Center:128-宇宙論から世界の成り立ちを見る
宇宙論から世界の成り立ちを見る
〔2011年4月27日〕
『最新宇宙論と天文学を楽しむ本』佐藤勝彦・監修、PHP文庫、1999年。
もう一冊の姉妹編に相対性理論のことは任せて、ここは次の3点を。
(1) 人間は宇宙についてはよく知らない
20世紀になって宇宙のいろんなことがわかってきているが、それでもほんのわずかでしかない。
それにもかかわらず、宇宙の発生とか将来予測をある程度できるようになっている。
分かってきた分野がほとんど物理学の分野であることが影響している。
人間が(私が)知りたいことは人間についてのことであり、宇宙のどこかに生命があるとか、特に高等生物が表われでもしない限り、本当の意味での関心のあるもので宇宙に分かったといえるものはないのかもしれない。
日本人以外の人や文化を知ることも、宇宙の中にはそのようなものを見つけ出すのは困難です。
(2)「無」についてはたぶん参考になる
哲学的な課題が、物理学や天文学から示されました。
「宇宙は約140億年前、無の中から生まれました。無とは言っても、まったく何もない完全な無ではなく、無と有との間を揺らいでいる状態です。このとき、まだ時間も空間も生まれていません。宇宙が生まれるということは、時間や空間が生まれることを意味するのです」(212ページ)。
「インフレーション理論は、真空が持っているエネルギーが巨大な斥力(せきりょく、反発力)となって急膨張をもたらしたと考えました。なぜ何もない真空がエネルギーを持つのか……ミクロの世界の法則を表した量子論(量子力学)によると、この世には本当の意味での『無、ゼロ』はあり得ないことになります。そして真空とは無と有のあいだを揺らいでいる状態だと考えるのです。(225ページ)
…実際に真空中に大きなエネルギーを与えると、真空中から突然電子と陽電子のペアが出現し、すぐにまた結合して無に帰ることが実験で確かめられています。(226ページ)」
ビッグバン理論がかかえる〝得異点〟という難問,「この難問に対するアイデアとして出されたのが、ウクライナの物理学者ビレンケンや、イギリスの物理学者ホーキングが唱えた『無からの宇宙創成論』です。まず1983年、ビレンケンは量子力学が示す『無は完全な無ではなく、有と無のあいだを揺らいでいる』という考えをもとに、宇宙は無の揺らぎの中から『トンネル効果』によってポッと生まれてきたとする理論を発表しました。続いてホーキングは、宇宙が『虚数の時間』において生まれたと考えれば、宇宙の始まりは得異点にならないと唱えました」(227ページ)。
(3)観測と理論の関係
「観測結果が、理論を肯定するものばかりでになるわけではありません」「理論と矛盾する観測結果が見つかるのは、決して悪いことではありません。その新たな謎を解くための、革新的な理論を再び生み出す呼び水となるからです。一つの謎の解決が別の謎を生み、それをまた解決するという永遠のサイクルこそが、科学の進歩であり,真理へ到達する道なのです。
それに理論と矛盾するといっても、それまでの理論が台無しになるのではなく、本質(233ページ)的な幹の部分を受け継いで、新たな枝葉が茂っていく場合が多いのです(234ページ)」。