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139-日本人の精神文化を支えた聴覚機能
〔『記憶のメカニズム』高木貞敬、岩波新書、1976年〕は学ぶところが多い。
全体のノートは後に回して、次の発見を先に取り上げておきたい。
角田忠信(東京医科歯科大学講師)の聴覚の研究(165~171ページ)。
日本人に関して「大部分のヒトについて、母音と子音をふくめたヒトの声、また虫や動物の声は、す(167ページ)べて左半球が優位、つまりそちら側で聞いていることがわかり、それら以外の機械的な音はすべて右半球が優位、つまり右側の脳で聞いていることがわかった。
…右のようなデータは“日本人”についての実験結果であって…それでは日本人の聴覚と外国人の聴覚との間にどのような違いがあるのであろうか?
日本人は母音と子音とを区別なく言語中枢のある優位の脳(通常左半球)で聞いているが、印度ヨーロッパ語を母国語とする外国人は子音は優位の脳(通常左半球)で聞き、母音は劣位の脳(通常右半球)で聞いていることがわかった。
角田はこの結果から世界の言語を単脳言語(日本語パターン)と複脳言語(印欧語パターン)とに分類している」(168ページ)。
これを朝鮮生まれの一世グループ・二世グループ、アメリカ生まれの二世グループで調べた。
「はじめに日本人に(168ページ)ついて得られた成果は先天的なものではなく、日本語で育ったための後天的なものであることが証明され、日本語の特異性があらためて注目される結果となった」(169ページ)。
「このような左右の脳機能の分担は西洋哲学で認識過程をロゴス的(理性的―言語、計算)とパトス的(感性的)とにわける考え方と合致するから、外国人の優位の半球はロゴス的、劣位の半球はパトス的というふうにはっきり区別できるが、それに対して日本人の優位脳はロゴス的であると同時にパトス的であるといういわば二重構造をもっていることになる。
日本人の優位(170ページ)脳には、この二つの背反しがちな働き方が刻みこまれ、ここに固定(記憶)されて“痕跡”として残っているために、外国人とは異なる日本人独特の精神活動が現われてくるのではあるまいか」(171ページ)。
これは私の関心のなかではこれまでに根を持つものであるとともに、今後の関心課題を考えるときに影響しそうです。
* 「2007年3月ーゆらぎを聴き取る力」で日本人の聴覚の特質はすでに紹介しました。
しかし、高木貞敬さんの本は1976年発行ですし、角田忠信さんの実験はそれに先立つこと十年以上になるそうです。
今回わかった重要なことは、この聴覚の獲得が後天的なもの(先天的・遺伝的なものではなく)とわかったことです。
* 「116-ロゴス的なパトスの把握」のなかで梅原猛さんの主張を紹介しました。
それを身体科学の面から実験的に裏付けるものがあったといえます。
これに加えて、もう一つ想起したことがあります。
パトスの役割をもっと重視しなくてはならないと思ったことです。
日本人はこの実験結果からして、すでにある意味でパトス的な人たちです。
それを超えてパトス的な役割を考えなくてはならないと思えたのです。
私はそれを女性の特色として見ていこうと思いました。
男性に比べてパトス的なのは女性ですし、シンクロニシティを考える場合、そこにもヒントがあると思えるからです。
『記憶のメカニズム』(高木貞敬)のまとめ
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