男女差の生まれる理由と発生学からの根拠
男女差の生まれる理由と発生学からの根拠
〔2014年10月20日〕
江原昭善『進化のなかの人体』(講談社現代新書、1982年)は解剖学から人体を書いた本です。
進化における変異(バリエーション)、先祖がえり(逆行現象)など問題意識に近づきそうなものもありますが具体的なことはつかめません。
男女差についての記述があります。
カウンセリングと周辺事情においては女性の方が活用頻度も対応者も多く見られます。
こうなる面があまり評価されていません。
例えばIQテストにおいて平均的には男性が女性よりも高く出ます。
これはIQを測る物差しが男性に傾いている、知識とか論理に傾いているからです。
そのあたりに関する意見です。
「ある心理学者は、「男性は事物に、そして女性は人に思い入れする傾向がつよい」という。
つまり、男性は生まれつきホモ・ファーベル(工作するヒト)だし、女性はホモ・クラティヴス(世話するヒト)だというわけだ。
男性は能動的に外に向かって働きかけ、女性は受動的に受け入れ、保護する。
男性は自分の立っている足もとから飛び立って、開かれた世界に向かい、女性はいつも大地に立ち、自分をとりまく閉じた世界で定着しながら生きようとする」(106-107ページ)。
「からだやこころの面でみられる女らしさの大部分は、こどもを生み、育てるという、もっとも根本的な役割からみると理解しやすい。
たとえば、腰幅が大きいとか、腹部の内臓は移動できやすいようにできており、下腹部の筋肉や靭帯は伸縮性がつよく、妊娠して腹が大きくなっても、内臓が圧迫されたり、腹が破裂しないようになっている。
しかしその分だけ、極端な運動や力仕事をしたりするのには安定性を欠いていることになる。
心理的には女性が世話好きとか、事物よりも人に思い入れが強いとか、閉じた世界のなかへ定着する傾向とかも、すべて出産と育児にかなった特徴ということができるだろう。
しかし女らしさの特徴のなかには、出産や育児以外の生物学上の理由から生じたものもある。
たとえば、女性の成長は男性よりも少し早めに完成し、その分だけこども的だ。
身長も高くなく、ひたいは丸く、骨格はきゃ奢で、男性のように筋肉がつく部分ががっしりと発育するようなことはない。
体毛もひげもほとんど濃くなるようなことはない。
このような特徴はいずれも、こども的といわれているものばかりだ、
つまり発生学上は、女性のほうが男性よりも保守的・原始的で、逆に男性のほうが特殊化する傾向が強い」(108-109ページ)。