Center:155ー情動を生み出す脳の部位と作用
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『脳をあやつる分子言語―知能・感情・意欲の根源物質』(大木幸介、講談社BLUE BACKS、1979年)は、多くのことを学ぶべきものです。<br> | 『脳をあやつる分子言語―知能・感情・意欲の根源物質』(大木幸介、講談社BLUE BACKS、1979年)は、多くのことを学ぶべきものです。<br> | ||
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+ | そして今日では、脳内の広域分布のアミン作動性神経経路の解明とともに、直接それに関連づけて説明されようとしている。<br> | ||
さて、視床下部から脳幹を電気刺激すると動物に情動反応を作ることができる。<br>ただ、これだけでは、環境の変化に即応した情動行動はできず、まとまりがなく、無目的で、刺激が終わると消失する。<br>古く、「見かけの怒り」などといわれたもので、アミン作動性神経経路が刺激されただけであろう。<br>これに対して、視床下部から脳幹を直接支配する大脳辺縁系が活動すると、行動はまとまってきて合目的的になり、情動行動となる。その形成は本能行動によく似ており、それと表裏あるいは相同といえる。<br>そして、いずれも、視床下部を中心とした脳幹のアミン作動性神経経路による賦活と、大脳辺縁系による支配、コントロールによって成立する。<br> | さて、視床下部から脳幹を電気刺激すると動物に情動反応を作ることができる。<br>ただ、これだけでは、環境の変化に即応した情動行動はできず、まとまりがなく、無目的で、刺激が終わると消失する。<br>古く、「見かけの怒り」などといわれたもので、アミン作動性神経経路が刺激されただけであろう。<br>これに対して、視床下部から脳幹を直接支配する大脳辺縁系が活動すると、行動はまとまってきて合目的的になり、情動行動となる。その形成は本能行動によく似ており、それと表裏あるいは相同といえる。<br>そして、いずれも、視床下部を中心とした脳幹のアミン作動性神経経路による賦活と、大脳辺縁系による支配、コントロールによって成立する。<br> | ||
この関係は1937年(昭和12年)に、サルの大脳皮質(両側の側頭葉)を切除すると、穏和化、恐れの消失、性欲亢進、精神盲、目に入るものなんでも舐めたり噛んだりする傾向、などを生ずることが発見(いまのべた見かけの怒りに等しい)されたことや、さらに、情動発現は視床下部と大脳辺縁系の回路(発見者名によってパペツの回路)によっておこなわれるということがわかったことから、明らかにされてきて、注目されるようになった。<br>現在では、何度も紹介した組織化学的蛍光法の利用によって、それが逐一解明されようとしている。<br> | この関係は1937年(昭和12年)に、サルの大脳皮質(両側の側頭葉)を切除すると、穏和化、恐れの消失、性欲亢進、精神盲、目に入るものなんでも舐めたり噛んだりする傾向、などを生ずることが発見(いまのべた見かけの怒りに等しい)されたことや、さらに、情動発現は視床下部と大脳辺縁系の回路(発見者名によってパペツの回路)によっておこなわれるということがわかったことから、明らかにされてきて、注目されるようになった。<br>現在では、何度も紹介した組織化学的蛍光法の利用によって、それが逐一解明されようとしている。<br> | ||
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2024年11月19日 (火) 00:38時点における最新版
Center:155―情動を生み出す脳の部位と作用
『脳をあやつる分子言語―知能・感情・意欲の根源物質』(大木幸介、講談社BLUE BACKS、1979年)は、多くのことを学ぶべきものです。
ここでは2点にかぎり覚書としておきます。
1つは137・138ページの2ページ分です。
情動(エモーション)について:
これは情緒ともいわれ、急激に嵐のように起こる一過性の強烈な感情反応である。
具体的にいえば喜悦、激怒、恍惚、驚愕、憎悪など、すなわち喜怒哀楽であって、必ず表情、身振り、声の変化、さらに自律神経系の反応(呼吸、脈拍、顔色などの変化)など肉体的変化を伴う。
このような情動は心理的変化と同時に生理的変化を伴うものであり、人間でも動物でも、同様に反応し、動物実験がしやすい。
そして今日では、脳内の広域分布のアミン作動性神経経路の解明とともに、直接それに関連づけて説明されようとしている。
さて、視床下部から脳幹を電気刺激すると動物に情動反応を作ることができる。
ただ、これだけでは、環境の変化に即応した情動行動はできず、まとまりがなく、無目的で、刺激が終わると消失する。
古く、「見かけの怒り」などといわれたもので、アミン作動性神経経路が刺激されただけであろう。
これに対して、視床下部から脳幹を直接支配する大脳辺縁系が活動すると、行動はまとまってきて合目的的になり、情動行動となる。その形成は本能行動によく似ており、それと表裏あるいは相同といえる。
そして、いずれも、視床下部を中心とした脳幹のアミン作動性神経経路による賦活と、大脳辺縁系による支配、コントロールによって成立する。
この関係は1937年(昭和12年)に、サルの大脳皮質(両側の側頭葉)を切除すると、穏和化、恐れの消失、性欲亢進、精神盲、目に入るものなんでも舐めたり噛んだりする傾向、などを生ずることが発見(いまのべた見かけの怒りに等しい)されたことや、さらに、情動発現は視床下部と大脳辺縁系の回路(発見者名によってパペツの回路)によっておこなわれるということがわかったことから、明らかにされてきて、注目されるようになった。
現在では、何度も紹介した組織化学的蛍光法の利用によって、それが逐一解明されようとしている。
なお、1961年(昭和36年)、東京大学脳研究所の時実利彦教授は、以上のようなことから、「大脳辺縁系は動物が(そして人間も、と著者はいいたい)、逞しく生きる本能の心を作る部位であって、そこで、体性運動の発現、感覚の形成、自律機能の調整、食と性の欲求の形成、集団欲の形成、情動の形成、意識の形成が行われる」とのべている。
これに対して、現在わかっているところでは、性欲、食欲など本能の中枢である視床下部とそれをコントロールする辺縁系を通して、情動の根源になるアミン作動性神経経路が走っており、しかも、その末端は精神活動をおこなう大脳新皮質のすみずみにまで及んでいるのである。
そしてこのように大脳辺縁系と視床下部による「動物の脳」で発生した情動が、「人間の脳」である大脳新皮質まで達し、そのコントロールを受ければ、そこから高級な精神活動の一つ―感情として発露されるであろう。
このように情動は感情の根源であり、その感情を解くために、次章で大脳新皮質を進化した有髄神経で作られたコンピュータとして解き、それから人間の精神構造の一半としてのこの感情を解きたいのである。
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Center:156ー成長と脳内有髄神経と無髄神経