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Center:2006年5月ーひきこもりからの自立の生活保護

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ひきこもりからの自立と生活保護

〔『ひきコミ』第32号=2006年5月号に掲載〕

前回「生活保護申請に立ち合う」の報告を載せました。
ひきこもりの人の「状態によっては」生活保護は生活のための残された拠り所にする必要があるからです。
実際、報告の例は、もしそれがなければ対応が困難なことでした。
生活保護によって基本的な条件が解決したわけではありません。
その地点に身をおいて基本的な条件の改善に向かう1つの前提ができたのです。
ひきこもりの人にとって、社会に生きる基本が生活保護によると考えているわけではありません。
生活保護以外の社会の受け入れの向上、さまざまの社会福祉制度の充実も必要です。

しかしさらに、自立に向かう多様な方策が求められるのです。
何よりも、ひきこもり当事者の意志・意欲が尊重され、それらが促進され、そのうえで意思決定による社会参加、自活と自立への道が最も中心的な道になります。

意志・意欲を軽視され続け、感情・感覚を抑制され続けたことが、ひきこもりの遠い背景です。
それでいて重力のようにあらゆる場面でひきこもりに作用している根本的な原因のように思います。
そうであるからこそ、彼(女)らは意思表示にとまどい、意見発表を遠慮し、気持ちを体で表すことが困難なのです。

そういう人たちの意志・感情・思いを尊重することは、それらの前提になっている人間としてのか弱さを乗り越え、いわば成長と発達的過程をすすめるように対応しなくてはなりません。
感情抑制を緩和し安らげる条件をつくる、対人関係づくりによる成長の機会を広げる、体験的な自己発展できる過程の充実、生活手段を身につける社会的な場の用意・・・などが、これらの過程には必要です。

そういう周囲の条件とそれを身につけるのに必要な時間を経てはじめて、彼(女)らの自立を迎える準備ができたことになるのです。
社会は、彼(女)らに求めることの前に、彼(女)らから求められることにこたえてなくてははならないのです。
子どもや若者が自立できる条件が社会全体で弱まっているというのは、このことと同じです。

そういう求められている社会環境づくりは、たぶん社会改造計画と考えられるものと同じです。
それはだれか1人にできることではありません(たとえ国の最高権力者であっても)。
どこかの有力団体や機関だけで推進できることではありません。
そういう社会全体のことです。

すでに多くの人、多くの団体・機関がそれぞれに気付き動き始めています。
しかし効率主義やグローバル・スタンダードの流れに対してはささやかなものです。
ただ少なくともこの10年のなかで、静かに、確かに生まれ、息づき、成長してきていると思います。

ひきこもり当事者の自立はこのような社会的背景から見なくてはなりません。
私は社会全体についてはこれ以上は、言及できません。
多くの個人や団体・機関の取り組みについても具体的に述べることはできません。

私が言えることは、私が活動の足場にしている不登校情報センターについてだけです。
「生活保護申請に立ち向かう」というのはその実例の1つです。
それは独立した1つの事例ではありません。
この直接の人に限らず他の人にも参考になる実例でしょう。

この事例には1つの固定的な要素しかないわけではありません。
「生活保護法」という制度をとってみても、発展や広がりを読みとることができます。
社会福祉全体もまた同じです。

ひきこもり当事者の自立に必要となり、不登校情報センターが関わっているこのほかの事情――たとえば対人関係づくり、社会へのつながり方、支援のしかた――などなどに関しては、それぞれのところで記述しています。

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