社会事情から物流業界の労働条件を考える
社会事情から物流業界の労働条件を考える
本を二度読む。一度は私が求めることに関わることが書いてありそうな本なのか。
次はその求める内容に沿って自分の意見を付けてみる感じで読む。
あまり読みなれない経済社会に関する本を読むとき、私はかなり早く読み方のこの方式をとることができました。
ある機会に、「本は二度読んで初めて読んだことにする」と話している人がいました。
私のやり方と少し似ており、納得できることがあり、それを参考に自分の方式として自覚したものです(確立、確定しているかどうかは別です)。
さて今回手にした本は、橋本直行『(最新)物流業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』(秀和システム,2015年)です。
物流とは、「商品が生産されてから、顧客に納品されるまでの『輸配送→倉庫保管→荷役→流通加工→梱包・包装』の一連の流れ」(P10)のことで、それに関わる企業産業界にかかわることです。
これがテーマとする「社会的ひきこもりの起源」にどう関わるのか?
とても想像できないものですし、書かれていることをどれだけ読み込めるかわかりません。
そこで第1回の通読は、この本を読んでどんな問題意識がもてるのか、ということでした。
ある一つの点は問題設定できました。
それでは不十分なので、そのテーマを手がかりに、より強い結びつきを見つけるために第2回の「読み」に着手しました。
不十分ですがテーマ設定は労働力——特にドライバー不足に対する企業の対応の動きである、としておきます。
「〈ドライバー不足の原因〉
運送業界が、深刻なドライバー不足に陥った主な要因は、以下の7つだと考えられます。
① 業務負荷の増加(ドライバー1人あたり輸送トンキロの増加)
② 少子高齢化(労働力人口比率の低下)
③ 賃金水準の低下
④ 中型免許制度の施行
⑤ 特に若者のトラックドライバー離れ(ワークライフバランス志向、運転免許取得比率の低下)
⑥ 職業イメージの悪化(高速バス事故などにより)
⑦ 他業界との人材争奪戦の激化
こういった要因への対策を荷主企業とともに検討し、運送会社自身も人が集まり、留まる企業へとそれぞれ進化いていく必要があります」(P130)
「《人材不足とその対策》
物流業界の人材不足は深刻化しており、人材獲得競争に勝てた企業だけが生き残る様相です。
〈人材難への対策〉
労働人口と生産量・消費量のアンバランスがもたらす人材難は、これから長期に亘って続くでしょう。
このまま、あと数十年は、深刻な状況が続くかもしれません。
そういう厳しい時代に生き残るためには、やはり正攻法で〝社員が誇れる物流企業を創る〟べきだと思います。
人が集まり、居着く、社員が誇れる物流企業になれば、仕事も自然に集まってきて、繁盛し続けることができます。
そのような状態にするためには、以下の7つの条件を満たすことが必要でしょう。
〈7つの条件〉
① 素人をプロドライバー・作業員にできる
他社が育てた経験者を採らなければ、商売ができない会社は、人材調達難の時代には、圧倒的に不利になります。
未経験者をプロにできる仕組みを構築しなければなりません。
しかも、高速、かつ高確率に仕上げられなければ、社員定着率が上がらず、収益は悪化します。
② 経営基盤が強く、安心できる
まず、財務体質が強いこと。そして、顧客基盤が強いことです。
顧客1社当たりの売上構成比は低く抑えながら、主要顧客との結びつきは強いという、〝or〟ではなく〝and〟の安心な状態をつくり上げる必要があります。
③ 個性が強く、存在理由が明確である
社風が特異で、かつ「○○なら××運送」といった独自固有の長所が明確な物流企業には、人材も顧客も集まってきます。
特に、WEBの時代である今は、その傾向が顕著になってきています。
企業の存在理由は、従業員の在職理由であり、顧客の委託理由です。
④ 長所偏重型の経営である
③のような状況を創り出すためには、自社の長所となる領域・部門に経営資源を集中的に投資すべきです。
同規模の同業他社と比べたら、おかしなバランスになるくらいで、よいと思います。
⑤ 将来ビジョンが明確であり、一体感を感じられる。
人材の定着率を上げるためには、一体化しなければなりません。〝一体化〟とは、目的・目標の意識が同じになっている状態です。
10年後、20年後、30年後の経営ビジョンを明確にして、周知させましょう。
〝やらないこと〟を決めることが重要です。
⑥ 従業員・協力会社・顧客の満足がリンクしている
顧客満足と協力会社満足、そして従業員満足が、つながっていなければ、永続的な事業の発展は難しいと言えます。
誰かが我慢を強いられているような状況では、永続きしないのです。
⑦ 従業員にとっての総報酬が高い
今の時代は、金銭的報酬だけではなく、福利厚生や自己成長、社会貢献・地域貢献・顧客貢献の実感、仲間との絆といったその他の要素を併せた〝総報酬〟を従業員が求める時代です。
これらの総和が高い企業を創らなければなりません」(P146-147)
これは1観察者の見解とも言えますが、それを基準にします。
これがどのような程度、広さにおいて実現できるのかは保証されてはいません。
しかし従業員優位に向かって、徐々に、深く、少しずつ進んでいくと予想できます。
物流業界におけるこの条件は、一般的にはブラック企業を発生させにくい条件になっています。
他方では個人事業を多く含む零細企業もありますので、社会全体や企業間の動きのなかで、圧倒され、過剰な受け請いや労働条件の悪化に追い込まれる可能性にも目を向けなくてはならないでしょう。
労働力不足を補うための外国人労働者の雇用、技術的改善(自動運転、ドローン型輸送の拡大など)も、従業員が精神的に追い込まれない条件づくりにより、うつ症状やひきこもりを発生する要素を緩和していく一部になると思います。