Center:2000年6月ーなぜ入学した後すぐ転校を望むのか
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2017年7月17日 (月) 09:10時点における版
なぜ入学した後すぐ転校を望むのか
*「進路指導のはざまで」『中学教育』2000年7月。
4月17日、高校に入学したばかりの生徒の親から「いまから転校できる高校はありませんか」という問い合わせが入った。
理由はこうだ。
静男君は剣道のスポーツ推薦で私立P高校に入学した。
P高校剣道部は名門で、県大会で優勝を競う。
静男君は入学前の春休みから部活動に参加していた。
ところがこの練習はとてもハードだった。
入学式のあった翌週ごろには、剣道部の練習がつらくて、とうとう学校を休み始めた。
その次の週の月曜日、4月17日やはり学校へ行けない。
お母さんは早めに対処しようと電話をかけてきたのだ。
話は昨年に秋に遡る。
中学3年生の静男君は、進学第一志望に公立L高校を挙げた。
学級担任は、「レベルが少し高く、難しい」と再考を求めてきた。
静男君が公立L校を挙げたのは、通学距離が近いことと剣道部があることだった。
静男君は、公立L校が難しいと言われ考え中のところで、学級担任が示してきたのが、私立P高校へのスポーツ推薦だった。
父母もスポーツ推薦で入学が早く決まるし、好きな剣道部があるのだからと、これに賛成した。
静男君は、十分に様子がわからなかったが、父母も 学級担任も熱心に勧める私立P高校への進学を決めた。
そして剣道部の部活が春休みから始まったわけだ。
スポーツ推薦入学であるから、剣道部を辞めることは、自動的に退学になる。
母親が話すところでは、静男君は「母が勝手に決めた高校だから」と言っているし、その一方母親は「最終的には本人も同意したことなんですが……」と困惑している。
問題はどこにあるのか。
転校できる学校ということで言えば、いくつかの高校を思いうかべることができる。
しかしそれは問題の本筋ではないだろう。
静男君の意思(それは確かに明瞭な形で示されたわけではなかろうが)を超えて、よかれと思って、親と教師が先回りして決めたことだ。
転校先さがしでもまた、同じことを繰り返しそうな雰囲気を感じた。
中学校卒業から進学先高校さがしよりも、転校先さがしは選択肢も狭いし、時間も限られる。
だから特に親は先回りして、事をうまく運ぼうとする意識が働く。
それでは失敗の積み重ねになりかねない。
ついでに言えば、これは教師の拙速の後始末でもある。
可能ならば退学(それに退部)もしないで、静男君の気持ちが固まるのを待ちながら、転校先さがしをする。
それには1年を費やすくらいに余裕が必要かもしれない。
実は親の気持ちを落ち着かせるほうが中心になる。
静男君のほかにも、数人が高校に入学した直後に、通学ができず、転校可能な学校さがしの形で相談が入っている。
生徒は高校選びの条件ができていないなかで、親や教師が、生徒代わって進学高校さがしをしてしまった例が多い。
生徒に選択できる力をつけること、選択の失敗も生徒の貴重な経験として自立の課程にできる方法をさぐってほしい。
連載「進路指導のはざまで」
(1)Center:2000年3月ー進路先がフリースクール?
(2)Center:2000年4月ー3つの選択に隠された転校処分
(3)Center:2000年5月ー通信制高校に進学した理由
(4)Center:2000年6月ーなぜ入学した後すぐ転校を望むのか
(5)Center:2000年7月ー高校進学後に再発した登校拒否
(6)Center:2000年9月ー私は中学校を卒業してないの?
(7)Center:2000年10月ー子どもの不登校が家制度を変える
(8)Center:2000年11月ー専門家一任でなく背後で応援しよう
(9)Center:2000年12月ー国勢調査で大検合格は高卒では?
(10)Center:2001年1月ー“兄貴分”にも相談相手の役割
(11)Center:2001年2月ー自分さがしの機会がなく退学