ホルモン剤使用と膵臓がん
ホルモン剤使用と膵臓がん
女性のホルモン剤使用と膵臓がんリスクに関連性
膵臓がんは自覚症状に乏しく、初期の状態で発見することが難しいがんと言われている。
発見が難しいため、国立がんセンターが2014年に発表した最新がん統計によると、死亡数の多さでは第4位(男女計)。
男性が女性に比べて1.5倍発症しやすく、女性ホルモンであるエストロゲンの予防効果があるとされている。
しかし、国立がんセンターなどの研究グループは、日本人女性を対象に女性生殖関連要因と膵臓がんのリスクを検討した結果、ホルモン剤を使用したことがあると膵臓がんリスクが上昇すると
医学誌「European Journal of Cancer Prevention」(2017:Mar 31 オンライン版)に発表した。
ホルモン剤使用でリスクが1.47倍に
膵臓は、胃の裏側あたりに位置する長さ15センチほどの細長い臓器。おたまじゃくしのような形をしている。
膵臓は食物の消化を助ける膵液の産生(外分泌)と、インスリンやグルカゴンなど血糖値の調節に必要なホルモンの産生(内分泌)という2つの役割を担っている。
研究グループは、40~69歳の女性4万5,617人を2011年まで追跡し、女性生殖関連要因と膵がんの発症リスクとの関連を検討した。
平均18.4年の追跡期間中に211人の女性に膵がんが確認された。
その結果、閉経しているかなどの月経状況、初潮を迎えた年齢、閉経年齢、出産回数、初産年齢、初潮~閉経までの期間、授乳の有無ついては、膵がんとの関連は見られなかった。
一方、ホルモン剤使用の有無については、ホルモン剤を使用したことがあるグループでは、使用していないグループに比べて1.47倍となり、膵がん発症リスクとの間に明らかな関係性が見られた。
米国の先行研究では、経口避妊薬を使用した女性は、使用しなかった女性に比べて膵がんリスクが上がるという報告があるものの、複数の研究結果からはホルモン補充療法を伴う子宮摘出術を受けた女性で膵がんリスクの低下が報告されているという。
ホルモン剤でもその種類によって異なる結果が出ている。
今回の研究では、日本人の集団を対象とし、経口避妊薬とホルモン補充療法などを区別していないため、今後は人種の違いやホルモン剤の種類を考慮したさらなる研究が必要だと、研究グループは結論づけている。
〔あなたの健康百科編集部 2017年05月08日〕