葛飾区いじめ防止対策推進条例(素案)意見byO
葛飾区いじめ防止対策推進条例(素案)意見byO
私はNPO法人として2014年から葛飾区内でいじめ防止活動を行ってきた経験をふまえ、「(仮称)葛飾区いじめ防止対策推進条例(素案)」について以下3点の意見を述べさせていただきます。
(1) 条文のすべてを通して、葛飾区は「区と区民との協働」をすすめている区であって、いじめ防止対策についても区、学校、保護者、区民及び関係機関・団体が連携して取り組むという姿勢を打ち出していただきたい。
(2) 第10条「財政上の措置」について
、学校外からの講師招聘など、地域に開かれた教育活動を例示してほしい。
(3) 第13条5項 重大事態発生時の対策委員会委員の選任にあたっては、被害児童等保護者等の推薦する委員を必ず1名は入れるものとしてほしい。
以下、詳述いたします。
(1) 条文のすべてを通して、葛飾区は「区と区民との協働」をすすめている区であって、いじめ防止対策についても区、学校、保護者、区民及び関係機関・団体が連携して取り組むという姿勢を打ち出していただきたい。
私たちNPO法人レインボーリボンは
いじめ防止対策推進法第15条2項「学校の設置者及びその設置する学校は、当該学校におけるいじめを防止するため、当該学校に在籍する児童等の保護者、地域住民その他の関係者との連携を図りつつ、いじめの防止に資する活動であって当該学校に在籍する児童等が自主的に行うものに対する支援、当該学校に在籍する児童等及びその保護者並びに当該学校の教職員に対するいじめを防止することの重要性に関する理解を深めるための啓発その他必要な措置を講ずるものとする」
に沿って、2014年から葛飾区において「いじめ防止プログラム体験講座」「いじめ防止プログラム指導者養成講座」「いじめ防止教室」等を開催してきました。
2018年の実績としましては、1月白鳥小学校6年生2クラス、6月青戸中学校1年生2クラス、7月~11月宝木塚小学校5年生2クラス、9月上千葉小学校6年生3クラス、延べ約1200人の児童生徒を対象として、合計25回の「いじめ防止教室」を実施しました。
私たちの団体の構成員は、地域住民であり、中には在籍児童等の保護者も含む「親世代」であり、また、青少年委員、学校地域応援団コーディネーター、青少年育成地区委員会委員など、子どもの健やかな成長のために活動しているボランティアです。
そのような立場から学校に入っていき、いじめ防止教室を実施することで、子どもたちは「いじめ」の問題が社会全体の問題であることを理解するとともに、先生や親だけでなく地域の大人たちが自分たちを見守っていることを実感できます。
いま、同時期にパブリックコメントを募集している「葛飾区子ども・若者計画(素案)」では「全庁的な連携はもとより、関係機関・団体を含んだ地域全体が有機的に連携する体制を構築する」として、施策展開の主体として必ず「団体」の文言が入っています。
これは、「こども食堂」「学習支援」「居場所づくり」など、子ども若者支援の現場で民間の団体が行政に先んじて活躍している実態を反映しているものと思います。
翻って「いじめ防止」という分野では、私たちの団体以外に区内で活動している例を寡聞にして知りません。
その理由としては、一般の人たちが「いじめ防止は学校の問題」「先生が何とかして」と、他人事に考えている意識の問題もあると思います。しかし、私たちが活動を始めた時に痛感したのは、学校側の「教師が何とかするので口を出さないでほしい」という閉鎖的な考え方です。
いじめの背景には、子どもの貧困、虐待、ストレス、障がい等、様々な問題が複雑に絡み合っていることから、学校だけで解決できるものではありません。いじめ防止対策推進法第15条2項の重みを再度、認識していただき、本条例案に反映していただきますよう要望いたします。
具体的には
〇第1条、第3条4項、第5条、第6条、第9条の条文中にある「関係機関」の後に「・団体」と付け加えていただきたい。
〇第2条に(8)として「団体 いじめ防止に取組むNPO法人、ボランティア団体等をいう。」と付け加えていただきたい。
(1)については以上です。
(2) 第10条「財政上の措置」について、学校外からの講師招聘など、地域に開かれた教育活動を例示してほしい。
上述しましたように、学校外の団体がいじめ防止活動に取組むためには高い壁があります。
学校側の意識の壁を低くするために、第10条の財政上の措置は、例えば学校外から講師を招聘するために利用できるということを明記していただきたいのです。
現在、私たちが実施している「いじめ防止教室」は、学校側の裁量により、「特色ある学校づくり」の予算から私たちに講師料を出してくださるところもあれば、まったくの無償ボランティアとして実施しているところもあります。
条例できちんと財政上の措置がされれば、私たちの活動資金も確保でき、活動を持続することができますし、他の団体がこの活動に取組むモチベーションにもつながると思います。
「いじめ防止教室」の内容、評価については、区内の福祉サービス提供事業所に対する第三者評価制度に準ずる制度を適用していただければありがたいです。
(3) 第13条5項 重大事態発生時の対策委員会委員の選任にあたっては、被害児童等保護者等の推薦する委員を必ず1名は入れるものとしてほしい。
2014年4月9日、当時3年生だった新宿中学校の男子生徒が自死した事件についてのいじめ防止対策推進法による調査委員会(第三者委員会)答申が2018年3月に出されました。
「いじめを原因とした自死ではない」という結論でした。
「生徒たちは無反応になった当該生徒を窓際に移動させ、霧吹きで水をかけ、(中略)これらの行為は生徒たちの間でふざけている行為として日常許容されているという共通認識の下、当該生徒を覚醒させる目的で行われた行為であり、社会通念上いじめと評価できない」。
なぜ、このような結論になったのか、答申の前半に理由が書かれています。
「調査委員会に求められる調査は・・・(中略)・・・いじめに該当するのであれば、関係者に対してどのような指導を行う必要があるかどうかという現実の対応に影響を与える・・・(中略)・・・あえて法律上のいじめの定義をそのまま当てはめることはせず」・・・
つまり、生き残っている、ピンポン玉を当てたりズボンを下ろそうとした生徒たちをおもんばかって、いじめの定義をいじめ防止対策推進法よりも甘く見積もったということです。
このような答申が出されたこと自体、葛飾区のいじめ防止施策の失敗であったと思います。法律の趣旨に反するような答申が二度と出されないよう、重大事態が起きた場合の対応策は厳格に考えるべきだと思います。
具体的には第13条5項に「重大事態発生時の対策委員会委員の選任にあたっては、被害児童等保護者等の推薦する委員を1名以上」との文言を付け加えていただきたいと思います。
以上、3点の意見を記述させていただきました。
住 所 葛飾区青戸
氏 名 O(実名は伏せます)