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居場所に通う交通費を考える

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居場所に通う交通費を考える=粗案提示

『ひきこもり居場所だより』(2019年3月号掲載)

ひきこもりに対する支援が続いています。そこに別の視点からの支援方法として交通費を考えてみました。
就労によるひきこもりの自立と別に交通費という視点です。
ひきこもり支援は相談の次が就労になることが多く、当事者にとっては必ずしも実情に合っていないこともあります。
そこを考え直すことにつながればいいのですが…。
ひきこもりから社会参加の途中に、相談機関に行く、居場所に通うなどの時期があります。
ところがそのための交通費がなく、行動のネックになることがあります。
生活保護を受けている人などの支援施設では月末になると参加者が激減すると言われています。
交通費だけではなく食費を含む生活費全体が関係するのですから交通費だけのせいにはできません。
それでも、ひきこもり等の居場所(当事者の集まる集会)でも場所が変わると、行けない・来ない人は確実にいて、背景理由の1つに交通費が関係することも知られています。
他方では、不登校情報センターの例でもずいぶん遠くから歩いてくる人がいました。
1時間や2時間歩くのはさほど珍しくはありません。
電車に乗る駅を1駅、2駅先にしてその間を歩き、交通費を節約します。しかしそれ以上になると行けないのです。
自転車利用もこれに近い状況があります。
これも交通費に関係することです。いろんな居場所で発生しています。
「ひきこもり支援の交通費援助」として、交通費の援助に関係するいくつかの事情を書いてみます。

東京シューレ関係の方から教えてもらいました。
中学生でシューレ関係のフリースクールに来る人は学割の通学定期券を発行してもらえます。
これは中学校に在籍していることを前提としたもので、フリースクールへの通所は「実習活動」です。
しかし高校中退や18歳以上で通所する人には所属する学校がなく、学割の通学定期券を入手できません。
そこは1つのネックになっています。
学校所属がない場合の学割に相当する定期券は考えられないのでしょうか。

東京都の場合、シルバーパスという制度があります。
70歳以上であれば収入に応じて1年間有効で低額のバス利用券が発行されます。
生活保護を含む非課税所得者の負担は年額1000円です。所得が125万円以上だと20510円(年間)になります。
これは東京都の施策であり、たぶん高齢者の行動を促進し健康や社会生活を活性化させるねらいでしょう(私の推測です)。
シルバーパスは東京都内の民営バスを含む全ての路線バス、都営の地下鉄・都電などを利用できます。
条件は70歳以上で、所属は東京都民ということでしょう。実質的に学割定期券よりも低額です。
バス利用の年齢特典では、子どもにもあります。
1歳未満は無料、小学生入学前も大人が一緒だと無料、小学生以下は半額…などが決められています。
バスに限らず電車も同じはずです。
年齢による交通機関利用援助の特徴は、区間の制約がないことです。
東京都のシルバーパスは都内という制限がありますが、どの駅からどの駅まで、どのバス停からどのバス停までという区間の制限がありません。
これも注目すべき点です。
しかし、これは東京都などの公的な財政援助がなく、交通機関が独自に実施しているのかもしれません。
調べてみる必要があります。
この他にも交通費の援助には、障害者手帳の取得者が割引料金です。
障害者がいろいろな社会施設に参加するときの支援策の1つです。
東京都の生活保護受給者は東京都の運営する交通機関全部に有効な制度があります。
詳細についてはよくわかりません。
これらの方法を広げる形で、交通費援助によるひきこもりの社会参加の促進に役立つ制度ができるのではないかを考えました。
この交通費の基本的な性格は、行政による“ひきこもり支援策”です。
では誰に「ひきこもり支援の交通費援助」をするのか、どこがそれを決めるのか、これが明確でないと実行できません。
通学定期券は学校が通学証明を発行し、交通機関が学割定期券を発行します。
通勤定期券は勤務先の事業所が通勤証明を発行し、交通機関が通勤定期券を発行します。
ひきこもりが居場所等に通う証明は居場所が発行するのでしょうか。
その居場所は自主申告すれば「居場所に通所している証明書」を出せるのでしょうか。
月1回の居場所開催の主催者にそのような役割を認められるのでしょうか。
自治体等が認定した居場所にすべきでしょうか。その認定基準は何でしょうか。
これらを明確にしないと制度として不公平になり信頼されませんし、安定的に定着しないでしょう。
そこで考えた粗案です。想像し検討してみてください。

東京都「ひきこもり支援の交通費援助」制度の粗案提示
(1)東京都は「ひきこもり支援の交通費援助」制度をつくります。
都内の交通機関(シルバーパスを使えるか同等以上の交通機関を利用できる)が、低額で(年間1万円以下)、1年単位で利用できる制度です。
(2)東京都と市区町村関係部門の“ひきこもり”対応セクションを「自治体の相談窓口等」とします。
生活困窮者相談窓口、福祉事務所、社会福祉協議会、(民生委員)、就労支援相談窓口などが該当します。
ひきこもり及びそれに準じる相談に行ったとき、希望者を「当事者」に登録します。
当事者には相談窓口に行くたびに、「利用持ち点」をカウントされます。ポイントカードの要領です。
(3)「自治体の相談窓口等」は、対人関係づくり・居場所・技術就業訓練など相談以外の場として、「ひきこもり等の対応支援団体」を紹介します。
*そのためには「自治体の相談窓口等」と「ひきこもり等の対応支援団体」は、情報交流と紹介確約をします。
両者は当事者を加えて協力関係を結ぶことになります。
これがひきこもり支援を実質化する内容です。
「ひきこもり等の対応支援団体」は、ひきこもりの居場所・フリースペース、社会参加・技術訓練団体、相談会・集会の主催者などです。
当事者の行動様式からして同一自治体内に限定しないで協力関係を結ぶのが実情に合っています。
(4)「ひきこもり等の対応支援団体」側は、紹介された「当事者」が参加したとき、「利用持ち点」を与え記録します。
当事者は「利用持ち点」を重ねれば「ひきこもり支援の交通券」を受給する条件になります。
「ひきこもり等の対応支援団体」の多くは毎日開かれていません。
紹介を受けた当事者は通常は複数の「ひきこもり等の対応支援団体」に参加し、スキャン方式で「利用持ち点」を増やします。
(5)当事者の「利用持ち点」が一定点数になれば、「ひきこもり支援の交通費援助」対象者の承認を受けます。
承認を受けた人はその時点から年間利用の「ひきこもり支援の交通券」を購入できます。
交通券の購入後も「ひきこもり等の対応支援団体」への参加は「利用持ち点」を得られるようにします。
(6)全国的に実施するには国の制度が必要です。
市区町村から取り組む制度をつくることも可能かもしれません。

私の考えるこの「ひきこもり支援の交通費援助」は、制度として詰めていくべき点が多く 粗案レベルです。
ひきこもりの人が動く動機づけになり、行政とひきこもり支援団体の協力関係を促進する要素もあります。
ひきこもり支援策を有効に働くようにする方策を交通費から考えるものとして、関係者への提案です。
当事者、関係者のご意見をお待ちします。

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