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Center:1998年7月ー学校・教育委員会にもっと働きかけていい

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学校・支援団体の解説構造の「制度・政策など」

学校・教育委員会にもっと働きかけていい

〔『高校さがしと転編入の手引き』、あゆみ出版、1998年7月に所収〕
 

(1)定時制・通信制から全日制への編入
「都立高等学校の転学・編入学について」という東京都教育委員会の文書に、次の一節があります。
「定時制・通信制から同学年の全日制への転学は、1年生の8月の応募のみ応募でき」る。
この決め事がいつ、どんな理由でできたのか、私は次のようなケースを思い巡らしています。
中学校時代に不登校日数が多い生徒が高校進学においては定時制高校を選択した。
ところが入学したとたん高校通学ができるようになり、生徒は夜間の定時制よりも昼間の全日制の方がさらに通学しやすいと考えるようになった。
カリキュラムを比較してみると1年生の1学期では全日制も定時制もあまり大きな違いはない。
それを高校か教育委員会に働きかけたところ、教育委員会としても2学期から全日制への転入を認めた。
そしてこれは都立高校の転入学の一つの制度として導入された。
・・・・・・果たして本当かどうかは確認できませんが、そういう推論を可能にさせてくれます。
ほかの道府県ではこのような例を知りません。

(2)通信制高校への年度途中の転入学
私が相談を受け、調べてみた事例です。
A県の私立全日制高校2年生のS君から6月ごろ相談を受けました。
A県の県立通信制高校では転入学を1年生初めだけ認め、遅くとも5月初日ぐらいが転入学できる期限になっています。
S君は在籍校でいじめを受け、これ以上その高校に行くことができず、何とかA県立立通信制高校へ移りたい、という趣旨でした。
S君の選択する道はこの通信制高校への転入学する以外にもいくつか方法があります。
私はそれを話したわけですが、S君は通信制を選ぶ別の理由もあったらしく、「できれば何とか通信制に変わりたい」といっていました。
A県立通信制高校では、入学できるのは来年春以外の答えはありませんでした。
そのほかの県立通信制高校の場合はどうなっているのか調べてみました。
石川県立金沢泉丘高校通信制は、1996年度から「転入学生については6月、10月にも転入学できることになりました」とあります。
また、静岡県立中央高校通信制は、年2期制で毎年4月と10月の2回入学があります。
ここでは10月には入学できるわけです。
私はS君にこの例を話し、A県通信制高校に働きかけるようにすすめてみました。
その結果はきいていませんが、それしか選択の方法がないならば、現行の制度のなかで特例として認めてもらう働きかけをする以外ないと思います。
その場合、その選択の事情とともに、制度としてもかの事例(他県など)を示すことは意味のあることだと思います。

(3)6月に2年生に編入学
こういう例もあります。
2年生の2学期の10月初めに退学した生徒Jさんです。
Jさんは、ある私立全日制高校2年生に翌年6月から編入学できることになりました。
先の東京都立高校の規程の場合はこうなっています。
「編入学=1学年以上の課程を修了し、一度退学後に改めて2学年以上に入学する場合、…年1回、3月の応募にのみ応募でき、4月から入学することになります」。
多くの高校も同様な方式をとっています。
しかしJさんは、この私立高校に6月に編入できました。
彼女が編入学できたのは、退学した前籍校の1学期の成績があり、それを編入学先の高校が評価したからです。
特別の事情があれば、それをもって受け入れてもらうよう働きかける努力をしてみることです。

(4)文部省も定員外転入学を指示
もう一つ事例を新聞記事から引用しましょう。
「親の転勤に伴う公立高校への転入学を容易にするため、文部省は1学級あたりの定員を超える転入生の受け入れを認める方針を固めた
・・・・・・現在は標準定数を上回る場合の転入学を認めないケースが少なくなく、それが結果的に単身赴任を強いることになっていた」
(「朝日新聞」1997年11月9日)。

規程を弾力的に運用するという点では、なにも特定の公立高校や、私立高校だけがやっているのではなく、文部省もまた同じなんです。
これは、一家転住や海外帰国に関しては、転入学が比較的多くの高校で制度として認められていることに結びついています。

(5)特例から始まり制度ができる
転入学、編入学を求める場合、生徒、家族それぞれに特別の事情があります。
それを自分だけ、わが家だけの特別事情として、あきらめてしまうとそれまでです。
実は一人ひとりの特別の事情と思われるものは、多くの生徒や家族が抱えている共通の事情です。
その事情を都道府県の教育委員会に、市立高校を設置している自治体の担当者に、あるいは個別の高校の校長や担当に伝え、ねばり強く働きかれること、それによって道が開ける可能性があります。
そして特例、例外として転入学または編入学として認めてもらうことです。

決まり決まった制度があり、その枠からわずかでもはみ出していたら生徒も家族もあきらめてしまうのでは何も変わりません。
初めに特例が生まれ、その後に一般的な制度として形づくられ、認められていくのです。
これを別の角度からみれば、市民の働きかけによる市立高校づくり、県民の働きかけによる県立高校づくり、国民の働きかけによる学校づくり、といえるのではないでしょうか。
ある全日制高校の責任ある立場にある先生から次の趣旨の意思表明をきいたことがあります。
「生徒のために必要なら、決められた枠を可能な限り外してやっていきたい」
私はこれをこの学校を“教育宣言”と聞き意を強くしました。
個別の事情による特例づくりは、これに相呼応するものとなるでしょう。
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