社会福祉サービスが経済成長の重要な要素
社会福祉サービスが経済成長の重要な要素
〔2024年5月--〕
『世界大百科事典』と『ブリタニカ国際大百科事典』の2種の大百科事典の「サービス産業」の説明を岡田康司さんが執筆している件は既に書きました。
ここでは岡田さんが説明しているもう1つの重要な内容を追加しておきます。
社会の経済成長においては、直接生産的な第一次産業(農林漁業)や第二次産業(製造業・建設業)よりも、第三次産業(サービス産業)の成長が——雇用(従業員数)でも所得でも大きな比重を占めることになります。
これは「ペティ=クラークの法則」として定式化されています。
高度経済成長の終わりにあたる1970年代の初めに、日本はサービス産業のGDP内の割合が50%を超えました。
私の理解ではこれが日本が高度な経済社会に到達した重要な指標です。
岡田さんは、サービス業の比重が増大する要因と、サービス業の分類を2つの大辞典で簡潔に説明しました。
これに加えて、「サービス産業」の内訳においては新旧交代、新陳代謝が進んでおり、その原因や状況の説明があります。
平凡社版『世界大百科事典』では次のように説明しています。
「このようなサービス産業の新旧交代、新陳代謝は、あらゆる業種で、しかもつねに進んでいる。
その変化を促す最大の力は、産業化、企業化、あるいは近代化と呼ばれる現象である。
サービス業は一般に、生業的・家業的な経営にとどまっていることが多いが、売上高はもちろん、資本金、従業員等が巨大化している。
それをもたらすものは、
①店舗のチェーン化、
②製造と販売の分離、
③サービスの標準化、
④従業員の教育訓練システムの確立、
⑤マネジメント・システムの確立、
⑥客層の的の絞込み、⑦他産業で開発された革新的科学技術の導入、といった方策である。
いずれも、コストダウンを実現し、従来と同一水準のサービスによっても低価格を可能とするため、売上げの飛躍的な拡大をもたらすことができる。
サービス業は、このように新旧交代を繰り返しながら、全体として規模を拡大してきたが、注目すべき点はその成長スピードは決して高くはなく、きわめて緩慢であったということである。
特定の業種が急激に伸びたり、特定の企業が急速に業容を拡大することはあっても、全体としては意外に高くない伸びであったということである。
今後も、所得水準の上昇、余暇の増大といった個人消費の変化に対応する対個人サービス業と、省力化、専門化といった企業経営における要請にこたえる対事業所サービス業とは、ともに新旧交代を繰り返しながら徐々に成長し、変貌を遂げていくとみられる」(第11巻,p341)
前半では、「産業化、企業化、近代化」が示されています。
個人事業的(家業)なものから組織的な企業体になっていく要素が示されており、私たちその外側にいる人間にも一部ですが垣間見ることができます。
後半ではその成長のしかたが「決して高くはない」としています。
外から見る私たちにはいろんな分野で変化をしているので目まぐるしいほどですが、少なくとも私の実感とは同じではないようです。
少し前に90年代以降のサービス業のうち「公共サービス」が特別に発展した様子の一端「教育と子ども」を小分類(?)として紹介しました。
内容はくり返しませんが、30年という期間をみると大きな変化、発展があります。
この中心は社会福祉的なサービス業の進展というものであり、これは経済成長において大きな役割をしめるものと考えられます。
これからさらにその傾向は続くとみられます。