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居場所における作業経験

提供: 不登校ウィキ・WikiFutoko | 不登校情報センター
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居場所における作業経験

―心身の安定状態を身に着ける
会報『ひきこもり周辺たより』(2024年10月1日号)
人間が筋道を立ててモノゴトを考えるには、安定した精神状態であることが必要です。心身が不安定ななかでは、対人関係にしても考えをすすめるにしても動揺的で崩れてしまいます。
それが難しい課題であり、どう関わる必要があったのかその説明をします。
印象に残ることから話しましょう。不登校情報センターは大塚時代の2000年ごろから協力関係のあるサポート校や大検予備校などの学校案内パンフを預かり、配布していました。
やがてそのパンフを『ひきコミ』読者や相談者たち(住所別名簿にし、1.2万人を超える)にDMで発送しました。年に数回です。
この企画には数校から十校以上が参加し、スクール別に送付地域を指定してもらい、1通100円から150円ぐらいの送付料をもらいました。
同封するパンフは地域毎(市区町村)に違う組み合わせです。送付件数は2000通から7000通になり、これを「発送作業」として通所者の有志が分担しました。
作業参加者は多いときで十人以上、20人近いときも数人のときもありました。
作業は数日から1週間以上、朝10時から午後5時ごろまでで、参加時間は人により異なります。
参加者は参加時間を記録し、その時間数より作業費を受けとります。
印象に残るのはこの作業です。黙々と陰日向なく続けます。適当に休み時間を挟みますが、休もうとしない人が多いのです。
作業範囲を一人ひとり区別しないとうまくいきません。その場で即座に対応を協同で進めるのは苦手です。
2日目になると10時からの参加者が減り、11時とか午後からの参加者が多くなります。
3日目になるとさらに遅くなる人が増えます。しかし作業は一生懸命に、多くは黙々と続けます。
この2日目以降に「朝10時に来られない」人が増えたのが予想以上でした。
個別の事情がありますが、多くは起きられない、疲れがとれないのです。
このような仕事ぶりはDM発送作業だけではありません。パソコンによるホームページ制作作業でも、広告情報誌『ぱど』の地域配布ポスティングでもみられました。
真面目に取り組みますが、連続した日数の作業参加者は目につくほど減少します。もちろん個人差はありますが、大きな傾向といえます。
もう1つ注目すべきことは、報告記録の正直さです。正直に申告という以上です。
5分間休んだとか、このときは集中できていなかったから…といって過少に記録しがちです。「ズルをする」という発想がないのです。
「作業費の支払いになる」と聞いて記載しない人も出ます。自分はここに訓練(修業)に来ているのであって作業費などもらうつもりはない、というのです。
私には驚きでしたし学びでもありました。何という人たちでしょうか! まるで小学生の正直さに似ています。
それが20代になって続いているのです。いや小学生の正直さだけでこの状態を表現するのは適切ではないでしょう。
それは社会性の想定できない形での不足かもしれません。
しかしそこには別の面もあります。
人によっては自分は精一杯やっているのにあの人はそうではない…近くで作業をしている人の集中のなさが気になってしょうがないのです。
あの人はそれを無視して時間いっぱい記録しているのではないかという疑心を持つこともありました。
『ひきこもり国語辞典』を発行したとき、<まえがき>部分でこういうひきこもり経験者の特色をごく簡略にこう書きました。
「人並み以上の感性と人並みに近い社会性を持つ」人としたのですが、意味するところが簡単には伝わらないのはやむをえません。
生身の人間は定規やコンパスで描くような姿で生きているわけではありません。そういう柔軟な見方ができるのも社会性の重要な内容です。
そこに深い課題が見えてくるのでした。
私はこういう作業を通して表われる彼ら彼女らを深いところで信頼し、真の味方になろうとひきづられた事情でもあります。
アルバイトなど仕事に就いた人は、二日後に仕事があると二日前から緊張や不安がでるといいます。
明日は仕事日となると、夕方早く帰宅して備えるという人もいます。
このような心身の不調・不安はどこからくるのか。外科的にはもちろん内科的にも異常はありません。
心療内科的な大腸症状などの人はいますので、私には精神的・心理的な要因によるとしかいいようがありません。
私の知る範囲では、このような状態を精神科医でも(診断はともかく)うまく表現しているのを見たことはありません。
ひきこもりの経験者、とくに20代の若い人には(あるいはほとんど外出せずに自宅から出ない人も)、そのような人が多いのではないかという思いがあります。
私に関われるのは、それらに社会的な面からアプローチすることが残されている——そう信じています。
彼ら彼女らの繊細な感性とひきこもり状態の心身状態を起点に対人関係のつみ重ね、社会的経験の不足を補足する居場所にする。そういう見方で不登校情報センターの居場所をふり返ってみると、ある程度は納得できるというものです。
社会の一員として生きていく力——そうなってこそ何かの技術・知識は生きます。相談先があれば足を運んで相談に行けます。知識や解決策を探し、それに向かう行動エネルギーが出てきます。
逆に言えば技術・知識を身につける過程で指導員や同僚との関係をつくる道もあります。それらは一人ひとり、それぞれの仕方で身につけていきます。
それは学校や教室で、職業訓練の場やサポートステーションで、スポーツクラブにおいてもでも同じでしょう。
取り組みに平行して、施設や場所がそのような性格をもたざるを得ないのです。
これらが居場所の役割という面から考えられる、自立に向かう動きの前の「難しい問題」の内容です。
不登校情報センターという居場所おいて、統一的なプログラムを持たなかったことはいろいろな状件によりますが、それ以上に先行して積み重ねるテーマがあると考えたのはこの部分です。
                            

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