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脳神経系の学習ノート(4)
〔『記憶のメカニズム』高木貞敬、岩波新書、1976年〕
〔2011年春⇒2011年12月3日〕
「Ⅵ記憶をささえる神経の活動―神経生理学者の研究」の章。
(1)活動電位またはインパルス
「1個の活動電位は学習や記憶によって、特別に大きさや時間の長さを変えるなどということはない。
したがってそれひとつだけでは意味のある情報を送ることはできないが、1個のニューロンは多数の活動電位を頻度を変えて送ることによって多少の情報を送ることができる
…もし多数の細胞がシナプスによっていろいろの組み合わせを作って活動すれば、非常に多くの情報を送ることができるようになる。
“活動電位”というのはニューロンの電気的変化とその発生を研究する時に使う言葉で、“情報”を問題にする時には活動電位を“インパルス”とよびかえて、単位時間内のその数や、その現われ方(パターン)に注目する」(102ページ)。
この後も説明が続きますがかなり省略します。
情報を電気的な性格に還元するものであり、おそらくそれは記憶に結びつくのだろう。
(2)伝達物質
「インパルスが神経末端までくると、そこから伝達物質が出されるが、その物質の本態は…神経線維から筋細胞へインパルスを送り込むシナプスではアセチルコリンが伝達物質…。
脳や脊髄にはきわめて多くのシナプスがあるから、伝達物質も非常に沢山あることが推定される。
…まだアセチルコリン、グリシン、l-グルタメート、サブスタンPなどきわめてわずかな物質しかわかっていない。
シナプスが記憶に深い関係を持つとなれば、伝達物質も何か関係があるかもしれない。
その正体を早くつきとめたいものである」(105ページ)。
(3)循環回路
神経の経路には、いろいろな種類があり、1点から出て拡散するもの、逆に複数個所から来たものが1点のまとまり進行していくもの、複数個所からのものが複雑に絡み合い別の複数の経路に進行していくもの…などが図式的に示されています(106ページ)。
そのなかにある場面で巡回するような経路を進むものがあるようです。
これについて次のような説明がされています。
「1回の刺激に対して何回もインパルスが出る場合、2回目以降のインパルスを“後発射”という。
1回の刺激でこのような後発射が長くつづくことは脳や脊髄でよく知られているが、一般的にいえば、何か強い刺激を受けたあとに長く残る興奮状態はこのような後発射によるものといえよう。
ただ2個のニューロンだけで作られたもっとも簡単な循環回路では、インパルスは“こだま”のように行っては帰るから“反響回路”とよばれている」(108ページ)。
(4)シナプス、ニューロン、神経の回路による基礎的なメカニズム
「脊髄では抑制型のシナプスは興奮型のものの三倍もあるといわれているが、脳のなかでもやはり興奮型のシナプスが大きな働きをしていると考えられる。
以上の話によって脳のなかで活動するニューロン、シナプス、それらによって組み立てられた神経の経路、これら三つの基礎的なメカニズムが一応おわかりいただけたことと思う」(109ページ)。
(5)反復刺激後の増強
ウォーミングアップがその例になる。
「脊髄の後方からはいる神経は“後根”と呼ばれ、筋の動き方や皮膚感覚を伝える感覚性の神経線維…、脊髄の前方から出る神経(109ページ)は“前根”と呼ばれ、運動をつかさどる神経線維…」(110ページ)。
後根を刺激しつづけ、同じ強さの電気刺激を1秒間数百回の割合で…与えてみる。
これを強直性刺激とよぶ…強直性刺激のあとでは…活動電位は次第に大きくなり…そのままその大きさがしばらくつづく
…これは…“反復刺激後の増強”と名づけられた現象である」(111ページ)。
ウォーミングアップは「同じ努力に対して筋肉が“より強力な収縮”を起こすようにシナプス伝達の能率を上げようとして、無意識のうちにおこなう動作なのである」(112ページ)。
しかし、記憶という点では、この反復刺激後の増強では十分に説明できない。
一時的なものにとどまるからである。
それを記憶として長く維持するのを可能にするのは脳内の海馬の役割である。
これはネコの筋の神経線維の3分の1を切断し、その後の車回しの運動を行わせた後、反射の増強が認められ、シナプスに永続的な変化が証明された。
この実験で脳と脊髄の変化が確認されたという。(113-114ページ)
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『記憶のメカニズム』(高木貞敬)のまとめ
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