子どもの家庭養育推進官民協議会
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幼い命に家庭の愛を 県境越え支援へ 県内に広がる「特別養子縁組」「里親委託」
虐待などで親元にいられない乳幼児が家庭的な環境で暮らせるよう、特別養子縁組や里親委託を促進する取り組みが静岡県内に広がっている。
十八歳未満の保護が必要な子どもが里親に委ねられる割合を示す県内の里親等委託率は過去十年間で大幅に拡大。
静岡、浜松両市は県境を越えた支援態勢づくりに乗り出した。
厚生労働省の統計では二〇〇三年度からの十年間、虐待で死亡した生後一カ月未満の乳児は全国で百十一人、うち九十四人が一日以内の死亡だった。
静岡家裁沼津支部が十二日に少年院送致を決定した富士市の当時高校生の少年少女も、出産当日に殺害している。
特別養子縁組は一九八七年に新設された。
乳幼児が虐待、遺棄された場合、実親の同意がなくても別の家庭の養子にできる。
望まない妊娠・出産のケースも実親が同意すれば適用される。幼い命を守る役割が期待される制度だ。
養子縁組あっせんを担う家庭養護促進協会(大阪)によると、特別養子縁組の受け入れ希望者は不妊に悩む夫婦が多い。
岩崎美枝子理事(75)は、一時的な養育を前提とする里親への委託と比べ、「子の成長に必要な大人との安定した信頼関係を築ける」と養子縁組の利点を話す。
だが特別養子縁組は全国で年三百~五百件にとどまり、保護が必要な子の1%にすぎない。
現状で、多くは乳児院や児童養護施設で暮らす。
養子縁組希望者を含む里親への委託も16%にとどまる。
家庭で暮らす子を増やすため、国は「おおむね三分の一」の委託率を目標としている。
県内の一四年度末の里親等委託率は27・2%で、〇四年度より16・6ポイント増加した。
厚労省の統計では大分県などに次いで全国トップクラスの伸び幅だ。
県こども家庭課によると、行政と里親会のつながりが深いことから里親支援の手厚い静岡市が委託率39・2%とけん引している。
各児童相談所で施設入所より里親委託を優先するようにしたという。
担当者は「子がより相性の合う親に巡り合えるよう、今後も担い手を増やしていきたい」と話す。
今月四日の「養子の日」には、静岡、浜松市など全国二十自治体と民間十三団体による「子どもの家庭養育推進官民協議会」が発足した。
メンバーらは特別養子縁組や里親委託を推進することを確認した。
鈴木康友浜松市長は発足式後、「家庭での養護を県内に広げるため市が先例を示していくことが大切だと思っている」と語った。
<養子縁組と里親>
養子縁組には実親と子の法的な関係が続く普通養子縁組と、新しい親の法的な子になる特別養子縁組がある。
特別養子縁組は一般的に里親として6カ月以上の試験養育期間を経て、家庭裁判所が認めれば成立する。
全国の児童相談所や民間団体が親子の仲介を担う。
要件を満たさない場合、虐待などで親元を離れた子は18歳で委託関係が切れる養育里親や施設に委ねられる。
〔◆平成28(2016)年4月13日 中日新聞〕
【中央官庁だより】 ◇初の官民協議会に期待=地方6団体②
20自治体と13民間団体が参加する「子どもの家庭養育推進官民協議会」が先週、発足した。
養子縁組や里親委託の推進に向け、普及活動や政策提言を行う予定だ。
この分野で官民が連携組織を設けるのは初めてで、「以前からこの問題に熱心に取り組んできた鈴木英敬三重県知事が呼び掛け、問題意識を共有する首長が集まった」(協議会事務局関係者)。
民間団体については、最近はインターネットで養子縁組をあっせんするNPOなどさまざまな団体があるが、「今回は長年の地道な活動で、実績を積み重ねてきた団体を選んで声を掛けさせてもらった」(同)という。
厚生労働省によると、実親と暮らせない子の約8割が施設で暮らす。
同省としても問題意識は強く、養子縁組や里親委託を増やすため、自治体の役割を明確にする児童福祉法改正案を今国会に提出済み。
同省担当者は「就学前の子どもは原則、(施設での受け入れより)特別養子縁組や里親が優先であることを法案審議の中で明らかにし、成立したら自治体に通知して対応を促したい」と話す。
一方で、里親委託の推進を行っている児童相談所は「虐待通報への対応などで既に手いっぱい」という現状も。
そうした中、福岡市など一部自治体が民間と連携して里親委託率を急増させる成功例も出てきており、同省幹部は協議会の活動を「省を挙げて応援していきたい」と期待を寄せていた。
〔◆平成28(2016)年4月11日 時事通信 官庁速報〕
養子縁組や里親委託推進 官民 全国組織設立へ 県など33団体
【三重県】三重県など全国の自治体や民間の計三十三団体は四月四日、養子縁組や里親委託などを官民で推進する全国初の「子どもの家庭養育推進官民協議会」を設立する。
県が十六日、発表した。
長野県や静岡市、浜松市、大津市を含む二十県市と、全国里親会、全国養子縁組団体協議会などの民間十三団体が参加。
先駆的な取り組みの情報共有や啓発活動、国への提言などに取り組む。
事務局は日本財団(東京都港区)が務める。
養子縁組のうち「特別養子縁組」は、生みの親が育てられない六歳未満の子を引き取り、法律上の親子になる。
三重県は特別養子縁組に関する全国初の育児休業(育休)制度を導入。
養子縁組を結ぶのに法的に必要な試験養育期間に、育休に相当する休みを職員が取得できるようにした。
里親制度は、保護が必要な子どもを別の家庭に委託し、家族の一員として育てる。
県は制度の普及に向け、二〇一五年度に全二十九市町で「里親説明会」を開いている。
四月四日は、日本財団が定めた「養子の日」。
同財団が開催する「子どもが家庭で育つ社会をつくるシンポジウム」で発足を発表し、設立宣言や首長らの決意表明をする。
県内には今月一日現在、児童養護施設に入所しているなどの「要保護児童」が五百四十四人いる。
会長に就任する鈴木英敬知事は「全国には実親と暮らせない子どもが四万人いる。より多くの皆さんからの理解、協力を得る契機としたい」と述べた。
〔◆平成28(2016)年3月17日 中日新聞 朝刊三重版〕