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ひきこもり当事者の居場所の様態について

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ひきこもり当事者の居場所の様態について

江戸川区福祉部長様(2017年4月28日)
事務所探しを先にしていただく連絡をいただきありがとうございます。
具申しようと考えていた複数テーマのうち、事務所に関係する居場所についてまず条件を考えてみました。
事務所イコール居場所になるからです。
ひきこもり当事者の居場所の様態について
ひきこもりの背景はいろいろで、多くの文献や体験談が発表されています。
私が経験して実感していることから話します。
なぜひきこもるのか? 先天的な感受性の豊かさに由来すると私はみています。
特に聴覚と視覚が鋭いです。
一般の人がとらえきれない声や音をとらえ、人の表情のなかにその人の感情を見て取ります。
“皮膚感覚が優れている”と称され、それが繊細な感性、感受性というものです。
キャッチした相手の気持ちを害さないように振る舞おうとします。
人の弱みに付け込むのではなく自制的な感情や行為につながります。
攻撃的な行為や感情の発露におののき、それらの積み重ねの結果、とりわけ思春期のころから対人関係に慎重になり、人を回避し、社会との関係に憶病になります。
先天的の感覚が繊細の人に加えて、いじめを受けた経験、社会的な差別を受けた経験者にも先天的に感覚・感覚のゆたかな人と似たようになります。
幼児期の子どもが持つ危険を本能的に察知する力が働いているかのようです。
発達障害やLGBT(性的少数者)などの一部にも状態が重なる人もいます。
いったん仕事に就いた経験のある人でも、何かのきっかけでひきこもるのは似たような感覚があるか、似たような経験をする・重ねた結果であると思います。
どういう経過を持つにしろ、多くは自己肯定感が低く、人間不信があり、少なからず自分不信もあります。
そういう状態がひきこもりから抜け出す出発点です。
居場所では自分と同じような雰囲気、似たようなにおいを感じる人に出会うことができます。
ある程度の時間をかけて、そこに来る人の経験を浄化し、再起を準備し成長していく場所です。
決まった社会的なルールに従うことを優先するよりも自分のペースを育てることが必要です。
居場所が“ゆるい”のはそういう条件を備えようとする力学が働くからです。
それを軽視して、社会的なルールを優先する、とにかく人の前にひきだす方法が逆効果なのは成長や発達を飛び越えて課題を押し付けるからです。
一層の恐怖や社会からの逃避を促すことになりかねません。
根本的にはひきこもりへの対応の場にはならないと理解しています。
もちろん、ひきこもり状態の人は多様ですから、年齢・男女・性格・体質・家庭環境・社会経験などにより居場所に来る人には社会的なルールの壁を越えやすい人もいます。
反対にさらにいろいろな要素、たとえば個人的にかかりっきりになる状態を求められることもあります。
私は4カ所以上の場で居場所を運営し、いくつかの場にも参加しました。
私の経験を絶対化するつもりはありませんが参考になると思います。
(1)居場所をつづけ、参加者に固定的なメンバーができると自然な人間関係が生まれます。
繰り返す(続ける)ことが大事です。
出かけ先、外出先として安定すると生活リズムをつくるテコになります。
外に出ても行く先がない状態の解決策です。
(2)人間関係には友好的なもの(友達・仲間)と非友好的なもの(苦手な人・排除したい人)があり、これらはときには“派閥的なグループ”になります。
これも自然なことです。
攻撃的なこと・いじめ的なことも生まれますが、それらを通して嫌いであっても人として尊重する必要と方法を体験として学ぶのです。
それは重要な社会的なルールの学習であり、社会生活を身に付ける方法です。
(3)友好的なものには興味・関心の共通性からサークルなどができます。
経験の中ではインラインスケートの4、5名のサークルができたことがあります。
教え役になる人がいてパソコン教室になったこともあります。
リーダー的な人がいないと継続しません。
(4)支援者や世話役的な人は、自然なリーダーが出てこない条件において、可能な方法を考える役割をします。
私には絵心はありませんが、絵画などの創作品の発表会を企画して、創作活動をする人に発表の機会をつくりました。
事務作業として、不登校情報センターの事務的な作業を指示しながら続けています。
これもそれに該当するでしょう。
(5)場所が固定していると、外部からの応援を継続してもらえます。
絹のリメイク教室が今年になって始まりましたが、これはそういう先生役の人が来るようになったのを機会に呼び掛けて始まったことです。
以前の居場所にはカウンセラーになりたい人が来ていました。
居場所のつながりにより相談を受けた人、カウンセリングを受けた人もいます。
「サイコドラマ教室(演劇療法)」を開いて数名が参加して楽しんでいたこともあります。
それらは1つの経験になりました。
(6)話し合いも大事ですが語りつくせぬようにテーマを設定するのは根気のいることで、支援者が力尽きてしまうこともあります。
話し合いができるだけでは運営の壁に突き当たりやすいものです。
参加者が体を動かす要素、何らかの作業などを持ち込むことですが、これらは往々にして参加者の動きの中に表われるので、それを引き出し伸ばすつもりでいることが大事です。
(7)以上を含めていえることは、居場所は相談中心というよりは、(人がいると感じられる場で)引きこもり経験者が自分を取り戻す場であり、徐々に自己表現ができ、コミュニケ―ションの力を蓄え、自分の好きなこと・得意なことを見つけていく場、そういう要素にすることです。
(8)このほかに、定期的に親の会を開くだけの条件(窮屈であっても20名程度が入れるスペース)、こまめに相談ができる場を確保できる利便性も必要条件です。

区の進めようとしているなごみの家、若者きずな塾、ヤングほっとワーク江戸川、くらしごと相談室のどこかが、このような要素を持つようになれるかもしれません。
そのためのソフトパワーをもつ人が現れるのを待つことになりそうでが、そういう動きを許容する施設運営が期待されます。
相談機関としてどこかを紹介する場合は、原則としてその紹介先に一緒に行く、同行活動がいります。
それがないと支援は途切れるか、相談に来た人に相談機関に対するマイナスイメージを与えることで終わります。
不登校情報センターを区の機関の1つとして結びつけて考えたのが「追伸」に書いた、ひきこもり事業に特化したなごみの家やくらしごと相談室の提案です。
現状ではうまくないと理解します。
◎「居場所を兼ねた不登校情報センターの事務所の継続」(現在の居場所の活動内容の紹介)と不登校情報センターの収支表については省略します。

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