社会福祉協議会「ひきこもり」等への取り組み(コメント)
社会福祉協議会「ひきこもり」等への取り組み(中間1次コメント)
〔2016年2月8日〕
各地の社会福祉協議会宛に「ひきこもり・ニート・若年無業者」対象の取り組みをしているのかどうかの問い合わせ(アンケート)を実施しています。
回答件数はまだ少数ですが、気づいたことをまとめます。
(1)主目的は取り組み内容の調査です。
昨年施行された「生活困窮者自立支援法」の事業を受託するところが一定程度あると予測しました。
これは大田区のJOBOTAを訪問したのが重要なきっかけになっています(2015年12月)。
予想通りですが、その程度を判定するには十分な情報が集まっていません。
回答数が少ないこととともに、法の施行から期間が短いことも関係します。
社会福祉協議会は制度としては不可欠のセーフティネットです。
民生委員がいて、何らかの問題のある人・家庭を把握して行政機関に結び付ける役割を持っています。
しかし、それが必ずしも十分に機能していないかもしれません。それには制度上の問題も、運用上の問題もあります。
制度の補充として生活保護法や生活困窮者自立支援法を制定してきたものと思えます。
運営の問題とは、制度の理解のしかた、運営担当者の特にリーダー役の能力と個性、国民性や地域性、福祉制度の関する思想や階層性・宗教観も関係すると思えます。
数年来の国の福祉予算の削減や、地方自治体の施策と予算配分などもおおいに関係します。
社会福祉協議会の取り組みは重層的になっています。都道府県としての対処、市町村および支部としての対処があります。
それらが民生委員の活躍に負わされている地域もありそうです。
今回は原則として市区町村の社会福祉協議会に情報提供を依頼しました。
(1-2)生活困窮者自立支援法
「生活困窮者自立支援法」の役割もここから評価していけると思います。
自治体の担当者から、生活保護の受給者を減らすための対応策と聞かされたことがあります。
以前から社会保障を考える時いきなり生活保護に突き当たるので、そこに至る中間的な対応策を必要と考えてきたのですが、それに該当するのかもしれません。
「ひきこもり」という言葉が公式に入る福祉的な法制度として受け取っていいと思います。
「生活困窮者自立支援法」の施行は自治体間にかなりのばらつきがあると感じています。
それがどの程度なのかを少しは知ることにもなります。
回答を見ると対応をしている例には、相談レベル、関係機関への紹介レベルにとどまっているところが多いようです。
ここを実質的なものにするには担当者の力量が関係します。
特に社会福祉協議会から業務委託している所での実質的な取り組みの実例を期待しています。
(2)技術的な面
全国的に統一された社会福祉協議会のリストが見当たりません。それは必ずしも悪い方ばかりに出るわけではありません。
市区町村の社会福祉協議会の一覧を集めているのですが、それが県単位でできていないところがあります。
政令指定都市が別になっている。市町村の下部になるはずの支部単位になっている、都道府県が載っていない、など。
県別に調べる担当者の検索する能力を高めています。
(3)このコメントの性格
この分野の専門的な知識はありません。回答件数が少ない中での、覚書的なコメントです。
100件ぐらいからの回答を期待しています。2月8日現在、12件です。
「取り組み内容なし」と寄せてもらったのが11件あります。これも貴重です。
コメントは情報収集により得た事情をまとめたものです。参考になればいいのですが…。
あわせて福祉分野を専攻する学生等の協力も欲しいところです。
社会福祉協議会「ひきこもり」等への取り組み(中間2次コメント)
〔2016年2月14日〕
24の社会福祉協議会(社協)から回答を受けました(2月14日現在)。
そのうち16か所が「生活困窮者自立支援法」の受託事業です。この受託があるなしにかかわらず、社協にはそういうスタンスはあります。
「特別の取り組みをしていない」と回答を受けたところ(28か所)でも、同じ状況はあります。
ある所からの回答には、「①心配ごと相談、②生活福祉資金貸付相談、③たすけあい貸付資金相談」とありました。
別の社協からは「家計相談、就労準備支援、自立相談支援」とありますが、基本的には同じ範囲のものだと思います。
さて「生活困窮者自立支援法」の受託事業を行う社協を見ると、多くは相談と関係機関への紹介事業です。これはこの受託事業を行う以前からのもののように思えます。
ではあまり意味がないかと言うとそうとは言えないかもしれません。
それは施行1年未満の状況であり、今後の動向にかかっているからです。その中でも、訪問相談と家族会をしているところが各3社協ありました。
相談と関係機関への紹介を超えた取り組みをしている社協がいくつか見られます。
「生活困窮者自立支援法」の受託であるなしに見られます。もともとそういう取り組みをしてきたものと理解できます。
相談と紹介、および訪問と家族会を超える取り組みとは何か。それは当事者の集まれる居場所の運営と就労準備(ワーク)に及んでいるかどうかです。
これを紹介します(回答文による)。
「ひきこもり・ニート・若年無業者」に対応する内容に関することで、各社協の取り組み全体をみてのものではありません。
回答が増えていく中でいろいろな状況がわかることを期待しています。
(1)北海道浦河町「①講演会等:利用者のニーズがあれば実施可能。
②相談室:平日に開設されているスペースあり(8:30~17:00)。
③対人関係向上の取り組み:集団及び個別の対応あり。
隔週水曜日に若者たちの語らいの場「10代(20代の人も)ミーテイング」の開催。
④技術習得・能力向上の機会:利用者のニーズにより、パソコン操作、調理、スイーツづくり等実施。
⑤職場見学等:利用者のニーズに応じ、福祉施設等の見学実施可。
⑥家族会は現在のところなし」。
(2)埼玉県三芳町「当社協では、公開型の福祉大学(10回)の1コマで毎年、ひきこもりの講座をおこない、福祉生活相談及び生活困窮者自立支援法総合相談事業「アスポート相談支援センター」で相談を受け、 関係機関へのつなぎや継続的な面談をおこなっています。
また、生活困窮者の学習支援事業をおこなうなかで不登校の児童の学習支援・社会体験の支援をしています」。
(3)(山口県長門市)「15歳以上で高校に通学しない方や高校を中退された方も利用が適当と認めた場合は対象とする。
まず見学していただき、利用の意思を確認したうえで、関係機関やボランティアとともに対応(支援)する。
竹作業(竹切り、竹割り、竹炭、竹酢液、竹チップ、竹パウダー)、竹細工などが特色」。
社会福祉協議会「ひきこもり」等への取り組み(中間3次コメント)
〔2016年2月20日〕
ようやく北海道から沖縄までの全市区町村社会福祉協議会(社協)に「ひきこもり・ニート・若年無業者」への対応策の質問アンケートを送りました。
およそ2か月かかったことになります。いちばんの難関は送り先のFAX番号の確認でした。それをそろえたことが直接の成果になりそうです。
質問アンケートの作成はそれ以前から少しずつ準備をしていました。
取り組む必要を感じたのは、昨年4月に施行された生活困窮者自立支援法に「ひきこもり」が支援対象に入ったことです。
業務上知りえたことから判断して、その施行状態に自治体間でバラつきが大きいと感じたことです。
そのいくつかの事例を参考に質問アンケートをつくりました。
振り返るといくつかの不十分さはあります。避けられないことです。
回答は30か所(19日現在)です。別に「特化した対応事業はない」とする回答が32か所からありました。
回答は少ないですが、アンケートを送った時期が早かったのも理由です。それでもこの時期の様子を知る意味もありました。
回答の目標は100か所です。「対応事業はない」というのを含めると100か所にはいくでしょうが、それでは不十分です。
もう一つ感じていることがあります。
生活困窮者自立支援法の運用は、社会福祉協議会が中心ではないかもしれません。
協議会というよりもそこに参加する事業体(経営体・運動体)に迫る必要性です。
協議会は事業体の面もありますが、同時に公共機関として受付窓口で終わるかもしれません。もう少し様子を見なくてはわかりません。
ところで、社協に参加する事業体から情報を得ようとすると特別の手立てはありません。
取り組んでいる所の個別の状況を集める形になります。それは前進かもしれませんが。