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もったいない

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もったいない

少し前の新聞に、「もったいない」という言葉が死語になりつつあるという内容の記事が掲載されていました。
それを読んで、我が家で行っていた省エネ対策は、実は「もったいない」から来ていたのかと改めて感じました。
我が家の「もったいない」を他の人にも紹介したいと思います。
我が家では、私が生まれる以前から、父は「もったいない」という理由で「暗くなったら寝るものだ」と言って仕事から帰ると、夕食を食べるなり、七時や八時でも構わず寝てしまい、自分(父)だけでなく、母や私にも「電気をつけてまでせなあかんことか?」と、電気のスイッチを消してしまうのが常でした。
寝る前に明かりをつけて歯を磨いていると、「そんなにしてまで磨かんでもええ」と、電気のスイッチを切っていく父でした。
昼間、友達と遊び、暗くなってから明かりをつけ、学校の勉強をしていると、「そんなもの明るいうちにしろ」と、ずいぶん怒られました。
「明るいうちは友達と遊ぶから」と説明しても、「それなら次の日の朝、勉強しろ」と言うのです。
勉強も、なかなかやりずらかった時期がありました。
また、テレビを見ていると、「だらだら見るな」と、一週間で五時間くらいにテレビを見る時間を制限されました。
学校で「きのうの見た? 良かったね」という友達同士の話題にもついていけず、悲しい思いをした覚えがあります。
しかし、テレビがあまり見れなかったせいでしょうか、私は読書好き、作文好きな人間になりました。
電話についても、父は「五分以上は長電話だ。かけても、かかってきても、用件だけ話したらすぐに切れ」と言い、我が家で三十分以上の電話はした覚えがありません。
長電話をしなかったせいでしょうか、日記や手紙を書くのが好きな人間になりました。
幼いころは、そんな父と何度も衝突しましたが、今は父に感謝しています。
父は今では無理なことはあまり言わなくなって、だいぶ楽になりましたが、考えてみれば、「もったいない」は省エネに大いに役立っていたのだと思います。
とともに、実は、父から他の人の手本になるような、そんな大切なことを教えてもらっていたのではないか、今ではそう感じられるようになりました。
我が家では、今でも、必要のない電気のつけっぱなし、テレビのつけっぱなし、水の出しっぱなしなどは、禁止されているというよりも、しないのが当たり前になっています。
それは、私の体にも染み込んでいて、「もったいない、もったいない」と、電気、水道、紙、食べ物・・・・・・どんなものでも大切にする心になりました。
今の若い人たちは、物質的に豊かか恵まれた環境の中で育ったせいか、「もったいない」ということを知りません。
「もったいない」という言葉を知っている私たちが、ぜいたくが当たり前になっている若い世代の人たちに、「もったいない」の意味を教えていく義務があるのではないかと思います。
〔『公明新聞』1999年5月24日 23歳〕

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