サービス産業のなかのサービス業
サービス産業のなかのサービス業
(2024年4月24日)
サービス産業(第三次産業)に関する本を探しましたが、適当な本がありません。
商業をはじめ放送、教育、医療、芸能、スポーツなど、第一次、第二次産業以外は全てサービス産業に含まれます。
数千円する専門書が出版されていますが、それを入手しても利用頻度はごく限られます。
地元の図書館で職員に手伝ってもらいましたが適当なものが見つかりません。
一休みのため閲覧コーナーに座ると、机の横に十数巻になる百科事典があり、これを頼ることにしました。
この図書館では『世界大百科事典』(の11巻,2007年改訂新版;平凡社)と、『ブリタニカ国際大百科事典』(の第7巻,1990年第3刷初版;TBSブリタニカ)の2点です。
「サービス産業」の項目をみると、両事典とも執筆者は岡田康司さんです。
1980年代までの事情を書いたものでしょう。岡田さんは平凡社版とTBSブリタニカ版を一部重なりますが、基本的に書き分けています。
しかし説明内容は「サービス産業」ではなく「サービス業」です。
別項目として「第三次産業」は平凡社版にもTBSブリタニカ版にもなくこれを「サービス産業」項目に当てています。
私のめざすところは「サービス産業」のなかの「サービス業」ですから支障はないのですが、百科事典としては2つの百科事典とも問題があります。
サービス産業の範囲は上に書きましたが、例えば金融・保険・株式、行政・警察・自衛隊、宗教なども経済活動の面から見ればサービス産業に入ります。
賭博・詐欺・窃盗…による収入もこれに入ります。
最後の違法3種はともかくサービス産業はかなり広い分野に及びます。
そういうなかで「サービス産業」における「サービス業」が、この数十年間に広がりました。
岡田さんは「サービス業」が経済活動で増加した理由をこう説明しています。
「【経済に占める比重増加の要因】このように経済に占めるサービス業の比重が増大する要因は、次の諸点である。
第1は、主として対事業所サービス業に関する要因で、生産部門における変化である。
産業発展の初期段階では、知識労働はそれほど大きな比重を占めるものではなく、直接生産工程に多くの労働力を投入する人海戦術をとるが、やがて各種の専用機、NC機械、マシニングセンター、ロボットなどの自動化機械や、コンピューターによる工程管理が導入され、機械が直接労働に代わっていく。
それと同時に生産管理、在庫管理、機械の設計、あるいは製品の開発のための市場調査、企画などの間接部門に知識労働の役割が高まってくる。
こうして知識労働、つまりサービス労働が広がるにつれて、それらの知識労働は専門化し、同時に社会的分業の輪が広がることとなり、直接物の生産にたずさわらない技術サービス、製品企画、販売、企画などの代行業が増え、市場規模を拡大する。
対事業所サービスは、こうして進展していく。
第2は、おもに対個人サービス業に関する要因で、消費の質の変化に対応する。
経済発展とともに、家計における高所得化が進み、飲食費をはじめとする生活における基礎的・必需的支出のウェイトは低下する一方、教育・娯楽費、交際費などの非日常的・選択的支出の比重が高まる。
〈衣食足りて礼節を知る〉の言葉どおり、生活の維持というような基本的欲求が満たされればより高度な生活をしたいと願うのは、人間として当然な消費パターンであろう。
こうして変化する家計消費は、ゆとりを生み、飲食、住居、理美容、クリーニング、保育、老人ホームなどの従来からある対個人サービスに加えて、余暇を生かすためのホビー、スポーツ、学習、家事省力化のための外食、そうざい、宅配、便利屋(よろず引受業)、合理的な生活のためのレンタル、通信販売、不動産や求人の仲介、といった多彩なサービス業務に向かい、対個人サービス業の市場規模を大きくしている」(『世界大百科事典』第11巻p341)。
平凡社版ではこの2点指摘していますが、TBSブリタニカ版では3点目に「公共サービス」として2行だけ書かれています。
「第三は、社会福祉、社会保険といった公共サービスにかかわるもの」としています。
90年代以降今日まで特徴的に増大したのはこの第3の「公共サービス」タイプのサービス業です。
日本社会における従来型家族の変化、少子化、高齢化、就業条件の変化にともなう社会問題の増大・複雑化に対して、とくに自治体が関与せざるを得なくなり「公共サービス」が増えました。
全国の自治体はそれぞれに工夫を始めましたが、すぐに政府がその基準を示さざるを得なくなりました日本社会30年の停滞の付随事項ともいえるのです。
第1点の「対事業所サービス」と第2点の「対個人サービス」は、次の「サービス業」の分類で紹介します。