横浜市教育委員会
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「学校の対応、不十分」 横浜市、いじめ重大事態2件認定
いじめ重大事態の調査結果について説明する横浜市教委の担当者=横浜市役所
横浜市教育委員会は18日、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態調査の結果、市立小学校2校でいじめがあったと認定し、学校の対応が不十分だったとする報告書2件を公表した。
学校主体の調査では十分な結果が得られないと市教委が判断。
東京電力福島第1原発事故で市内に自主避難した男子生徒がいじめを受けた問題に続き、第三者機関の市いじめ問題専門委員会が調査した。
市教委は「再発防止を徹底しているさなかだが、各学校の対応が十分とは言い切れない」と釈明。
「しっかりと検証し、今後の取り組みにつなげたい」としている。
報告書などによると、当時3年生だった女子児童が数年前、同級生男女4人から「バカ」などと言われ、髪を切るよう強要されるいじめを受け、年間欠席日数が約100日に達した。転校後、保護者が専門委の調査を申し入れた。
報告書は、女子児童が教員に悩みを十分に受け止めてもらえなかったと感じるなど、学校の「寄り添った対応」ができていなかったと指摘。
児童や保護者の不信感が増したとしている。転校前、女子児童側は医療機関や警察に相談。
学校は学校教育事務所に報告し、市教委も事案を把握していた。
別の1件は2015年度、当時4年生の女子児童が同級生女子3人から冷たくされたり、うち1人との間でどちらがスカートが似合うかのアンケートをされたりした。
精神的苦痛から、女子児童は5年生となった16年12月から4カ月間、不登校となった。
報告書では学校の対応について、他の児童への聞き取りを行い、謝罪の場を設けるなどしたが、女子児童の内面や心情にまで踏み込んだ指導や援助が足りなかったと指摘した。
さらに、学校が市教委へ連絡したのが、対応を始めてから約7カ月後だった点を問題視。
校長のいじめへの危機意識に「疑問が残る」とした。
いずれの調査でも被害児童の訴えを裏付ける証拠がなく、いじめと認定できなかった行為もあったが、報告書では内容を明記。
1件目の事案では女子児童の上履きにゴキブリの死骸が入っていたこともあった。
報告書は「いじめがなかったことを認定したのではなく、事実認定が困難だった」と説明。
再発防止にあたり、市教委の学校への早期介入、学校・市教委・スクールソーシャルワーカーら専門家によるチームでの支援などが重要とした。
市教委が調査している重大事態は新たに市立小での2件が追加され、計10件となった。
〔2018年9/18(火)カナロコ by 神奈川新聞〕
横浜市立中いじめ2件初公表 組織対応「不備」も
横浜市教育委員会は2日、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態の調査の結果、市立中学校2校にいじめがあったと認定する報告書を明らかにした。
うち1校は被害生徒から相談があった当初にいじめとして認知しておらず、組織的な対応が不十分だったと結論付けた。
原発いじめ問題を受け、市が独自に作成したガイドラインに基づき公表版を公開したのは初めて。
同日の市教委定例会では新たに2件の重大事態の調査に入ることも報告され、事案は計12件となった。
報告書などによると、2016年11月ごろに当時中学1年の女子生徒が、クラスと部活動が同じ女子生徒3人から無視や悪口などの嫌がらせを受けた。
翌17年当初には不登校や別室登校となり、1人の生徒から受けた無料通信アプリLINE(ライン)のメッセージに傷ついた末に転校した。
被害生徒は16年秋以降に2回、担任と部活顧問に相談していたが、学校は保護者からの訴えでラインの件が発覚するまでいじめと認識しておらず、報告書は「(該当校の教員らで構成する)学校いじめ防止対策委員会を中核とした組織的対応が必要だった」と指摘した。
別の中学では、16年、当時1年の男子生徒が同学年の男子生徒からラインのグループで序列付けされるなどし、「殺す」といった暴言や靴でたたく暴力を受けた。
他の生徒も含め5人でゲームセンターなどで遊んだ際は数万円を複数回支払わされた。
具体的な金額や回数は「双方の主張が異なっている」(市教委)などとして明らかにしていない。
被害生徒は6日間学校を欠席した。
調査はそれぞれ、学校いじめ防止対策委に弁護士や臨床心理士などを加えて実施。公表版はいずれも、学校名や生徒の性別、事案の詳細を明らかにしていない。
2日から半年間、市教委のホームページに掲載する。
〔2018/3/3(土)カナロコ by 神奈川新聞〕
小学生対象の障害児教育 突出した能力発掘へ ◆横浜市教委 10月から指導開始
横浜市教育委員会は、発達障害などで障害の度合いに応じて通う通級指導教室や個別支援学級の小学生から、
特定分野に突出した能力がある児童を選抜して才能を伸ばしたり、能力の発揮を手助けしたりする特別教育事業を始める。
四月から対象となる児童十人ほどの保護者に声をかけ、十月から指導を始める。
(志村彰太)
市教委などによると、自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害や知的障害のある人は、計算や記憶など特定の分野に卓越した能力を発揮する場合がある。
ただ、現状の市教委の取り組みは、学校生活で感じる困難を克服するための教育や支援にとどまっていた。
近年、こうした子どもの才能を引き伸ばす教育が全国的に広がり、二〇一四年から東京大先端科学技術研究センター(先端研、東京都目黒区)と日本財団(港区)が「異才発掘プロジェクト(ROCKET)」を開始。
市はこのプロジェクトを参考にする。
市教委職員や学校教員の推薦で児童を選抜。
保土ケ谷区の特別支援教育総合センターに週一回、通ってもらい、得意分野に絞った教育や、自分の能力を発揮するために必要な考え方や振る舞いを教える。
教員が児童の最寄りの小学校に出向くことや、外部指導者を呼ぶことも検討している。
市教委の担当者は「試行錯誤が多いと思うが、一年間やってみて成果発表の機会を設けたい」と話した。
異才発掘プロジェクトの生徒たちを指導する中邑教授(中)=東京都目黒区で
◆社会で必要な「下地」学ぶ 先端研などのプロジェクト
先端研と日本財団が展開する「異才発掘プロジェクト(ROCKET)」は今年で四年目で、子どもに自身の弱点をはっきり自覚させながら、得意分野を発揮するために社会で必要となる「下地」を教えている。
二月中旬、全国各地から選抜された中二~高一の七人が先端研に集まり、プロジェクト代表の中邑賢龍(なかむらけんりゅう)教授(人間支援工学)の教えを受けていた。
生徒たちは事前に、モデルハウス内の壁を塗る作業をしており、今回の課題は自分たちが使ったペンキやテープの量から、かかった費用を推計することだった。
「二万円」「四十四万円」-。
スタッフらがペンキ一缶の値段などヒントを与えるが、生徒たちの答えはバラバラ。
中邑教授は「君たちはこういう計算が得意じゃない。
社会で生きていく上で、間違った請求書を書いたら大変。情報を聞き取ってメモする力も必要だ」と諭した。
中には大学レベルの数学ができる生徒もいるが、現実世界の計算となると途端に苦手になる子もいるという。
プロジェクトは「異才発掘」と言っても、得意分野を集中的に教える「英才教育」ではない。
中邑教授は「うちで教えるのは、画一的な評価軸の世の中に負けるな、ということ。
それから多様な評価軸を示して、自分の能力を肯定し好きなことをとことんやれる道筋をつくる」と狙いを語る。
これまで、三期生まで計六十人を選抜した。
生徒の多くが公教育になじめず、不登校になっているという。
プロジェクトは隔月で数日間開く教室と、第一線で活躍する著名人の講義、海外に行くこともある体験型プログラムなどがある。
二〇一七年度から同様の取り組みを始める横浜市教委は、異才発掘プロジェクトを参考に今後の計画を詰める。
市教委の担当者は「できれば中邑教授とも連携したい」と秋波を送る。
中邑教授は「公教育で同じ取り組みをやるには限界があると思う。協力できるところがあれば」と話している。
(志村彰太)
〔2017年3月5日 東京新聞TOKYOWeb【神奈川】〕