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なぜ人材養成バンクをしないのか
〔2010年07月01日〕
Tさんのコメントの文章に沿って、私なりの意見なり、感想なり、下手な言い訳でもしてみようかと考えつつ、コメントを読み返してみました。
コメントは3回に分かれていますが、これという前後関係は見えず、全体を一まとめに見るしかないようです。
言い換えますと、一つのパラグラフごとに何かを答えるのではなく、全体を一まとめに答えるしかないのです。
コメントは結局、創作活動はたいしたことは期待できないから、人材養成バンクを復活したほうがいいとの主旨です。
その間にTさんの体験と感覚に基づく私のやり方や性格などへの非難めいたことが混じりますが、それにあれこれ答える意味があるとは思えません。
人材養成バンク――はじめてその言葉を聞く人には説明を要します。
引きこもり経験者の特技や希望を聞いて登録し、「受け入れてもいい」という事業所に紹介し,“養成”を含めた就業をお願いする方法です。
人材バンクと違うのは即戦力を求めるのではないことです。
これはなぜ上手くいかないのか。理由は明確であり、しかも複数あります。
(1)「受け入れてもいい」という事業者のほとんどが、引きこもりをわかっていないのです。
しかし、そこまで事態が進んだ就業者はいません。
(2)わかっていないと言いつつ「受け入れてもいい」という事業者はともかく、職場の先輩・同僚となるべき人との関係がどうしようもないのす。
事業者は職場から外出することが多く、残った先輩・同僚とは何の関係もできません。
お互いに困ってしまうのです。
(3)引きこもり経験者とはいえ、一般人と最低限の接触できる安定性が必要なのに、自分を守るのに精一杯になりやすく、萎縮、会話困難、自分の居場所確保等が先行します。
これが同僚となるべき人との関係ができない理由にもなります。
(4)これらの職場に入った人よりも、事業所に行く直前のドタキャン、通常の人でも大変と思える通勤条件を出し、この仕組みに入る以前の状況も見えました。
(5)そして登録した6割以上の人は「自分に合う仕事はありません」「精神的にはまだ働けません」…の状態でした。
(6)私の関わった例ではありませんが、農業をしながら引きこもりの支援をしている人が「仕事が遅いというレベル以外に、判断が悪くてせっかくの作物をだめにする。
生産という点ではマイナスになることも予測しなくてはいけない」と話していました。
これも含めてどこから始めるのかを考えなくてはならないのです。
(7)“成功例”に入るのはパソコン教室に誘い、数日間で初歩的な技術を身に付けたところです。
10人以上が終了し、1人がその事業所でしばらく助手的な手伝いに参加しました。
これでも成功の部類ですが、しかしそれは人材養成バンクの基本的な姿とはいえません。
就業に進むのではなく、不十分ながら技術取得という点で成果があったのです。
私が、人材養成バンクを思い付きながら、1年程で手を引いたのはこのような事態を経験したからです。
私にはいい経験でしたし、事態を教えてもらった機会ですが、続けることは考えられないものでした。
それ以上に優先すべきことがはっきりとしました。
対人関係をつくるなかで、不安感・自己否定感覚を低くしていくこと、安定感・自己肯定感を高めていくことです。
後にその過程はまた、人間不信を低くすること、子ども時代や乳幼児期の未達成の課題を埋め合わせること、先天的要素(体質・気質)も関係しているとわかるのですが、
ともかくまずは対人関係をつくるのがスタートになると確信したのです。
少なくとも私の経験では「人材養成バンクは上手くいかない、対人関係づくりを優先しなくてはならない」との結論を出すしかないのです。
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