奈良市子どもセンター
奈良市子どもセンター
種類・内容 | 児童相談所 |
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所在地 | 〒630-8031 奈良市柏木町263-2 |
連絡先 | TEL:0742-34-4804 FAX:0742- |
中核市で児相設置の動き 奈良市、来年度開所目指す
子育て相談をする親子。気軽に相談できる「子どもセンター」を目指す
子どもの権利条約の理念を反映した2016年の児童福祉法改正を機に、中核市の児童相談所設置が進んでいる。
奈良市は、中核市としては4例目となる「(仮称)奈良市子どもセンター」の来年度開所を目指す。
コロナ禍の今、母子や子どもの置かれた環境は厳しい。
受け入れ側の施設は基本的に歓迎しているが、さらなる連携や施設の特性を見据えた活用も求めている。
奈良市は人口約36万人。大阪のベッドタウンを抱えて、子育て世帯も多い。
19年度の児童虐待相談対応件数は924件。
10年前の4倍近くに増加した。奈良県内の児相は2カ所だが、市の児相ができれば県内3カ所で人口比に見合った対応が可能になる。
基本方針の一つが「妊娠期から切れ目のない子ども・家庭への総合的な支援体制の拠点を目指す」こと。
保健所に妊娠届を出す段階から母親と関係を築き、早期介入によって、児童虐待を予防する狙いもある。
市の子ども未来部の野儀あけみ参事は「家庭が機能せず、子どもが普通の生活習慣を身につけていないと、将来の生活に困難を生じる可能性がある。
18歳を過ぎてからでは支援が難しく、長期にわたる。
将来を見据えて、子どもが小さいうちから支援したい」と話す。
親子が遊べるキッズスペースを設け、保護者同士の情報交換や子育て相談、発達相談の窓口も併設し、子どもや家庭をワンストップで支援する計画だ。
■ノウハウ行政に活用
受け入れ側の福祉施設はどう見ているのか。
生駒市で、児童養護施設「愛染寮」と乳児院「いこま乳児院」を運営する社会福祉法人宝山寺福祉事業団の辻村泰範理事長は「身近なところに児相ができるのは歓迎だ。
対人援助の高い技能と知識、人間性が備わった窓口の人材が求められるが、行政では異動などでベテランが育ちにくい。
施設は行政から指導を受ける立場だが、各分野で経験豊富なスタッフがいる。
そのノウハウを行政組織に生かしては」と人事面の交流を提案した。
■人材の継続的確保を
奈良市内の母子生活支援施設「佐保山荘」(社会福祉法人奈良社会福祉院)は、子どもの不登校、障害認定などで児相と連携、母子の緊急一時保護では県の女性センターとも連携してきた。
宇城順子施設長は、「児相設置は地域内の連携が強まる」と歓迎。一方で「要となるのは人材の継続的な確保。
支援施設の機能を児相内に設けるなどで、現場の経験を積む機会が必要」と指摘した。
■児相にも相談窓口
母子施設は全国で約230、約1万人の母子が暮らすが、半数は定員割れ。
どの施設でも、定員を満たそうと他府県からの受け入れや一時保護を増やしている。
大阪府社協・母子施設部会は今夏、「コロナ禍でニーズは増えているはずなのに、空き部屋がある。
福祉事務所だけでなく、児相などにも相談窓口を広げるべきだ」との緊急要望書を大阪府に提出している。
■制度設計見直しを
国は17年、「新しい社会的養育ビジョン」を示し、「子どもには家庭的養育が望ましい」とした。
ただ、里親制度が十分浸透していないなかで、現場には「施設は絶対に必要」という認識がある。
出産後の養育に支援が必要な「特定妊婦」の受け入れも、母子施設で一時保護も含めて対応するようになったが、夜間対応や医療面で課題は多い。
虐待やいじめが深刻化する中で、措置する側と受け入れ側の役割など、児童福祉の制度設計の根本的な見直しが急務と言えそうだ。
〔2020年10/13(火)福祉新聞〕