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江戸川区ひきこもり調査報告書を見ての要請

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江戸川区ひきこもり調査報告書を見ての要請

これまで私はこのような行政機関の調査報告書を細かく読んだ記憶はありません。
ですからこの江戸川区ひきこもり調査報告書がどのようなレベルのものかを判断する基準はありません。
平均レベル以上のものと受け取ることにします。
私は25年の間、ひきこもりの人に接し、彼ら彼女らに囲まれた生活をしています。
報告書で述べられている彼ら彼女らの現状を繰り返すことはしません。
確かに現状は社会問題になるレベルの状況であり、何らかの打開策が必要です。
報告書を読み、それがどういう性格のものになるか打開の方向を考えてみました。
参考になればさいわいです。
ひきこもりへの対応策はうまくいっていません。
多くの方がさまざまな努力と成果を収めていると認めています。
しかし、行政の場面でも、社会の動きの面でも、身体科学や精神心理的な理解でも大きくすすんでいるとは考えません。
問題が難しく事態を論理的・実証的に説明するのは大変です。
しかし現実はその対応策の改善や理解を待っておらず、切迫しています。
25年以上かかわる私もその上手く理解できず、対応できない1人です。

(1) ひきこもりへの社会的・行政的対応の現状
現状の対応策、特に社会状況や行政面の対応策をごく手短に紹介すればこうなりませんか。
ひきこもりとそれにより派生したことや周辺事態に困った人が助けを求める。
それが社会問題と感じる規模になり、行政的な対応が求められる。
行政的な対応が始まったのは2000年以降としましょう。
家族会(親の会)と当事者の会は90年代までに生まれています。
不登校から関わった親の会がひきこもり家族会に様変わりした所もあります。
いまはそれらが居場所になっているところもあります。
まず家族が相談に行きます。相談先は保健所、精神保健福祉センターでした。
民間ではカウンセリングや医療機関がこれらに先行します。
次は(たぶん並行して)技術訓練や資格取得の教育・就労に関する機関です。
ハローワークにも行った人がいると思いますが、そこでの対応はもっと後のことです。
生活保護の福祉部門は早い時期にこれらの相談と対応が混ざっていたと思います。
民生委員・社会福祉協議会などは早くから関わっていたはずです。
町中の不動産業やアパート経営の人にも事態を察知していた人はいました。
行政・法制度などの対応には、発達障害支援法、ニート対策、地域若者サポートステーション、などができました(若者自立塾というのも一時ありました)。
2016年施行の生活困窮者自立支援法にひきこもりが対象に加えられました。
江戸川区ではくらしごと相談室で対応しています。 これらの総体の取り組みにおいて、ひきこもり対応は成功していない実情を報告書は示しています。
今回の報告で目に付くのは、関係機関(民生委員)や区職員(ケースワーカーと保健所)からの声です。
区の広報などでは「相談に来てください」としていますが、特に長期のひきこもり経験者(30代・40代)への決め手となる対応策は見当たりません。

(2) 調査報告書に現れている現状と方向性
今回の調査報告書から、この状態と方向がどのように提示されているのでしょうか。
報告書には数字のまとめがあり、当事者の意見は限られた範囲の人のものです。
ことばで表現される自由意見があり、それが参考になります。
報告書はそれらをいくつかの項目に分けて整理しています。
また当事者の年代別、同居家族の有無、ひきこもり状態の期間の長さ別にまとめています。
ここでは項目別に「求められていること」が並べられているのでそれを紹介します。
私の要請は20代後半から40代のひきこもり当事者を想定しますので、年代別・同居家族・ひきこもり期間は省きます。
ただし、省いた部分や当事者・家族等の自由意見(25~28ページ)、関係機関の自由意見(37~40ページ)、区職員の自由意見(48ページ)も照合しました。
報告書内容を公正に読み取ろうと努めたはずです。
分けられた項目は、相談先、支援、行政の在り方、経済的な不安、家族の負担、情報の6項目です。
今回の調査報告からの公式提案につながる部分になると思えますので、それぞれのまとめを紹介します。
①〔相談先〕
当事者:年齢・経歴関係なく気軽に相談できる窓口 、あらゆる不安について相談する機会 、当事者同士で話しをする機会・居場所。
家族等:家族としての悩みを相談する場所、同じ悩みを共有し情報交換できる場所、他人の目を気にせず相談できる場所、当事者を支えるための知識を得られる機会。
関係機関:最初の相談窓口の一本化、インターネットや広報紙を用いた相談先の周知、当事者以外からの相談でも対応できる体制。
区職員:あらゆる不安について相談する機会・居場所、ひきこもり専門窓口の設置、気軽に相談できる窓口。
②〔支援について〕
当事者:【就労】 求職活動・就労をするための訓練、その人に合わせた段階的な支援、病気・障害でも働ける就労先の案内、在宅での就労方法の提案。
当事者:【就労以外】 会話や体力作りを目的とした訓練、日中活動やボランティア活動の提案。
家族等:家族以外の協力者、外へ連れ出すきっかけ作り、コミュニケーションの取り方を学ぶ場、社会とのつながりを持つためのきっかけ作り。
関係機関:原因に応じた支援方針の策定、専門性を有した職員の配置、成功事例の集約、自立に向けた支援方法の体系化、支援方法に関するフローチャートやマニュアルの作成、支援方法に関する講習会の開催。
区職員:関係機関との連携体制の確立、問題意識の無い当事者、家族等への対応、その人に合わせた段階的な支援、当事者家族への支援方法を学ぶ場。
③〔行政の在り方〕
当事者:ひきこもり専門窓口の設置、窓口の広報活動、行政側の意識改善。
関係機関:行政で対応できることとできないことの明確化とその周知、関係機関と連携協働できる体制づくり。
④〔経済的な不安〕
当事者:経済的な不安を相談できる場所、区貸付・生活保護制度への案内と申請補助、医療費・カウンセリング費用の助成。
⑤〔家族等の負担〕
家族等:支える側の親族への支援、ひきこもりに対する知識。
⑥〔情報〕
関係機関:情報共有できる仕組みづくり。

以上を見ると互いに重なるものもあります。これらを自由意見と照合しました。
自由意見は、類似する意見を含めて件数が示されています。
どれだけの人がそういう意見を持っているのかを示す貴重な点であり、意識して見ましたが、私のこの要請文では略します。
これらの全体をみれば、この内容の提案では現状と大差ない対応策に収束すると思います。
それでも貴重な内容が含まれていると認められますので、そこを手掛かりに私の要請を提出します。
かなり大きく違う部分もあると受けとめられるはずです。
現状を変えるには従来の発想を変えることが必要と考えるからです。
行政面で対応策の現状を改善する発想には2つの点が必要だと思います。
①1つは当事者が動く(相談に行くことも含めて)こと自体が、直接的な利益になる方法を提示することです。 

⇒(4)に続く。

②区の相談先は多様であるのがいいことですが、ひきこもりに関する最終的な担当課が必要です。 

⇒(3)に続く。

この2つの面についてそれぞれ要点の説明をします。

(3) 区の機構に「ひきこもり対応課」を設けます
専門の担当部門を設ける点は報告書にも示唆されています。
そこを具体的に展開します。このなかで民間等の協力団体を「指定する援助団体」と表します。
① ひきこもりに対応するセクションはいろいろあるけれども、最後的な対応部署がない状況を解決しなくてはなりません。
区長直轄の「ひきこもり対応課」を設けます。
対応策がないなかで「ひきこもり対応課」を設けても何もできないと思われるかもしれません。
あれこれの部署で中途半端になり、たらい回しになっている件案を最後的にここに集め、その解決策を考え出す部署が必要です。
「ひきこもり対応課」には下記の担当者を置きます。
ここに集まる相談者は、固有名詞(登録制)でプライベートな事情を守りながら、少なくとも数年間は追跡調査の対象にします。
登録者にするようめざすので、以下では登録者とします。
②「ひきこもり対応課」の1部門に居場所運営部を設けます。
ここでいう居場所は当事者の集まる場と家族会、および両方を併せ持つ性格のものです。
年数回以上の会合を想定する居場所です。
区は居場所を紹介するだけではなく、自ら居場所を運営する立場になります。
この部分を業務委託等により進める策はありますが、それを受ける事業者自体を養成しなくてはなりません。
すでにある当事者の会や家族会との協力、場所提供、告知など情報発信の手助け等も含みます。
③「ひきこもり対応課」の1部門に訪問サポートの支援部を設けます。
訪問サポート活動をする民間事業者の申し出により、訪問を受ける側に一定の補助を行います。
ひきこもり経験者のうち有志をひきこもり訪問者に養成します。
民生委員、ソーシャルワーカー、保健師を含むひきこもり訪問者の研修・養成をします。
これらのひきこもり訪問者は、ひきこもり相談の登録者に計画的に訪問をします。
④「ひきこもり対応課」の1部門にネット推進部の設立を検討します。
ひきこもり状態にある人が社会的な活動、経済的な活動、創作・表現活動等の機会が得られるようにインターネット利用の応援をします。
ネット利用技術の学習・研修機会の提供、機材の利用機会のサービス、機材購入の援助等を検討します。
⑤ 区内の求人難・後継者難の事業者(特に小規模事業者)と協力し、人材発掘につながる職場見学・説明会、実習・研修会などの機会を持ちます。
いわば事業者による作業を伴う居場所づくりです。
事業者がこの趣旨の機会を開催できるように助言と援助をします。
相談した登録者に対し、幅広く、定期的・機会に応じて粘り強く案内し、参加を勧めます。
これは長期の取り組みであり、区の雇用促進策であり、産業・経済政策の一部です。

(4) 動くことが当事者にとり直接的な利益になる方法をすすめる
ひきこもり当事者が自ら動きだすのは少ないという調査報告は事実ですが、事実の全部ではありません。
ひきこもりの特徴の1つは、動き出した人には自ら支援者側に回る人が少なからずいます。
「人から言われてやるのに懐疑的であり、やるのなら自分の意志でやる」、極端に表現しますとこれが反面の事実です。
全国若者・ひきこもり協同実践者交流会という全国組織があり、各県持ち回りで毎年交流集会を開いています。
始まって15年以上ですが当初は「支援者交流会」でした。
これにひきこもり当事者が参加し支援者の側に加わり始めました。
その変化により「協同実践者交流会」に名称も変更しました。これが象徴的なひきこもりの特色を示しています。
彼ら彼女らの行動は自分の意志を社会的(必ずしも家族内ではありません)に抑圧されてきた成育環境に関係します。
繊細な感性を持ちながら粗雑に見える社会の間にいて、心と社会を閉ざす行為になったとみることもできます。
その動き出す初動エネルギーを引き出すための施策が、もう1つの視点です。
思いつく範囲で直接的な利益になる方法を列挙します。
登録した相談者には次の利益を得られるように図ります。
①(交通費):区が指定する援助団体等が開催する会合、相談機会等に数回以上の参加を確認した登録者に交通費を支給します。
参加しやすい条件づくりと指定する援助団体等の利用を推進します。
②(葬儀):登録者の三等身以内の親族が死亡したときは、区が認める葬儀社・宗教施設の基準葬儀方式により区の費用負担で行います。
〔葬儀は深刻な問題です。何らかの方法で葬儀ができるようにしなくはならないでしょう。親が動けるうちに準備ができるその1つの方策です。〕
③(公衆浴場):登録者は、区内にある公衆浴場を50%の入浴料金で利用できます。
登録者カードによりスキャン記録し、残額は公衆浴場からの申請に基づき行政が費用負担します。
〔江戸川区は高齢者の公衆浴場を半額で利用できる制度をつくっています。これをひきこもり当事者と家族に広げます。〕
④(高卒資格の取得):登録者のうち高校卒業でない人に、高校学費と高卒認定試験に必要な学習援助・教材費および受験費を支給します(年齢制限なし)。
高等学校等修学支援金も活用します。
夜間中学を利用する場合(学費無料)は、教材費・交通費等を支給します。
⑤(医療・保健および心理カウンセリング等の利用):登録者が医療・保健および心理カウンセリング等を利用するとき、健康保険、そのほかの支援助成制度によっても費用負担が一定額以上あるときは、区は基準により相当額を援助します。
区の指定する援助団体等であるのが条件です(区外に所在しても可能)。
⑥(住居の援助):登録者が民間不動産業者を通して、区内で住宅の紹介をうけるとき、区は一定額の家賃援助を検討します。
⑦(食の援助):登録者に対し、区は食品販売事業者と協力し、食品ロス対策・貧困対策の一部として食の援助を検討します。
⑧(その他):登録者と家族の生活・健康・生命に直接的な負担がかかる場合は、区はそれぞれの事情に即して施設利用、サービス提供および援助金支給を行う方法を検討します。
以上ですが、完璧な方法とはいえませんし、もともとそういうものはありません。
人は多様であり強制は逆作用になります。それを前提にした要請です。

(5) 江戸川区をひきこもり対応の先進的な自治体にしよう
今回のひきこもり調査(調査時期2019年9月~10月)は大都市においてひきこもりへの対応の現状を示したといえます。
江戸川区は東京都東部に位置します。この種の啓発的な取り組みは都内中心部から西部で行われることが多いです。
この地理的な違いはひきこもり状況の違いにほとんど影響はしません。
不登校情報センターに相談に来た人の住所別の人数を示します。
足立区44名、荒川区15名、板橋区41名、江戸川区85名、大田区64名、葛飾区80名、北区26名、江東区53名、墨田区38名、市川市49名、浦安市16名、習志野市16名、船橋市57名、松戸市60名…などです。
総計は都内約1600名、千葉県は850名ほどです。
(以前は新小岩、いまは平井在住であり、相談者数は最盛期の半数程度です。また家族等もカウントされています)。
この数値が示すことは(交通事情が関わりますが)江戸川区でひきこもり対応策が功を奏すれば、首都圏に広がる要素が見えます。
江戸川区から全体的な打開策を切り開けるチャンスがあると判断できます。
児童虐待の十年後、二十年後に表われる1つがひきこもり状態と言います。
都内他区に先駆けて児童相談所を設立し、虐待に対応しようとする江戸川区はひきこもり対応でも見本になる取り組みを始めるように期待できます。
私には予算規模は想定できませんが、可能な部分で可能な予算規模から手を着けて行くように要請します。

*説明には、細部が未確定・不明確なところもあります。具体化する過程がないと明確に書けない部分があるからです。

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