(8)引きこもりからの回復と母親の役割
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+ | しかし、この作業を一人で続けていくことはきわめて困難であり、実際には不可能でしょう。<br> | ||
+ | この方法と内容には、ある程度の男女差を感じます。<br> | ||
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+ | この感情、特に悲しみ、苦しみ、愛情飢餓などを真正面からうけとめてくれる人が必要です。<br> | ||
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+ | たとえば、毎週2~3回にする、夜2時には終えるという時間的ルールや話し方などの行為的ルール、話す場を決めるという空間的ルールなどです。<br> | ||
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+ | 男性にも当然意味はありますが、20歳を超えると男性の場合は、社会(集団)の中における自分の位置確認(確保)の方向に関心が動きます。<br> | ||
− | + | これらの作業は、子どもにとっては、これまでの苦しかった自分の精神の癒しであり、エネルギーの回復(自己生命力の確認)であり、自分を肯定的に受け入れ、自分の立て直しの過程そのものの土台を築くことになります。<br> | |
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+ | 父親の場合は、聞き役としてはなかなかうまくいかないことが多いようです。<br> | ||
+ | 「昔のことは取り戻せない」「結論は何で、どうしたいのか」という趣旨の話にもっていきやすいためです。<br> | ||
+ | 父親は母親のサポート役であり、母親とは違った形で(たとえば釣り、パソコン、ドライブのような)、子どもの気分転換を図る試みをすすめたいと思います。<br> | ||
− | + | 専門的なカウンセラーは、家族にこのような役割が難しいときには欠かせません。<br> | |
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− | + | ただ、カウンセラーや医師やその他の支援者は、ときどきの状態の意味や判断で参考になることは聞けますが、子どもが愛情自体を求める対象にはなりませんし、親しい人間関係を築く相手にもなりません。<br> | |
+ | 個人的関係のなかでそれに近いことはあると思いますが、専門家や支援者のできる範囲は、懇切丁寧、的確な評価・対応のしかたなどになるはずです。<br> | ||
+ | それを超える役割を求めることは、一般にはいい結果になりません。<br> | ||
− | 誤解してほしくないこともあります。<br>この子はやはりその子らしさをもって成長する以外には、ありません。<br>元気溌溂、明るく行動的とはいきません。<br>おとなしくて、気弱なところがあって、まじめで、生きづらいと思える人生を、自分なりの力で進む力をつけていくのです。<br>それで十分ではないでしょうか。 | + | しかし、引きこもり当事者の周囲で家族を中心にこういうさまざまな人がそれぞれの形で協力していければ、引きこもりから抜け出そうとする当人の試みは、環境条件の恵まれたところでなされることになります。<br> |
− | + | 周囲の人にできるのはこのところです。<br> | |
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− | + | 誤解してほしくないこともあります。<br> | |
− | + | この子はやはりその子らしさをもって成長する以外には、ありません。<br> | |
+ | 元気溌溂、明るく行動的とはいきません。<br> | ||
+ | おとなしくて、気弱なところがあって、まじめで、生きづらいと思える人生を、自分なりの力で進む力をつけていくのです。<br>それで十分ではないでしょうか。<br> | ||
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2023年4月7日 (金) 00:02時点における最新版
この論文は『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』の序文として書いた「引きこもりからどう抜け出していくのか」です。
(8)引きこもりからの回復と母親の役割
しかし、この作業を一人で続けていくことはきわめて困難であり、実際には不可能でしょう。
この方法と内容には、ある程度の男女差を感じます。
一人での作業は孤独感を強めることになると思います。
この感情、特に悲しみ、苦しみ、愛情飢餓などを真正面からうけとめてくれる人が必要です。
その第一候補は家族、とりわけ母親でしょう。
母親はまず聞き役になることです。
この聞き役にとって最も大事なことは、正しい判断とか正しい道筋を考え提示することではありません。
それはむしろ言わないですませたい部類に入ります。
第一に大事なのは愛情です。
愛情を感じることができ、自分の感情を受けとめてもらえると思えれば、子どもは自分の苦しかったこと、愛情飢餓を甘えの形で訴えてくるようになります。
私は、この甘え(依存)を肯定的に評価しています。
聞く立場の人が聞くのをやめて正しいことを話すと、この作業をストップさせてしまいます。
それは骨折している人を前に、いかにすれば骨折を防げるかを説くのに似ていて意味がありませんし、その場で必要な対応をしていません。
子どもの話には、当人の勘違いや過大評価などが入っているとしても、本人にとっての真実があります。
これを正面から丁寧に聞いていくのが聞き役です。
しかし、この聞く作業は容易なことではありません。
特に親の場合は深夜になって毎日のように数時間この聞く作業が続くこともあります。
私は親のこの種の相談を受けたとき、それでも「社会生活に支障が出ないぎりぎりのところまで」「親の体力が続くところまで」続け、少しずつ子どもとの間にルールめいたことを取り入れるように話しています。
たとえば、毎週2~3回にする、夜2時には終えるという時間的ルールや話し方などの行為的ルール、話す場を決めるという空間的ルールなどです。
これは、それほど大事な作業だと思います。
その忍耐と辛抱、それが愛情ではないかと思います。
以上はとくに女性にとってより直接的な意味をもちます。
男性にも当然意味はありますが、20歳を超えると男性の場合は、社会(集団)の中における自分の位置確認(確保)の方向に関心が動きます。
これらの作業は、子どもにとっては、これまでの苦しかった自分の精神の癒しであり、エネルギーの回復(自己生命力の確認)であり、自分を肯定的に受け入れ、自分の立て直しの過程そのものの土台を築くことになります。
一方で、話すこともまた苦しいことで、ときにはフラッシュバックが起きることもあります。
この聞き役は、母親が中心になるのがいいのですが、そうならない場合もあります。
また、母親だけでは持ちこたえられないほどのものです。
そこで、母親以外の家族、特に父親の役割が出てきます。
父親の場合は、聞き役としてはなかなかうまくいかないことが多いようです。
「昔のことは取り戻せない」「結論は何で、どうしたいのか」という趣旨の話にもっていきやすいためです。
父親は母親のサポート役であり、母親とは違った形で(たとえば釣り、パソコン、ドライブのような)、子どもの気分転換を図る試みをすすめたいと思います。
専門的なカウンセラーは、家族にこのような役割が難しいときには欠かせません。
また、カウンセラーから、日常的に家族としてどう子どもと関わっていけばいいのかの助言をもらえるといいと思います。
カウンセラーとの関係は、こういう面からも大事になります。
ただ、カウンセラーや医師やその他の支援者は、ときどきの状態の意味や判断で参考になることは聞けますが、子どもが愛情自体を求める対象にはなりませんし、親しい人間関係を築く相手にもなりません。
個人的関係のなかでそれに近いことはあると思いますが、専門家や支援者のできる範囲は、懇切丁寧、的確な評価・対応のしかたなどになるはずです。
それを超える役割を求めることは、一般にはいい結果になりません。
しかし、引きこもり当事者の周囲で家族を中心にこういうさまざまな人がそれぞれの形で協力していければ、引きこもりから抜け出そうとする当人の試みは、環境条件の恵まれたところでなされることになります。
周囲の人にできるのはこのところです。
誤解してほしくないこともあります。
この子はやはりその子らしさをもって成長する以外には、ありません。
元気溌溂、明るく行動的とはいきません。
おとなしくて、気弱なところがあって、まじめで、生きづらいと思える人生を、自分なりの力で進む力をつけていくのです。
それで十分ではないでしょうか。
(1)引きこもりと不登校、ニート
(2)引きこもりのさまざまな原因・理由
(3)五感が敏感な人たち
(4)第六感としての「心の雰囲気がわかる」感性
(5)自己点検で感情を抑制していく
(6)本人の悩み・訴え・症状と対応
(7)意欲(生命力)を引きだす基本
(8)引きこもりからの回復と母親の役割
(9)反発心が自立には必要
(10)親の「あきらめ(?)」と子どもの自由への復帰
(11)親しい友人づくりと同世代復帰
(12)精神的な健康回復が先行