睡眠薬は身体能力としての睡眠力を弱める?
睡眠薬は身体能力としての睡眠力を弱める?
睡眠薬、睡眠導入薬について、このところよく聞くことの感想を書きましょう。
一部の情報に基づくものとは思いますが、無視はできないと信じるからです。
いろいろな人から睡眠薬服用の話を聞きます。
なかなか眠れない(寝付けない)、眠りが浅い…それで睡眠薬を服用しています。
様子を見ながら薬を減らし、最終的には睡眠薬を使わないという願望が多いです。
医師からもそういう主旨の説明を受けています。
しかし、私はそれを実現し睡眠薬を使わなくなった人を知りません(いるはずですが!)。
睡眠薬を使わなくなった人はいます。
その場合は(医師の意向を無視して)自分の意思で薬を飲まないと決めた人です。
複数います。
服薬中断に伴うある種の身体症状が出ます。離脱症状といいます。
麻薬中毒者が麻薬をやめるときに見られる症状と同種だと思います。
その苦しい時期を過ぎて睡眠薬のない生活を取り戻しました。
なかなかつらい時期です。
医師からは自分で勝手に薬を中断しないように勧められます。
こういうやり方を医師は勧めないし、危険であると忠告します。
私もこの手の相談を受けたことがあります。
私は服薬をやめるのに同意できませんが、それは服薬を続けるのがいいと思うからではありません。
私が服薬をやめるように勧めたことを根拠に離脱症状が出ても責任を負えないからです。
睡眠薬服用を続ける人から3年後、5年後に聞くと薬は減っていません。
当初の薬が効かなくなった、むしろ薬の量が増えている、より強い薬になった…こういうことが多いです。
薬の服薬を始めるスタートの方向や仕方が正しくないと思えます。
睡眠薬に代わり眠れる対処法はあるのでしょうか?
不眠の原因は、生活(将来)の不安、緊張したストレスの強い生活などです。
それを回避・解消するのが不眠を解決する根本にあります。
そういう人生、生活全般に及ぶことはすぐには答えが出ません。
そこで、より個人的な条件による対処法が考えられています。
聞きかじった範囲の代表的なものを挙げてみます。ストレス解消に関係する気がします。
① 運動するというのがあります。
効果的な場合があります。
からだを動かすという意味では仕事もそれに相当する場合があります。
からだが疲れても眠れないとなると運動だけに期待はできません。
② 食べ物はどうでしょうか。
カフェインを含むコーヒーが睡眠に有効とか逆に眠れなくなるということを聞きます。
食べ物が睡眠に関係するはずですが、食べ物全体についてはよくわかりません。
睡眠にはメラトニンが関係します。
ある種の食べ物により体内に取り入れることは可能です。
それを身体化する、すなわち食べ物を身体能力としての睡眠力にするには、消化機能の健全性が備わり、消化機能以外の適切な運動も前提です。
③友人関係、特に緊張感なく心配事などを話せる相手の存在もあります。
個人的に話せる友人づくりも役立ちます。孤立感を減少させるのでしょう。
場合によっては最大の対応方法かもしれません。
しかしこれは即物的にはできません。
④ 重要なのは将来の不安、職業や働けないというのも大きな不眠理由です。
こう考えていくと個人的(個体的)な条件に即した、手がけられる対処法には個体差が大きく、どういう方法がその人に最適かを決めにくくなります。
かりに決めたとしても多くは時間がかかり、途中で挫折しやすいものです。
これらはいずれも医療の範囲ではありません。
医療はシンプルな対処法として睡眠薬服用を提案します。
医療面で手を打った状態にするのです。
多くの場合、医師の対応方法には薬の種類選びと組み合わせ、薬の量、飲み方以外には方策もないのです。
薬の効果はすぐにでます。
しかしやがて効かなくなります。
効果を出すために薬の量を増やし、より強い薬に変える。
私が聞いているのはこの循環状況です。
何かを見失っているのではないかと感じるのです。
睡眠薬服用に頼る睡眠とは、体に備わる自然に睡眠する能力(睡眠力?)を育てないのではないか。
逆に睡眠薬服用によって身体に備わる睡眠力を弱体・消失させてはいないか。
これが睡眠薬依存の正体ではないかと私は考え始めています。
そう主張したいところですが、証拠がありません。
多くの人は薬の服用に不安を感じていますが、それを裏付ける証拠があやふやです。
薬の服用の効果が見られない場合、薬の種類選びが正しくなかったのではないか、薬の量や薬の組み合わせが上手くなかったのではないか、飲み方が適切ではなかったのではないか、という対処の仕方に頭を巡らします。
薬の服用自体がよくないと感じながら医師との話ではそうなりません。
ほとんどの医師にとってはそういう選択はありません。
というよりは医師には薬をどうにかするしかないのです。
その結果、好んで睡眠薬に依存するつもりはないのに身体能力として睡眠力が弱くなります。
睡眠薬でカバーせざるをえなくなる。
それを睡眠薬依存というのではないか。
さらには精神の安定性も大事でしょうが、そのあたりになると収まりがつきません。
しかし、医療はそれらの大事な分野には及びません。
例えば人間関係、家族状況、職業などが関係する領域です。
医療・医師に過大な役割と期待を負わせているだけです。
医療・医師のせいにしていても不眠は解消しないと心すべきでしょう。
*会報『ひきこもり周辺だより』9月号に掲載するときに加筆修正をしました。
加筆修正した文章に差し替えました。(9月4日)