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生活保護世帯の世帯分離

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生活保護世帯の世帯分離

世帯分離決定
発達障害があって稼働能力のない生活保護世帯の子どもの専門学校進学に伴う世帯分離決定を取り消す大阪府知事裁決を得ました。
(相代理人:牧野幸子弁護士、支援者:枚方交野生活と健康を守る会)
現在、国は、生活保護を受けながらの大学等への就学を認めておらず、生活保護世帯の子どもが大学等に進学すると「世帯分離」して子どもの保護費を打ち切る扱いをしています。
その理屈は、高校を卒業すれば働いて稼働能力を活用すべきところ、大学等に進学することは稼働能力を活用しているといえないから、というものです。
本来、この解釈運用自体が大学等進学率が8割を超えている現状に合わなくなっており、国は正面から大学等への進学を認め、世帯分離の運用を改めるべきです。
(参考日弁連意見書:
https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2017/opinion_171018.pdf)
しかし、現行の通知(国の解釈運用)を前提としても、「稼働能力不活用」という理論的根拠からすると、障がい等で稼働能力がない子どもが大学等に進学した場合には、現行通知の適用の前提を欠き、世帯分離せず世帯内就学を認めるべきということになります。
審査請求手続における、こうした私たちの主張について、大阪府職員も理解を示し、厚生労働省に対して、意見照会をしました。
しかし、厚労省は、さんざん回答を長引かせたうえ、私が再三回答を督促してようやく出した回答は、要旨「低所得世帯との均衡から稼働能力の有無にかかわらず世帯分離すべし」というものでした。
大阪府の審理員は、この厚労省の回答を踏まえた棄却意見書を書き、大阪府行政不服審査会に諮問したところ、同審査会は、「稼働能力不活用の場合は通知の前提を欠き世帯分離すべきでない。
就学のために使った費用は奨学金等の収入から収入認定除外すべし」という、私たちの主張どおりの極めて正当な答申を出してくれました。
これを受けた今回の大阪府知事裁決は、理論面については、厚労省と審査会の見解を両論併記し判断を避けたものの、世帯の自立を十分考慮した判断を求めて、世帯分離決定を取り消したものです。
今後、世帯分離されていた期間の具体的な収支を踏まえ、この母子世帯の生活の安定と自立に資する寄り添った判断を求めて守口市と交渉していくことになります。
守口市が正当な判断をするよう、関心を寄せていただければ幸いです。
また、「低所得世帯との均衡から稼働能力の有無にかかわらず世帯分離すべし」という厚生労働省の見解は、理論的な一貫性・整合性を全く欠いており、断じて容認できるものではありません。
厚生労働省は、大阪府行政不服審査会の答申もふまえ、この見解、運用を直ちに改めるべきです。
ついては、皆さまの身近に、障がい等のため稼働能力がない生活保護世帯の子どもが大学や専門学校に進学し、世帯分離されたことによって、大変な苦労をされた事例や、逆に世帯内就学を認めるという正当な対応をされた事例があれば、その詳細をDMなどでご教示いただけないでしょうか?
年の瀬にお騒がせして恐縮ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20181228-OYTET50009/
2018年12月28日 ニュース・解説
発達障害の長男進学で保護費減額は「不当」…大阪府裁決画像の拡大
発達障害がある長男(20)の専門学校進学を理由に、大阪府守口市が生活保護費を減額したのは不当として、母親(54)が申し立てた行政不服審査で、府が市の決定を取り消したことがわかった。
国は専門学校や大学の進学者分の保護費を一律不支給としており、府の判断は異例。
府は個別の事情を検討するよう求めており、専門家は「一律カットに理由はなく、取り消しは妥当だ」と評価する。
12月11日付の府の裁決などによると、母親は16年前に夫と離婚してから長男と2人暮らし。
夫から養育費の支払いがなく、パートの仕事をしながら生活保護を受給してきた。
長男は小学生の時に発達障害と診断された。
絵を描くのが好きで、イラストを学ぶ高等専修学校に進学し、昨年4月、アニメ画の制作などを学ぶ専門学校に入学した。
この際、母親は市から生活保護費を月約14万円から約8万円に減額され、「障害を持つ長男の自立に向けた進学。まだ働ける状況になく、保護の継続が必要だ」として、昨年6月に府に審査請求していた。
裁決は、長男の進路について、ケースワーカーが障害の特性などを踏まえて検討した形跡がなく、「世帯全体の自立に関する十分な検討がなく、減額は不当」と指摘。
「市はカットが妥当かどうかを再検討するとともに、長男の進路に関する丁寧な指導・助言を行う必要がある」とした。
母親は裁決について、「同じような境遇の家庭を救うきっかけになれば」と話した。
守口市は「決定の妥当性が認められず残念。裁決を精査し、新たな(支給の)決定を検討する」とコメントしている。

国は、専門学校や大学の進学者については、通知などで自ら稼ぐ力(稼働能力)があるとして生活保護費を一律不支給とするよう各自治体に求めている。
このため今回の裁決後も、厚生労働省の担当者は「高校より先の進学は、生活保護法が保障する最低限度の生活とは言えない。
保護を受けない低所得世帯とのバランスも考える必要がある」と説明した。
一方、厚労省などによると、大学や専門学校への進学率(2017年度)は73%。
だが生活保護世帯に限れば、半分以下の35%にとどまる。
意欲がありながら、親の負担を考え、進学を諦めた子供は一定数いるとみられる。
生活保護制度に詳しい名古屋市立大の桜井啓太准教授(社会保障論)は「専門学校や大学への進学は一般的になった。
裁決は自治体に対し、進学で機械的にカットするのではなく、各家庭の事情に応じた丁寧な検討を求めたと言える。
病気や障害の子を持つ貧困家庭を十分に想定してこなかった国も、支給基準を再考すべきだ」と語る。
◎行政不服審査  国や自治体が行った処分について、行政不服審査法に基づき、別の行政機関に不服を申し立てる手続き。
生活保護費の場合、市区町村が支給の可否を決めるため、都道府県知事に申し立てる。

弁護士 小久保哲郎
〒530-0047 大阪市北区西天満3-14-16
西天満パークビル3号館7階  あかり法律事務所
TEL 06-6363-3310
FAX 06-6363-3320
E-mail tk-akari@wmail.plala.or.jp
http://www.akari-law.com/
〔2018年12月28日、子どもの貧困ネットワーク 〕

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