小学生の留学
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増える小学生の海外留学・徹底解明!メリットは?費用は?
小学生の留学事情
「小学生から海外留学?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれませんが、グローバル化が進み、英語教育なども改革が進む今、海外留学に関心を示す家庭が増えているようです。
幅広い年代の留学をサポートする海外教育研究所の金成有理さんに、小学生の留学事情について聞きました。
教育改革を前に増加する子ども留学
「ここ5年ほど、小学生の子どもを留学させたいという親御さんからの問い合わせは急増しています。
背景には、これからの小学生が直面する教育改革があると考えています」
こう教えてくれたのは、年間300人以上の海外留学をサポートしている金成有理さん。
中学生、高校生がボリュームゾーンではありますが、最近は留学生の低年齢化が著しく、同社への問い合わせのうち小学4年~6年生が占める割合は、2015年からの4年間で16%から22%まで増えたのだとか。
確かに、2020年度からは中学・高校だけではなく小学校の英語教育も見直しが進み、英語入試の改革が進められていきます。
「グローバル化が進む中、実践的な英語力や国際感覚を身につけさせたいというニーズは根強いものがあります。
また、学校になじめず不登校になったお子さんのご家庭から相談を受ける機会も増えていますね。
海外留学で再チャレンジという選択肢になります」
海外留学で養われるのは語学スキルだけではない、と金成さんは強調します。
その理由は、多文化・多言語社会の欧米に身を置くことでダイバーシティー(多様性)を体で感じることができ、個として立つことを求められる環境で自立心も自然に養われるからです。
AI(人工知能)やICT(情報通信技術)が進展し、未来が流動的な現代。
海外留学は、英語スキルや多様な価値観、個の強さを培える絶好の機会と言えるでしょう。
初等教育から注目する家庭が増えてくるのは当然のことなのかもしれません。
「ただ、私たちに海外留学の問い合わせをいただいて、実際に渡航に至るご家庭はそのうちの3割程度です。
留学の目的や子どもの意思、親の心構え、決して無視できない留学費用、そして留学を終えて帰国後の学び……。留学に踏み切る前に、家族で話し合い、決めておくことは多岐にわたります」
小学生の単身留学もバリエーションは豊富
そもそも小学生が体験できる留学とはどのようなものなのか。そのバリエーションを見ていきましょう。
海外留学を期間で分けると、夏休みや冬休み、春休みなどを利用した短期留学と、1学期から1年以上に及ぶ長期留学(進学)の2タイプがあります。
さらに、その中でもボーディングスクール・公立校といった受け入れ先による違いも。
それぞれの特徴を金成さんに解説していただきましょう。
●夏・冬・春休みを活用した海外体験
「短期留学といえば、サマースクールというイメージが強いかもしれません。
各種団体、ボーディングスクールによる短期の語学研修プログラムがあります。
長期留学を見据えたお試し留学としても人気です。
サマースクールなら季節が同じ北半球のイギリス、アメリカ、カナダ、冬休み・春休みなら夏になっている南半球のオーストラリア、ニュージーランドを選ぶ方が多いですね。
近年、留学先として人気が高まっているフィリピンなどの東南アジアは、小学生の留学においては、親子または団体での留学が多いようです」
●ボーディングスクール
「寄宿制の学校、と言ったら分かりやすいかもしれません。
生徒と教師がキャンパスの中で寝食をともにしながら生活し、学んでいます。
留学先は、イギリス、スイス、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアが主流です」
●公立校留学
「公立校に留学生を積極的に受け入れているのは、ニュージーランド、オーストラリア、カナダです。
オーストラリアやカナダは単身留学が中学生からに限られているケースが多いですが、ニュージーランドは10歳からビザが取得可能なので、小学生でも長期留学ができます。
公立校だけに地元の子どもたちと一緒に学びますが、留学生用の語学補習クラスを設けている学校も多く、サポート体制は充実しています」
●親子留学
「親と子どもが一緒に留学する『親子留学』は、保護者ビザがあるオーストラリア、ニュージーランド、大自然と高水準の教育が提供されるカナダが安定した人気を保っています。
長い方だと数年単位、短い場合でも1年ほどですね」
留学にかかる費用は
■公立校(航空券+ホームステイ+授業料+諸費用)
年間300万~400万円
■ボーディングスクール(航空券+寮費+授業料+諸費用)
年間400万~1000万円
■サマースクールなどの短期語学留学
2週間30万~80万円
公立校+ホームステイは私立のボーディングスクールよりも留学費用を抑えられます。
金成さんが斡旋している留学案内の中でもっとも費用がかかるのはスイスのボーディングスクールで、1000万円台が見込まれるとのこと。
一方、2週間という短期だけあってサマースクール系は比較的リーズナブル。ホームステイなら30万~50万円台ですが、小学生の場合は管理がしっかりした寮制を選ぶご家庭が多いそう。
寮滞在だと70万~80万円台がスタンダードになります。
海外留学には親の「覚悟」も大切
本格的に留学を検討するなら、まず何から始めるべきでしょうか。
理想的なスケジュールを聞いてみましょう。
「親元から離れての生活です。いきなり長期留学は、子どもにとってハードルが高いかもしれません。
私たちは、まずサマースクールなどでの短期留学を推奨しています。
それは子ども自身だけではなく、親にとっても大切。
いざ留学で出国してしまうと、寂しさや喪失感から頻繁に連絡を入れる親御さんもいらっしゃいます。
それでは留学先での子どもの時間を奪ってしまうことにもなりかねません。どんと構えて送り出す。
お子さんの適性、そして親御さんの“覚悟”を見極めるためにも、まずは短期でお試しされたほうがいいでしょう」
カナダ、アメリカなど北半球の国は新年度が9月からで、オーストラリアやニュージーランドなど南半球の国は新年度が2月から。
日本の学校のスケジュールとは少々異なります。
9月始業の場合、前年の9月から出願受け付けが始まるため、お試しのサマースクールを経て国や学校をセレクトし、同年の秋頃に出願するのが理想的なスケジューリングになりそうです。
「選考や面接のために渡航することは必須ではありません。
Skypeでのネット面接もありますし、カナダやアメリカのボーディングスクールは選考を兼ねた説明会を日本で実施することも。
各国の大使館や政府機関の留学フェアで情報収集をしてみるのもよいでしょう」
金成有理さん
また当然ですが、留学期間中は日本の義務教育を受けられないため、自国の言語や歴史、文化を学ぶ機会が不足します。
帰国後は、漢字に苦手意識を持ってしまう子どもが少なくないようです。
そんな状況を避けるためにも、留学中に日本語の本や新聞を読んだり、通信教育を受けたりするなど、日本に関する学習を継続する努力も必要になります。
「せっかくの留学なので、現地では英語力の向上や文化交流に励み、一時帰国中に塾や家庭教師などで、集中して日本の教育を受けられるお子さんが多いです。
公立の小学校ならば、短期間でも入学させてくれるケースもあるようなので、状況に合わせてお子さんにマッチした学習法を探すとよいですね」
金成さんがサポートしたお子さんの体験記を読むと、「自分で考え、行動する力が身についた」「英語へのモチベーションが上がって、帰国後の英語学習が楽しくなった」「外から見て、日本の良さ、自分の家庭の温かさが分かった」など、ほほえましくも頼もしい感想が並んでいました。
金銭面やスケジュール調整など、さまざまなハードルはあるものの、海外留学が子どもたちにとって得難い体験になるはずです。
「英語や体験したものを吸収する力、素直に感じ取る感受性、外国人の中でなじんでいく柔軟性、すぐ行動に移せる勇気……。
小学生だからこそ得られるもの、感じ取れるものはたくさんあります。
可能性を広げられる選択肢の一つとして、考えてみてはいかがでしょうか?」
(撮影:辰根 東醐 編集:阿部 綾奈/ノオト)
話を伺った人:金成 有理さん 株式会社海外教育研究所 代表取締役
(かなり・ゆり) 海外教育コンサルタント。
海外教育研究所の代表として小中高生、大学生・社会人の留学をサポートしている。
高校時代のサマースクールをきっかけに、カナダの大学へ進学し国際関係学を専攻。
帰国後は私立中高一貫校、英会話学校で教師、講師を務める。教職歴は10年。
佐々木 正孝 キッズファクトリー代表
〔2019年11/5(火) 朝日新聞EduA〕
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