく知られていた」(65ページ)。
この現象をレミニセンスという。
「学ぶことによって脳のなかに“何らかの変化”が残るためである。
…心理学者のいう“記憶痕跡”とは、このような変化をさしている…これらの痕跡の間で干渉や抑制が起ることになり、痕跡をもとにして思い出すことが困難になる。
しかし時間がたつうちに、このような相互干渉や抑制は次第に鎮静してゆき、他方、痕跡自体も時間と共に脳の中でよく整頓され、まとめられてゆくから、思い出しやすくなるのであろう。
これが心(66ページ)理学者の説明である」(67ページ)。
「記憶痕跡とは“原体験”と“思い出した記憶上の事実”との橋渡しをするために導入された仮説的な媒介概念である」
「具体的に、物質面からいえば、記憶は脳の細胞活動と無関係に存在しないことも明らかであって、脳細胞の働きと切離して考えることは不可能である」(67ページ)。
(3)回想と想起
回想=特に思い出そうと努力しなくても、つぎからつぎへと思い出がいきいきとよみがえってくる場合。(70-71ページ)。
想起=積極的に思い出そうとすることをいう。
「努力が記憶痕跡に“緊張を与える”ことになってその再生をうながす働き」(72ページ)。
(4)記憶痕跡=神経生理学的な説明
「記憶という精神現象は、…かならずそれに対応した物質現象――“神経の細胞活動”をともなっている。
外界からの刺激は眼や耳や皮膚感覚などの受容器を通して感覚神経に興奮を起し、それが脳に伝えられて、脳細胞の活動を起す。
したがって記憶痕跡はこれら脳細胞活動の名残りであると考えることができよう。
この場合は、記憶痕跡として保持されるものは経験された内容や意識そのものではなく、それに対応した神経の活動過程ということになる。
またこのような神経活動が何らかの刺激で引き起こされる時には、それに対応した精神現象として記憶が起ることになる」(73ページ)。
(5)精神現象と物質現象
「精神現象を取扱う心理学と、物質現象を取扱う広義の生理学との間には超えがたい一線が横たわっているという事実である。
記憶という意識現象が神経系にいかにして具体的な痕跡――物理化学的変化を残すのか、逆にそのような物理化学的変化が残っていれば、いかにして記憶という意識現象が作られるのかという疑問は誰もが抱くものであろう。
これは“物質(肉体)と精神”との間に横たわる深い断絶にかかわる大問題であって、両者は不即不離の関係にありながら、その間には容易に橋渡しできない深淵が横たわっているのである」(74ページ)。
何を語っているのだろうか。
飛躍があり、説明の難しさを表しているが、だからこそおもしろみがある。
*昨夜読んだ養老猛さんは“対応”する関係といっている。
(6)年齢と記憶
3つの記憶のしかた。心理学者ブルンスウィックの意見(75-76ページ)。
*(1)機械的記憶法=意味などを考えないで棒暗記する。
12、3歳ころまではいちばん発達している。
*(2)図式的記憶法=覚えることが複数あるとき相互に空間的、時間的な関連づけておぼえる。
12、3歳以上により発達してくる。
*(3)論理的記憶法=意味を明らかに理解しそれらの意味を関連づけ、結びつけて覚える。
15、6歳以上になると次第に発達してきて他の型の記憶作用は隠れてしまう。
(7)老化と記憶
25歳から65歳間での間に“不慣れな経験”をおぼえこむ力は平均35%も低下する。
心理学者ギルバートの研究による。
知能指数=20歳から80歳までの間に約20%低下する。
心理学者ズーベックとソルベルグの研究による。
一般的な記憶と知能指数のピークを20-25歳においているがこれはどういう意味になるのだろうか。
おおよその点で支障がないのか。
『記憶のメカニズム』(高木貞敬)のまとめ
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