Center:2006年1月ー引きこもり経験者の仕事おこしに向かって
引きこもり経験者の仕事おこしに向かって
―労金助成(2003年春)以降の取り組み状況―
〔まえがき〕
12月19日「中央ろうきん助成プログラム―完了報告会」が開かれました。
この席で2002年度に「『印刷室・版下制作部』の設立」で助成を受けた不登校情報センターは「助成後の活動報告」を行いました。
以下はその発表の準備草稿にいくぶん加筆修正したものです。
(1)
不登校情報センターは設立して10年ですが、先月NPO法人になったばかりです。
9年前から、不登校経験者などの当事者グループの会を始め、5年前からは毎日集るようになりました。
その中で、「ここを仕事を出来るような場にしてください」という人たちがおり、2002年10月に「あゆみ仕事企画」(当初はクラブといっていましたが、わずらわしさを避けるため「企画」でそろえます)という収入になる取り組みをするグループが出来ました。
2002年の12月にある企業からデジタル印刷機の寄贈を受け、それを生かすために中央労金の助成金を申請し、2003年春に助成を受けることができました。
そのときか ら2年8か月が過ぎました。
当初の目的の印刷室を成り立たせるという点では成功していません。
その最大の理由は、印刷物の受注がなかったことです。
受注に 必要な営業面、受注に応ずるだけの技術力や本格的は印刷所との協力、管理体制などが不十分であったことによります。
いやもともと仕事おこしとはそう簡単な ことではないのですから、そう落胆しているわけでもありません。
しかしこの取り組みのなかで、蓄積してきたものもあります。
まず、パソコンと付属品やソフトがいくつかそろいました。
2003年の6月ごろはパソコン同好会ができました。
画像加工が中心でしたが、いろいろな面でパソコン利用者が増えました。
ここにいる人が中心になって、版下づくり、文書作成という印刷の前提になる周辺作業ができ、だんだん定着するようになりました。
版下制作ではある程度の形ができたことになります(印刷はある一か所から断続的に入っています)。
2003年は、印刷関係というよりも「あゆみ仕事企画」というグループの取り組みが、徐々に定着し始めてきた時期です。
印刷作業もその一端を占めていたと評価できます(「あゆみ仕事企画の取り組みの実績」表を見て下さい)。
2004 年に以前からの協力団体から不登校情報センターのホームページを充実させてほしいという要望がありました。
それまでの不登校情報センターのホームページは当事者に任せて作ってもらっていました。
――それもそれまでの6~7年間で主に3人ぐらいがバトンタッチをし、しかも前に担当した人が作ったホームページ とは無関係に自分なりのしかたで新しく作ったものです。
この団体からの提起を受けて、不登校情報センターの名称にふさわしく、しかも不登校情報センター自体の活動内容をも表わすものをつくろうと考えました。
そして「あゆみ仕事企画」の力で制作し、運営できるようになりました。
これは2003年にこのグループの活動がある程度定着していたことが支えになっています。
「あゆみ仕事企画」のこの経過のなかで大きな位置を占めていたのが、『不登校・中退生のためのスクールガイド』という本の発行です。
不登校情報センターの編集で、東京学参が発行しているものです。
この編集のために集めた情報を、文書入力し、出版社に渡しました。
この文書入力したものをホームページにも掲載する、それが情報センターらしいホームページになるという考え方です。
いま現在の不登校情報センターのホームページは、2004年当時とはだいぶ変わりましたが、構成の基本は同じです。
この基本形ができた2004年11月からアクセス数のカウント表示をしてきます。
12月15日現在で累計 31,000件です。
当初は1日65件ぐらいできたが、最近は倍化して120~130件です。
このホームページのなかの「不登校・引きこもり等団体の検索サイト」こそ不登校情報センターらしいので、制作を急ごうとしたのですが、なかなか進みません。
制作の中心人物が体調をくずして来られなくなり、技術レベルがおいつかないなかで停滞していました。
2005年に入り『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』という本を子どもの未来社から発行することになりました(この2冊は対象の情報収集先がずれているので内容は重複しない)。
後者の本を編集するために入手した情報を生かす形で、この情報検索ページの制作を別の形で推し進めることにしました。
いくつかの経過をたどって、現在のトップページの姿になりました。
その完成見込みは次のように構成されます。
(1)各種の催し物案内(イベント情報カレンダー)、
(2)出版物案内(本)、
(3)対応支援団体(多チャンネル)、
(4)カウンセラー等支援者養成機関、
(5)人物です。
これら全体を「不登校・引きこもりに関係する」総合的な検索サイトにします。
このホームページの特色は
(1)不登校・引きこもりという社会問題に対応支援している状況を全体的に情報提供する社会的価値の高い公益的な内容であり、
(2)この制作者グループは引きこもり経験者であり、彼(女)らの社会参加の方法であり、いずれそれによって生活に必要な収入が得られ、経済的に自活していく道を開く、仕事おこしの内容をもっています。
(2)
このホームページ づくりを促進するために、2005年9月に「検索サイト制作グループ会議」を開きました。
いま現在10人余りが加わっています。
9月にこのグループがうまれたのにはそれなりの事情があります。
あゆみ仕事企画設立以来の事情は話しましたが、2005年の後半から大きな変化がつづいています。
一つは、不登校情報センターができて10年になったところで、NPO法人にしようと考えたことです。
何のために NPOにするのかを私なりに考えました。
いちばん大きな背景は、引きこもり経験者が自活できる形で社会の一員として生きていける道を、私の関与できる形で実現することです。
対人関係の力を養ってあとは就職の形で仕事に就けばそれでいいのではないか、と考える人が多いと思 います。
そういう形で社会に入る引きこもり経験者がいることは確かですが、そうならない人もいます。
年齢が高くなるに従って、そういう人の割合は多くなります。
その人たちのための方式を一つ確立したいことです。
より直接的な条件の変化は、事務所をマンションの一室に移転せざるをえなくなったことです。
教室型の4つのスペースと事務室等があった広いスペースからの移転です。
狭いスペースのなかに、これまで積み重ねてきたものを圧縮して収める必要に迫られました。
その一つのものが引きこもり経験者のフリースペースをワークスペースに転換することです。
新しい事務所で、引きこもり経験者が継続的に収入を得られる場をどのようにつくっていくのか。
これがこのタイミングでホームページの検索サイトづくりに具体化したのです。
9月に始まった「検索サイト制作グループ会議」でいろんなことの検討を重ね、作業を分担し、すすめています。
ホームページづくりの技術的なことは私にはわかりませんから、省略します。
この作業に対して、いわば労賃を支払わなくてはなりません。
それが彼(女)らにとっての「収入になる取り組み」の実現だからです。
ところで、この支払うためには収入がなくてはなりません。
どこから、だれが支払ってくれるのでしょうか。
この点の根本的な方策はまだないのです。
10月27日の「検索グループの会議(打ち合わせ)」のために、私が提示した「収入配分の基準(一次案)」をそっくりお見せいたします。
検索サイト制作の収入配分の基準(一次案)
複雑な要素をどう取り扱うのか苦慮するところです。
「多少不公平があってもそれなりに納得出来る範囲であること」をめざし作定する第一次案を提示します。
この基準は「検索サイト」に限定して適応します。
(1)配分額は次の4つの要素を合計した金額とします。
①作業時間(時間単価100円)作業時間とは業務作業時間、打ち合わせ時間、会議を含む。
②生産高(B5版またはA4版1面制作が基準)文書作成(入力)400円、画面制作・企画提出500~1000円、
③通常管理費(月額3,000~5,000円)パソコンの条件設定、保守、ウィルス対策など。
④交通費(要した通常の交通費の30%程度)。
(2)記録と支払い
①上記の作業実績は、各人が所定用紙に記録し、提出します。
②所定の記録用紙に基づき、それを月単位で支払います。
(3)未払いの可能性への対処
「検索サイト」制作では作業の必要はあってもその作業による収入の見込めない項目も少なくありません。
最大限支払うように努力しながら支払えない分は「未払い分」として記録し、サイト全体が収入源となる近い将来、清算します。
(4)収入配分の個別事項に関しては異議申立書(所定)で記録し、適時審査します。
はっ きり言って労賃としてはとても安いです。
労働金庫という労働組合の設立する機関からは容認できるレベルではないことは承知しています。
「あゆみ仕事企画」というのは、学費ゼロの「仕事養成学校」であり、その作業に対して少しは作業費が支払われている、という理解をしていただいた方がいいでしょう。
しかし問題はほかにもまだあります。
「未払いの可能性の対処」という項目です。
先ほどの「あゆみ仕事企画の取り組み実績」の表を見てください。
先月この「検索サイト」としての支払いを初めて行ないました。
支払い総額約9万円のうち3.3万円は未払いです。
この未払額 はNPO法人として「検索サイト」の制作にかかわった会員にたいする債務の形をとっています。
この「検索サイト」により収入が得られるようになったとき、 返済する予定です。
収益を上げられるようにするための準備期間は1年です。
収入項目にはどんなものがあるかを紹介しておきます。
(1)支援団体・機関のホームページとの相互リンク(12月19日現在有料リンク先27団体)
(2)支援団体・機関の案内書配布支援。
(3)催し物案内を掲載する団体・機関の登録費(まだ発議の段階)。
(4)出版物購入に際してのアフィリエイト。
(5)バナー広告の検討(主に「イベント情報カレンダー」サイト)。
このほかの収入項目も検討しています。
しかし、親・家族の会など非事業系や個人ホームページ開設者に費用負担をしていただくことはできません。
収入項目の枠組のなかで、作業料に見合う収入と収入項目を増やしていく予定です。