解決に万能薬なし
解決に万能薬なし
◆地域の支え合い活動
庭掃除や家事などの生活支援を行う地域の支え合い活動。
「隠(なばり)おたがいさん」では、ひきこもっていた若者が活動を通じて、社会につながっていくきっかけになったそう。
支援する側もされる側も元気に!
◆地域のサロンでほっとひと息
桔梗が丘自治連合協議会が運営する「ほっとまち茶房ききょう」では、40~80歳代の幅広い年代のスタッフ30人がボランティアとして参加。
地域住民が交流できる憩いの場となっています。
◆畑一面のひまわり畑
名張の夏の風物詩、みはたメイハンランドのひまわり畑。
地域の皆さんと農業分野での就業を目指す障害者の皆さんが一緒になって整備しています。
◆診療所でコミュニティーガーデン
庭づくりを通じて参加者同士がつながれる場、それが「コミュニティガーデン」です。
地域に開かれた診療所を目指す「はしもと総合診療クリニック」の庭のデザイン・改修を担う奥田さんの提案で取り入れられました。
月に1回程度、診療所のスタッフと地域の皆さんが談笑しながら花を植えたり、植栽を剪定(せんてい)したり。
患者と医療従事者という立場を超えた交流の場になっています。
コミュニティガーデンの活動は、公園などでよくみられるようになりましたが、医療の現場では珍しい。
緑を眺めていると心が落ち着くし、心地よい運動にもなり健康につながります。
園芸療法士 奥田由味子さん
◆子どもたちと担う伝統
蔵持の獅子舞は、地域の子どもたちが天狗役。
伝統文化の継承を子どもたちにも託しながら、世代を超えた交流を楽しんでいます。
◆地域の子育て広場
利用者同士はもちろん、利用者とボランティア、まちの保健室の職員などとのつながりを生んでいます。
■その人自身が認められ、安心できる居場所を生み出していこう
同志社大学 社会学部教授 永田祐さん
不登校やひきこもりなど生きづらさを抱える人の背景は千差万別で、「こうすれば解決する」といった“万能薬〞はありません。
「社会に適応させよう」「引き出そう」と仕向けるばかりでなく、まずは、どうして「生きづらい」状態となってるのかに目を向けてみてください。
また、「甘やかしている」「努力が足りない」といった自己責任を強調する社会的風潮は、本人や家族を苦しめるばかりか、「助けて」の声を上げづらくしてしまいます。
ひきこもりの当事者や経験者などを対象にした全国調査(※)で「どのような変化によって生きづらい状況が軽減または改善したか」を聞くと、最も多かったのが「安心できる居場所が見つかったとき」(45・4%)。
次いで「自己肯定感を獲得したとき」(41・3%)となっています(当該選択肢は複数回答可)。
「何かをしてあげる」というよりも、本人が持つ力を生かし、活躍してもらうという発想が大切。
「支援する側」と「される側」として向き合うのではなく、対等な立場で、粘り強くともに考えていく姿勢が求められます。
名張の支援体制の特徴は、大きく3つあります。
まちの保健室が各地域にあり、支援が必要な人を「ゆるやかに」受け止めていること、「たらい回し」にしない仕組み、そして、住民主体の取組が活発に進められ、まちじゅうにたくさんの出会いの場があることです。
出会いが無く孤立してしまうと、自分の役割や、自分が認められることが無くなり、自尊心や自己肯定感が低くなってしまいます。
だからこそ、地域の中に、いろんな人が役割を発揮でき、自分の存在が認められる居場所を、たくさん生み出していく必要があるのです。
「自分らしさを出せる安心できる居場所があり、いろんな生き方が認められる寛容な社会」を築いていくことは、生きづらさを抱える人に限らず、多くの人にとって「生きやすい」社会につながっていくはずです。
※「ひきこもり・生きづらさについての実態調査」ひきこもりUX会議/2019年
〔広報なばり 令和5年10月10日号〕