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福岡わかもの就労支援プロジェクト

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福岡わかもの就労支援プロジェクト

所在地 福岡県福岡市
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不登校の娘…「実は私も」前向きな言葉引き出した“横並びの関係”
プロジェクトの受講生と話す林智恵さん。娘との日々が今の援助に生きているという
社会との関係を絶ったまま家で過ごす人を、どう後押しするか。
引きこもりになった若い人を支える一般社団法人「福岡わかもの就労支援プロジェクト」(福岡市)が9月、同市で開いた講演会では、本人が前向きになれるように親の接し方を見直す助言があった。
団体は2015年に発足。
対話を通して意欲を引き出し、目標に向けた行動を促す人材育成の手法「コーチング」で相手と向き合う。
スタッフの林智恵さん(48)が支援の場に入ったきっかけは、不登校になった娘との日々だった。
娘は高校生の頃に学校に行けなくなり、部屋から出なくなった。
昼夜が逆転し、ずっと布団の中で過ごしていた。母と子のひとり親家庭。
「死にたい」「私には生きる価値がない」。ふさぎ込む姿に、どうしていいか分からなくなった。
インターネットの中に答えを求めた。
「数カ月で登校するようになった」「笑顔が戻った」との言葉を見つけると、その団体に連絡し、方法を学んで試した。
それでも変わらなかった。
感情に任せて娘に思いをぶつけたこともある。
返事は「お母さんは私を見ていない、見たくないんだね」。なぜ学校に行けないのか、どんな思いなのか、考えたつもりになっていた。
「ネットの例じゃなくて、自分たちなりの答えを探そう」。そこで知ったのがコーチングだった。
「コーチングは相手の答えを引き出す、横並びの関係。そうして伴走するんです」。
自信を失い、失敗を恐れる娘の思いを、まず「そっかー」と受け止めようと決めた。
会話のキャッチボールを意識し、相手を認めた上で「何に不安がある?」「実は私もね」「若い頃にね」と弱い部分を正直に見せることにした。
自分の気持ちが伝わるように、話し方や声色、どこで話をするか、いつも気を配ったという。
「親がどんなに子どものことを思っていても、相手にどう伝わったかが大事なんです」
ドア越しに毎日あいさつし、その日に訪れた場所や出来事を語り掛ける。言葉が返ってこなくても気にしない。
「返事を求めがちだけど、なくてもいいと思って。声掛けは『ちゃんとあなたを見ているよ』というメッセージだと思うようにした」
〔2020年10/20(火) 西日本新聞〕

引きこもりの就労へ「練習拠点」 “職場”で仕分け、荷造り…成長の場に
伝票に商品のあて先を書き込む男性(22)=手前。スタッフに教わりながら作業を進めた。
引きこもりになった若い人の就労を手助けする一般社団法人「福岡わかもの就労支援プロジェクト」(福岡市)が、受講生をアルバイトができるようになるまで訓練する場を同市にオープンさせた。
社会と接点がない生活が続くとコミュニケーションが苦手になり、働きたくても働きにくくなるという。いつかは正規雇用で-。
目標に向け、商品の仕分けや荷造りといった仕事を練習する若者の「職場」を訪ねた。
「あっ、やらかした」
ミスをして申し訳なさそうにする男性(22)。法人の鳥巣(とす)正治代表理事(60)は「慌てんでいい、ゆっくり」となだめた。
アルバイトの練習をする場が必要
2日、同市の集合住宅の一室に受講生やスタッフ、鳥巣さんが集まった。ここが仕事の練習をする場だ。
鳥巣さんによると、引きこもりやニートの状態が5年を超えると、正規雇用はもちろんアルバイトで働くのも難しくなるという。
若者たちはスタッフとの面談や行事を通して立ち直りのきっかけをつかむ。
次の段階として、アルバイトの練習をする場が必要と感じていた。
会報にそんな内容を書くと、付き合いのある企業がこの部屋を用意し、DVDの仕分けや荷造りの仕事を発注してくれた。
商品を搬入し「出荷センター」と名付け、9月に開所。作業をする若者には交通費と弁当を出す。
10~20代の5、6人が週に数回ずつ通い、スタッフが交代で毎日付き添っている。
遅刻や欠勤の防止と、正確な仕事が目標
この日は午前10時5分に朝礼が始まった。まず全員で作業手順書を黙読する。
商品の届け先を記載する伝票に、書いたことがない漢字を記す際は、練習してから書くようスタッフが注意した。
遅刻や欠勤の防止と、正確な仕事が目標だ。
ミスをした22歳の男性はいじめのため中学校で不登校になり、高校も休みがちになって留年した。
定時制高校に移って卒業した後、法人の支援を受けている。
男性が伝票に宛先を書き始めた。文字が枠をはみ出し「はー」とため息。
「間違えたらどうすればいいですか」。2回のミスを経て、30分ほどで1枚を書き終えた。
引きこもりの就労へ「練習拠点」 “職場”で仕分け、荷造り…成長の場に
「練習の場が必要なんです」
男性は人に話し掛けるのが苦手という。
「アルバイトでミスをしたら『間違っていませんか』と聞けないといけない。ここなら顔見知りがいるから話しやすい」と鳥巣さんは言う。
作業はスタッフが点検するため、受講生は失敗しても責任を負わない。
分からない点は尋ねる。ミスは自分で気付き、報告し、やり直す-。職場で必要なことを練習し、学んでいく。
スタッフの岩下都さん(45)によると、アルバイトが決まっても「立っているだけ」になることがあるという。
求人情報を見て応募の電話をかけ、話すらできないことも。「だから練習の場が必要なんです」
中学2年から不登校になった別の20代男性は、作業を通して「自分にもできることがあったんですね」と口にした。
少しずつ成長する場になっているようだ。
「もう少し慣れたらアルバイトに挑戦してみたい」
大学に通えなくなり、2年ほど休学中という男性(24)は週2回来る。
大勢の人に囲まれるとストレスを感じるが、ここは少人数で居心地がいい。
「もう少し慣れたらアルバイトに挑戦してみたい」
働くメンバーは作業中に話し掛けるとミスが出るなど「仕事の質はまだまだ」(鳥巣さん)。
それでも、自分で間違いに気付いたり、スタッフとコミュニケーションを取れるようになったり、変化が出ている。
鳥巣さんは「これまで週1回の面談が中心で、アルバイトにも行けない若者をどうやって引き上げるか苦労していた。
ここなら本当の職場に近い環境で練習ができる。
通い始めて2カ月ほどでアルバイトができるように支えていきたい」と話している。
×   ×    × 
法人は11月2日午後2時半~5時、「不登校・引きこもり講演会」を福岡市中央区今泉の市NPO・ボランティア交流センター「あすみん」で開く。
定員80人で参加費千円。事前申し込みが必要。
また「出荷センター」で受講生が調理を体験するための家電や食器代として、10月10日までインターネット上のクラウドファンディングで寄付金も募っている。問い合わせは鳥巣さん=080(5456)6060。
〔2019年10/12(土) 西日本新聞(河野賢治)〕

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