日本年金機構
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国民年金保険料の納付率 非正規増加で低迷続く
国民年金は国内に住む20歳以上60歳未満の全員が加入し、所得が低いために保険料を免除・猶予された人などを除くすべての人に納付の義務がある。
国民年金の納付率は、このうち「第1号被保険者」と呼ばれる自営業者や学生らを対象に算出する。
2015年度末時点の対象者(第1号被保険者)は1668万人で、前の年度末と比べて74万人減った。
厚生年金や共済年金に加入する会社員や公務員は給与から保険料が天引きされるため、算出の対象外だ。
納付率は1990年代半ばの80%台をピークに低下が続いている。
11年度には過去最低の58.6%を記録。
12年度からは持ち直しの動きを見せているものの、なお4割近くの人が保険料を納めていない。
非正規雇用の増加や、07年に発覚した「消えた年金」問題などで年金制度への不信が高まったことが要因だ。
都道府県で納付率が最も高かったのは島根で77.6%。
最も低かったのは沖縄で44.5%で、30ポイント以上の開きがある。
厚生労働省が発表する納付率は保険料の納付を免除・猶予されている人を対象者から除いて算出している。
免除・猶予になっている576万人を対象に含めた実質的な納付率は40.7%となり、前年度から0.1ポイントの小幅な改善にとどまっている。
〔平成28(2016)年9月20日 日本経済新聞 電子版〕
年金、強制徴収を所得300万円以上に拡大 納付率上げ
厚生労働省と日本年金機構は、国民年金保険料の強制徴収の対象を広げる。
現在は年間所得350万円以上の滞納者に実施しているが、2017年度から300万円以上にする。
国民年金保険料の納付率は60%程度で低迷している。
保険料の滞納に厳しく対処し、納付率の向上を狙う。
保険料の徴収を担当する年金機構は、滞納が続いた人にまず文書や電話、戸別訪問などで納付を求めている。
このような要請にも応じない場合、一定以上の所得がある人に強制徴収を実施している。
年金機構では、この基準を課税所得350万円(かつ未納月数7カ月以上)から300万円(かつ未納月数13カ月以上)に引き下げる。
新基準に当てはまる人は強制徴収される可能性がある。
対象者は現在27万人程度だが、約9万人が加わる見通しだ。
まず「最終催告状」という書面を送り、それでも応じない場合に督促状を送る。
その後に年金機構の職員が銀行口座や有価証券、自動車などの財産を調査し、売却できないよう差し押さえる仕組みだ。
強制徴収の所得基準は15年度まで所得400万円以上だった。
保険料の徴収強化策として16年度には基準を350万円に引き下げた。
17年度の実施で、基準の引き下げは2年連続となる。
保険料の納付率は低迷が続く。
被保険者が納めるべき保険料のうち、実際に払われた割合を示す納付率は15年度に63.4%だった。
依然として4割近い人が納めていない。
厚労省が発表する納付率は低所得者や学生ら保険料の納付を免除・猶予されている人を対象者から除いて計算している。
このため加入者全体の納付状況を示しているわけではない。
免除・猶予になっている人を対象に含めた実質的な納付率は40%程度にとどまっており、制度の持続性に懸念が生じている。
厚労省は保険料を払う余裕がない低所得者向けに納付を猶予する制度の拡大を実施した。
7月から対象者を30歳未満から50歳未満に拡大。
納付の猶予期間は年金受給額に反映されないが、受給に必要な加入期間には算入できる。
納付猶予を受けるには所得による基準があり、全額免除であれば単身者で57万円、扶養親族1人で92万円となっている。
〔◆平成28(2016)年9月20日 日本経済新聞 電子版〕