Center:1996年9月ー『定時制・通信制高校と大検の活用』はじめに
『定時制・通信制高校と大検の活用』はじめに
〔進路・就職研究会編『定時制・通信制高校と大検の活用』(高校[同等]資格合格への近道)桐書房、1996年9月発行のまえがき、1996年9月ころ執筆〕
高校進学率が95%を越え、高校教育はほとんど義務教育に近づいています。
他方、毎年10万人前後の中途退学者がいて、これら青年の前途をフォローすることが求められています。
高校では、中退者を生み出すまでの対応はあっても、中退後にはほとんど何もありません。
それは基本的には中退した生徒本人の問題であって、高校で何かをすべきものだはない、という正論を聞かされそうです。
反対に、毎年10万人前後の中退者を出していて、その正論だけで済ませるのかという異議申し立てにも一理あると思います。
この両側の意見をもつ方々が、ともに一歩近づき、それぞれが可能な対応の方法はないでしょうか。
本書はその両者接近の手がかりとなり、またそれぞれの側での対応を改善する手がかりを提供するものです。
中退者を社会的にフォローしようとする側では、現在の法制の中でさまざまな工夫をしています。
いずれもリスクを抱えてのチャレンジです。
では高校の側では何ができるのでしょうか。
一言で言えば詳しく正確な情報を中退者に伝えることでしょう。
そこにはリスクはありません。
高校中退者(といっても全日制高校の立場からみてのことですが)が、高卒または高卒同等の資格を得る方法はいろいろあります。
問題は中退者を生み出す側にいる高校と教師がそれを知らず、中退していく生徒に情報さえ提供できないことです(決して中退者への教育活動の継続を求めているわけではありません)。
中退者、あるいは高校に進学できなかった生徒は、暗中模索のなかからその何割かがこの道をさぐり当て、高卒(同等)を得る道にたどりつきます。
それを中退者を生み出す側にいる高校と教師に、事前に伝えてほしいわけです。
最近注目されているPL(生産者責任制度)の高校中退版とでもいえるでしょうか。
リスクがないぶん導入は簡単なはずです。
そうすれば中退者のもっと多くの割合がこの方法を知り、自ら接近する力を発揮できるようになるでしょう。
もちろん、どの道を選ぶかの第一義的な決定権は、生徒本人にあります。
高校と教師にできることは多様な選択肢を提供することです。
本書では、高卒(同等)資格を獲得できる、事実上すべての方法を示しました。
思ったより多いと思います。
そのなかには、学校以外の民間の努力で、リスクを負ってつくり出された方法がいくつかあります。
利用面では、教育相談所、児童相談所などの相談機関や行政機関においても役立ててもらうことを期待しています。
最後に、本書の発行に当たって、企画面を含めて、大検予備校である第一高等学院と大検情報センターに多大な協力とご援助をいただきました。
心よりお礼申し上げます。
特に大検の利用方法については同センターが多くのノウハウを蓄積しています。
不明な点は、同センターにお問い合わせください。