外務省・佐藤優の逮捕と国策捜査にみるパラダイムシフト
外務省・佐藤優の逮捕と国策捜査にみるパラダイムシフト
〔2015年6月11日 ブログ「引きこもり居場所だより」〕
時代の転換、パラダイムシフトは特定個人によってはつくられません。
しかし、ある場面でそれを特別に実感する人はいます。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕された外務省主任分析官・佐藤優さんです。
その著作『国家の罠』(佐藤優、新潮文庫、2007)から、主に国策捜査について引用します。
取り調べる西村尚芳(ひさよし)検察官のモノローグにしますが、実際は佐藤優(まさる)被疑者との“尋問”という名の対話です。
「これは国策捜査なんだから。あなたが捕まった理由は簡単。あなたと鈴木宗男をつなげる事件を作るため。
国策捜査は、『時代のけじめ』をつけるために必要なんです。
時代を転換するために、何か象徴的な事件を作りだして、それを断罪するのです。
しかし、法律はもともとある。その適用基準が変わってくるんだ。
特に政治家に対する国策捜査は近年驚くほどハードルが下がっているんだ。一昔前ならば、鈴木さんが貰った数百万円程度なんか問題にしなかった。しかし、特捜の僕たちも驚くほどのスピードで、ハードルが下がっていくんだ。
今や政治家に対しての適用基準の方が一般国民に対してよりも厳しくなっている。時代の変化としか言えない。
実のところ、僕たちは適用基準を決められない。時々の一般国民の基準で適用基準は決めなくてはならない。
僕たちは法律専門家であっても、感覚は一般国民の正義と同じで、その基準で事件に対処しなくてはならない。
外務省の人たちと話していて感じるのは、外務省の人たちの基準が一般国民から乖離しすぎているということだ。
機密費で競走馬を買ったという事件もそうだし、鈴木さんとあなたの関係についても、一般国民の感覚からは大きくズレている。それを断罪するのが僕たちの仕事なんだ。…
国策捜査は冤罪じゃない。これというターゲットを見つけだして、徹底的に揺さぶって、引っかけていくんだ。引っかけていくということは、ないところから作り上げることではない。
何か隙があるんだ。そこに僕たちは釣り糸をうまく引っかけて、引きずりあげていくんだ。(366-369ページ)」
筆者・佐藤優はこの国策捜査を、内政におけるケインズ型公平配分路線からハイエク型傾斜配分路線への転換の時代のけじめをつけたものと分析しました。
小泉内閣が誕生したのは2001年4月。「内政上の変化は、競争原理を強化し、日本経済を活性化し、国力を強化する…この路線転換を完遂するためにはパラダイム転換が必要とされる」、それを大衆的にわかりやすくアピールする機会にこの逮捕劇が使われたのです(374ページ)。
こうして日本における競争至上主義的な新保守主義の時代が本格的に始まりました。
この時期には社会の多くの分野で従来の方法が壊され、新たにつくられたものも多くあります。
国民の下からの創造も多方面で生まれました。そのうち主に教育分野について稿を変えて説明します。