何とかシドニーに留学させたロック指向のC君
何とかシドニーに留学させたロック指向のC君
(体験談3)当事者の状況
不登校気味の高校生男子のC 君、17歳。
週に2、3回は学校に行き友達関係は問題なし。
母親がC 君に対し過剰反応をする。
やむなく父親が来所相談、特に地元の素行不良の子たちと関わる事を心配していた。
母親がC 君とまともに向き合う事が出来ず、彼の行動1つ1つマイナス思考に考えてしまう。
アプローチの経過(1)
相談来所後、直ちに本人に会いに行き、阿相の高校時代(暴走族時代)の話をする。
その際、暴走族時代のアルバムを持参。
訪問初日から阿相に興味を持たせる事に成功。
2回目は2人で外食をすることを約束。
その後何度がC 君に会い、さらに彼の友人にも会い、彼の性格、趣味、将来の目標を掌握。
彼の性格は、明るく、思いやりがあり、いたって普通の男子。
趣味は音楽、特にロックバンド。将来の目標はロックバンドを結成。
いわゆるミュージシャンになること。
両親、特に母親本人と向き合う事が出来ないのと、このまま出席日数不足のため退学になる事を恐れ、1日も早く海外留学に行かせるよう阿相に依頼する。
この時点ではC君は全く海外留学には興味なし。
あくまでも友人とロックバンド結成が夢。
国内でのカウンセリング期間:13か月。
アプローチの経過(2)
C 君が学校に行かず、放課後同級生が彼を訪問。
部屋に閉じこもりギターを弾いたりしていると、すぐさま母親から電話連絡があり、「不良仲間が集まっているから早く家に来て欲しい」と依頼される。
さらに普通のバイクなのにC君の友人が訪問すると、母親は「地元の暴走族の連中が自宅でたむろしている」と過剰反応する。
C 君は自分の言動に母親がどのように反応するか分かっていて楽しんでいる様子。
とにかく1日も早く留学させて欲しいという両親からのプレッシャーの中、C君のバンド仲間で親友のB君に接触する事を考え、B君からC君に留学を勧めてもらうことを計画。
同時に母親のケアが重要と考えD カウンセラーに母親のケアを要請。
その後、C 君の仲間が集まる度にDカウンセラーを自宅へ派遣。
いつのまにか泊まるようになる。
阿相はなるべくC君とB君の3人で外で会い、留学を勧めた。
なかなかC君がその気にならないため、既に海外の高校を卒業し、日本へ帰国した元暴走族23歳のE君に依頼し、C君に会ってもらう事にした。
C 君はE 君の生き様に共感し、とりあえず短期で(5日間)行ってみようという気持ちに傾く。
一方、母親は相変わらず、C君を信じる事が出来ず全て考えがネガティブ。
このケースは母親のカウンセリングを行っているようになってしまった。
ひとまず阿相と2人でシドニーに5日間という短期間ながら行くことに成功。
現地に着くなり、滞在先のホテルに24歳の留学生、F君(C君が好きなタイプ)を呼び、この短期間にC 君が留学を決意出来るようにC君のケアを依頼。
予想通り、C君はF君が気に入り、帰国後、シドニーに戻るとF君に伝えたらしい。
阿相は半信半疑。
6月に帰国後、予想通り一筋縄ではいかなかった。
12 月にバンド仲間とライブを開くのでそれが終わらないと留学ができないと言い出した。
C君の気持ちは重々理解できたが母親を説得するのが大変だった。
母親はもう直ぐにでもビザを取得し留学して欲しいという気持ちだった。
非常に大きいプレッシャーを阿相は母親から受ける。
C君の気持ちが変わらないように行なった事は、親友B君との接触、そしてシドニーに滞在のF君にC君へ早くシドニーに来るように促すよう国際電話をしてもらうように依頼をした。
C君が日本にいて母親がいちばん懸念したことは地元の素行不良の仲間に巻き込まれること。
そして音楽にはまり留学を断念することだった。
結局ライブを開くまでの間、他のカウンセラーは母親のケアに、また阿相はC君に付きっきりの状態になってしまった。
その間大きな問題と言えばC 君の友人がある不良グループに殴られ、仕返しをしたいので阿相の知人のやくざ(?)を紹介して欲しいとC君から電話連絡があったこと。
もちろん紹介などしなかったが母親が過剰反応してしまった。
結局、双方の話し合いで事は収まった。
とにかく12 月までは母親のケアと同時に彼を無事留学させえることに専念。
ライブ(阿相も見学に行った)も無事終わり、いよいよ出発日(12月30日)が近づく。
出発前日、C君が逃げないようカウンセラーを自宅に泊まらせ、当日は阿相が車で迎えに行った。
彼をピックアップすることが出来たが家で一悶着があった(最後に母親に対していちゃもんをつけた)。
成田空港では、阿相とC君2人で出国手続きを行っている際、カウンターの影で両親が本人に声もかけることなく見守っていた事が印象に残った。
シドニー空港に着くと今度はいかにC 君を現地に残し、阿相だけが帰国する事が課題だった(出発直前必ず本人と一緒に帰国しないように両親からきつく念押しされた)。
C君が好きなF君に会って問題なく現地に残す事に成功。
帰国後さっそく両親に会って状況を報告。
2人のほっとした表情を阿相は一生忘れないだろうと思った。
無事に学校に入学し、4年間の留学生活も問題無くクリアし、日本の某大学に進学。
親との関係も良好。
いまは教職の資格を取るため奮闘中。
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