Learning for All
NPO法人 Learning for All
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学力格差、虐待、不登校…このままでは学校がパンクする。子どもの学びのため、必要な支援とは
子どもの貧困や教育格差に取り組むNPO「Learnng for All」は、新型コロナウイルスの影響拡大に伴い、緊急支援プロジェクトを立ち上げた。
これまでの活動は学習支援や居場所支援など。
そうしたこれまでの活動をオンラインへと移行すると同時に、食事や物資の配送や保護者への情報提供と相談支援を開始した。
【BuzzFeed Japan/千葉 雄登】
なぜ、こうした包括的な支援が今必要とされているのか。「Learning for All」代表の李炯植さんに話を聞いた。
学力の背景にある、複合的な課題
認定NPO法人Learning for All・代表の李炯植さん
「お子さんやその保護者方がが抱えているしんどさは、1つの困難に回収されません。
非常に複合的な困難が折り重なった状態に、彼らは置かれています」
李さんは、このように子どもとその親を取り巻く環境を説明する。
「学習支援だけで子どもの貧困や教育格差の問題が解決するのか?と言われたら、そうではない。
貧困家庭ほど、学習の機会そのものが足りてないのは事実です。
そのために学習の遅れがより大きくなり、そうした教育格差は最終的には経済格差となります」
「この学習の格差は、保護者の就労環境の違い、生活習慣が形成されているかどうかといったことにはじまり、虐待、発達障害、不登校といった課題と密接に結びついています。
こうした課題が折り重なり、学力の問題が表面化する。
この課題は、学習支援や子ども食堂など1つの側面からだけでは、解決することは困難です」
実際の活動風景、この日はピザを作った
そのため、Learning for Allは包括的なサポートを打ち出す。
生活習慣を身につけるための支援や食事の問題の解決など、子どもの課題を解決するために子どもが育つ家庭環境の課題解決も目指している。
「保護者も困りごとを抱えていることが少なくありません。
だからこそ、私たちは保護者の困りごとにも寄り添い、相談支援を行い、必要な情報の提供や行政窓口へつなぐ支援を必要に応じて行っています」
必要な人に届かぬ情報 Learning for All
Learning for Allでは、4月に子どもとその保護者を対象としたアンケート調査を実施した。
新型コロナウイルスが感染拡大する今、どのような支援を必要としているのか、ニーズを掴むための調査だ。
そうした中で、働きたくても、休校の影響で子どもが家にいるため働けないと、これまで契約社員として働いてきていた保護者が有給を使って子育てをしているといった実態が浮き彫りとなった。
バイトのシフトも減り、収入が減っていく家庭。これまで給食で賄っていた分の食費がかさみ、家計が圧迫されている家庭。事情は様々だ。
生活が逼迫しているという声は、新型コロナの影響もあり3月から徐々に増えつつあると李さんは感じている。
公的な支援を受けられる場合もあるが、そもそもどんな制度が存在するのか、その制度を利用できる対象かどうかを調べる情報にアクセスできていない場合も多く、生活困窮に陥る家庭も少なくないという。
こうした声を受けて、オンラインでの学習と居場所の支援に加えて、まずは食事や物資の配送、保護者への情報提供と相談支援を実施することを決めたと李さんは語る。
「支援を必要としてる方ほど、必要な情報にアクセスできていない実態があると感じています。
特にシングルマザーの方など、平時から孤立が課題とされてきた方達には今回もあまり情報が届いていません。
生活も逼迫する中で、相談相手もいない。
ストレスが不安が高まっているケースもあります」
広がる学力格差、コロナで拍車
時事通信
コロナの影響で休校が長引き、今も様々な地域で分散登校などが行われている。
これまで通りの学校生活をいつになれば取り戻すことができるのか、見通しは立ちそうにない。
そんな中で、学力の格差はより広がっていると李さんは指摘する。
「学校からはプリントの課題やオンラインでの課題が出されています。
ですが、Learning for Allで支援している子どもには学習の遅れや発達障害など何かしら困難を抱えているケースも多く、そもそもこれまでの学校教育についていくことができていない子どもたちです。
彼らに、自分たちで勉強しろと言われても、それは非常に難しいと言わざるを得ません」
3人兄弟で学習に集中できる環境が家にはないケース、家庭に学習机がないケースなど、勉強がしたくても、できない家庭環境で暮らす子どももいる。
「例えば、そうした学習のサポートを保護者にお願いするというケースがあるかと思います。
ですが、保護者が働いていれば、それは容易ではありません。家庭での学習機会を担保しようと、学校も努力をしていることは理解しています。
ですが、どんな家庭で育っているのか、親のサポートを受けることができるのか、オンラインの環境は整っているのかといった要因で格差は広がる一方です」
「これまでの格差がより拡大することは間違いない」、それが李さんが今、コロナ禍で抱く危機感だ。
塾など学校外の教育環境を手に入れることができる子どもは、「学校に通うよりも、効率よく学力を高めることができている側面はある」。
例え、それが有料コンテンツであっても課金できる家庭の場合は、自分の習熟度に合った学びを手にする機会も増えているためだ。
だが、貧困家庭の子どもたちの前には高いハードルがある。
学校での学習機会がコロナ以前と比較すると相対的に減る中で、学習の遅れが広がっている。
現在、Learning for Allでは、個別のニーズに合わせ、原則1対1で、学習支援をオンラインで実施している。
外国籍の子どもであれば、日本語のサポートも行う。
まずは勉強よりも、誰かと話して不安を和らげたいというニーズにも応えている。
コロナを機に、学校は外部との連携を
時事通信
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議はワクチンや治療法の開発が行われるまで、「新しい日常」が続くとしている。
緊急事態宣言の再指定も選択肢の1つとされてる中で、学校もまた休校措置を取ることも考えられる。
子どもを取り巻く環境が変わり続ける中で、学校や子どもの学びを支える大人はどのような対応を行う必要があるのだろうか。
「これまで学習指導要領で定義されてきた、こなさなければいけない学習時間をこなすことをゴールにするのではなく、学習の成果をゴールにする必要があるのでは」
李さんは、こう問題提起する。
一人ひとりが学んだ成果をゴールに置くことで、その子どもの状況に合ったカリキュラムを柔軟に提供し、その学びをサポートする形へシフトすることが必要なのではないか。
「我々のようなNPOも学校での学びをサポートすることは可能です。
もちろん、学校の先生でないとできないこともたくさんあります。
ですが、今は子どもを中心にして考え、大人が対話して、子どもにとって必要な学習環境を整えていくことが重要なのではないでしょうか」
これまでも、文科省は学校を地域に開く方針を示してきた。
しかし、学校と地域、そして学校とNPOといった連携の仕組みはまだまだ全国的には広がっていない。
そんな中で、コロナをきっかけに地域やNPOなどを巻き込み、「本当の意味でのチーム学校」を作ることが、今求められている。
「コロナの影響で、子どもたちが抱えている課題がこれまで以上に複雑化しています。
家庭の課題、学力の課題、それから不登校の問題。
そうしたものが、全て学校へと持ち込まれれば、学校運営のキャパシティはパンクしかねません。
学校だけでは対応することが、もはや難しくなっている。
だからこそ、これまでのやり方を貫くのではなく、柔軟な対応が必要だと考えています」
Learning for All
今回のコロナ禍で通常の生活を送ることが難しい状況にある子どもや家庭を救うために立ち上げた「新型コロナ緊急支援プロジェクト」
(https://camp-fire.jp/projects/view/283077)で必要な資金は総額2,900万円。
認定NPO法人Learning for Allでは、より多くの子どもへ支援を行うため支援を募っている。
〔2020年6/12(金) BuzzFeed Japan〕
全ての子に学ぶ機会を 子どもの貧困対策、GSがNPO支援/東京都
米金融大手ゴールドマン・サックスの日本法人が、子どもの貧困問題に取り組む団体を支援している。
多くのM&A(企業合併・買収)を手がけた、ゴールドマン・サックス証券(GS)の持田昌典社長は、米国の大学で学んで飛躍した経験から、「教育を受けるチャンスがあることは重要だ」と強調する。
GSはこのほど、NPO法人「Learning for All(LFA)」(新宿区、李炯植代表理事)が展開する学習支援などのプログラムに、今後3年で計約4億円を助成することを決めた。
延べ約750人の子どもたちへの教育支援を目指す。
LFAは2010年から、生活が苦しい家庭の小中学生に、スタッフが無償で勉強を教える学習支援や、安心できる居場所づくりの提供をしている。
葛飾区で公民館などを活用した支援拠点を開設中だ。助成はこの活動経費に使われる。
李代表理事は、「貧困連鎖を断ち切るには、教育で自立する力をつける必要がある」と強調。
「子どもたちが早期から切れ目なく支援を受けられるセーフティーネットを日本に構築するのが目標」と話し、葛飾区での活動をモデル化して全国に広げていくことを目指す。
GSの持田社長は「日本の子どもの7人に1人が貧困状態にあることを知っている人は少ないが、この問題は極めて深刻だ。教育を受けるチャンスがないと人間は、はい上がりづらい。ジャンプする力を得てほしい」と期待する。
持田社長は、人生が変わったきっかけは教育だったという。
大学では勉強よりもラグビーに熱中したまま社会人になった。
「自分は英語もできない。どうすればいいか」と悩んでいた時、テンプル大のブルース・ストロナク学長と知り合い、「君は絶対にできる」と励まされた。
推薦状をもらい米国のビジネススクールへ行き、「死ぬほど勉強した」結果が、今につながったという。
持田社長は「LFAの子どもたちもジャンプしてほしい」と話し、3年間のLFAの実績を判断した上で、さらにサポートする方針だという。
〔◆平成31(2019)年1月24日 朝日新聞 東京朝刊東京版(大和田武士 〕
貧困の子ども 広がる支援 NPO学習塾に「居場所」講師の大学生と信頼関係
◎健康のページ
「貧困状態」にある子どもたちの学習を支援する動きが広がっている。
NPO法人などが学習塾を開いている。
子どもたちが、安心して過ごせる居場所としての役割を担う。
2月下旬、東京都内の集会所で中学生6人がそれぞれ、講師の大学生と向き合っていた。
男子中学生の英語の発音に女子大学生は「いい発音だね」と励まし、最後は「長い時間頑張ってくれたのがうれしい」と喜んだ。
NPO法人「Learning for All」(東京)が、経済的な困難を抱える家庭の子どもを対象に開く無償の学習支援教室だ。
中2の男子生徒は学校の授業についていけず、勉強嫌いになった。
母親の勧めで約1年前、教室に通い始めた。
当初緊張したが、休み時間に大学生と、ペットの犬などの話で盛り上がり、通うのが楽しくなった。
同じ質問を何度しても大学生は丁寧に教えてくれた。
おかげで勉強の面白さを感じられた。
今は自宅で1日4時間勉強し、学校の試験の点数も数学や理科を中心に伸びてきた。
「好きな動物に関係する仕事に就ければいいな」と思い描く。
同法人の教室では、信頼関係を築けるように、講師の大学生は3か月間、同じ子どもを受け持つ。
図形や色など関心事を探り、その関心事をからめて教える。
「難しい」と漏らす子どもには「そうだね」と寄り添い、上達や達成の内容をきめ細かにほめる。
広報担当の石神駿一さんは「子どものペースに合わせてやる気を引き出し成績向上につなげている」と語る。
貧困状態の家庭の子どもは意欲や自己肯定感が低い傾向にある。
東京都大田区の小5を対象にした調査では、「頑張れば報われると思うか」という質問に24%が「思わない」と答え、非貧困の子供の16%を上回った。
「価値のある人間と思うか」との問いにも47%が「思わない」とし、非貧困の子供の36%を超えた。
自らも学習教室を開く、愛知工業大学基礎教育センター准教授の川口洋誉(ひろたか)さんは「進学競争が激しくなる一方、貧困状態の家庭の子どもは参考書を買えない、学習机がないなど勉強に不利な環境に置かれている」と指摘する。
成績が悪かったことなどをきっかけに投げやりになり、将来の夢も失われていく。
一人親の家庭では、夜遅くまで働く親に、学習に関心を払う余裕がない場合もある。
大人から「頑張りが足りない」と責められた子供は、分からないことや悩みを誰にも明かせなくなっている。
生活困窮者自立支援法が2015年に施行されたことで、学習支援教室が増えている。
川口さんは「多くは、子供たちが自分の気持ちを大学生に素直に伝えられる『居場所』の機能を持っている。安心できる環境で少しずつ勉強を進めることで自信ややる気が培われる」と説く。
日本財団は小学校低学年を対象に、平日の放課後、学習支援や読書会などを行い、5~20年後の自己肯定感ややりきる力の伸びを調べる事業を進めている。
ただ、事業委託元の自治体が消極的だったり、講師の大学生が不足していたりする地域もある。
川口さんは「NPOなどが学校や行政と連携し、学校で子ども一人ひとりに目を配れる体制を作ることが重要」と強調している。
□メモ
国の2012年の「子どもの貧困率」(国民の所得を多い順に並べて真ん中の数値の半分・122万円に満たない世帯で暮らす17歳以下の子どもの割合)は16.3%で、6人に1人になる。
生活困窮者自立支援法の学習支援事業は、厚生労働省が費用の半分を助成する
。同省によると、事業を行う自治体は14年度の184が16年度には423になった。
〔◆平成29(2017)年3月15日 読売新聞 東京夕刊〕