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統合失調症

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2018年6月29日 (金) 14:26時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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統合失調症

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周辺ニュース

ページ名統合失調症、、(生活困窮者のニュース)
生活保護が命綱、幻聴に悩む31歳男性の苦境
少年院や刑務所に複数回にわたって収容されたことがあるというコウキさん(編集部撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。
そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。
本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
今回紹介するのは、「現在、生活保護受給者です。仕事もドクターストップされていてできません。非常に生活苦で困っています」と編集部にメールをくれた31歳の男性だ。
■四方八方から聞こえてくる声
「コウキ、コウキっ!  こっち来いよ」「お前なんか死んじまえ」――。
深夜、東京都内にあるネットカフェの一室。最初は店員に呼ばれたのかと思ったという。
しかし、違った。コウキさん(31歳、仮名)が幻聴に悩まされるようになったのは、今から5年ほど前。
行く当てがなく、ネットカフェで寝泊まりしていたときだった。
四方八方から聞こえてくる声は、男性であることもあれば、女性であることもあった。
たいていは罵倒や悪口だったという。
「毎晩2~3時間しか眠れない日が続いていたんです。そこにヘンな声まで聞こえてくるようになって……。俺の頭がおかしくなったのかと思いました」。
仕事ができなくなり、たちまち持ち金が底をついた。このため、生活保護を申請。
窓口のケースワーカーに幻聴について相談したところ、医師の診察を受けるよう勧められ、そこで統合失調症と診断された。
「そんな名前の病気があるんだ、と思いました」。
ここ数年は、生活保護を利用しながら、行政の保護施設などで暮らしてきた。
投薬により幻聴は収まったが、不眠は処方薬を変えても一向に改善されない。
コンビニエンスストアで働いてみたが、体力が持たず、続かなかった。
最近は、担当医から「睡眠不足で働くと、事故やケガにつながるから」と仕事に就くことを止められているという。
首都圏のある地方都市で育った。幼い頃に両親は離婚、父親が兄とコウキさんを引き取った。
元はいわゆる荒れた地域で、通っていた公立中学校では、他校の生徒たちが集団で押し掛けて暴れたり、正門前でパトカーが待機したりしている光景が当たり前だったという。
コウキさんはその中学校でいじめに遭った。殴られ、蹴られ、カネを脅し取られる――。
「河川敷で(同級生たち)10人くらいから『死ね』『消えろ』と言われて、川に突き落とされました。二の腕とか、背中とか、いつも(殴られてできる)青タンがありました。いじめのきっかけですか?  本当にわからないんです。でも、俺以外にターゲットになっていた子も特に理由なんてなかった。子どものいじめなんてそんなものだと思います」
どこかひとごとのような、覚めた口調で振り返る。
家から10万円を持ち出した時、周囲の大人たちもいじめについて知るところとなった。
しかし、担任教諭は「そんなのお前が悪いんだろ」と言っただけ。
いじめられるお前も悪いという意味なのか、脅しに屈するお前が悪いという意味なのか――。今もわからない。
学校側はコウキさんに保健室登校をさせたが、いじめを止めてはくれなかった。彼はついに不登校状態に。
後に自分のことを統合失調症と診断した医師からは「発病の原因はこのときのいじめにあるのではないか」と言われたという。
「学校が唯一熱心にやってくれたことは、俺を転校させることでした」とコウキさん。
結局、別の中学に転校。その後、定時制高校に進むも、数カ月で退学した。
「(学力水準が低い学校で)いつもクラスの半分以上が欠席。先生もしょっちゅう授業を自習にしちゃう。だったら、行っても意味ないなって……」。
父親が買ってくる食料品などにはたいてい値引きシールが付いており、「貧乏な家だったと思います」。
一方で大学に進学しなかったのは「俺の勉強ができなかったから」という。
■ミスをするたびに「損害分」が給料から天引き
高校中退後は、アルバイトとして働いた。中でもコンビニは、セブン-イレブンやローソン、ポプラなどあらゆる店舗に勤めたという。
そこで横行していたのは、ミスをするたびに「損害分」が給料から天引きされたり、罰金として徴収されたりする悪しき習慣だった。
飲料やデザート類を補充中に落として缶やケースをへこませたとき、レジの金額が売り上げと合わなかったとき、万引きによる被害が生じたとき、ホットスナックなどを入れ忘れたとき――。
そのたびに相当額を給料から差し引かれるのだ。その額は月3万円に上ったこともあった。
コンビニのアルバイト経験者からは、給料からの天引きや罰金徴収、商品の買い取り強制といった話はたびたび耳にする。
しかし、仮にミスがあったとしても、給料からの天引きは違法である。
また、損害賠償請求も、労働者側に相当の過失がなければ認められない。
「大学や専門学校が多い地域の店舗では、込み合う時間帯によく万引きをされました。でも、人手が少ないので、店内を見回る余裕なんてない。人を増やさないかぎり、被害は防げないのに、いつも俺らバイトが被害額を(折半して)負担させられました」
長時間労働を強いられた職場もあった。
2週間休みなしや、深夜から翌日夕方までの連続勤務はざら。
一度出勤中に過労で倒れ、救急車で搬送されたことがあった。
このときは店長から携帯に連絡があり、「早く来い。救急車で連れてきてもらえ」と怒鳴られたという。
見かねた救急隊員が携帯を取り上げ、逆に店長をしかりつけたので、コウキさんは病院で治療を受けることができた。
しかし、後日、店長から、この日は急きょ派遣スタッフで穴埋めをしなければならなかったと言われ、「罰金」2万円を請求された。
私が、労働基準監督署や個人加入できるユニオン(労働組合)に相談しなかったのかと尋ねると、「そういう方法があることを知りませんでした」という。
■「おカネがなくても入居できます」
これ以上、地元にいてもろくなことがない、環境を変えたい――。
20歳を過ぎ、そんなことを思っていた矢先、SNSで都内のあるゲストハウスが「おカネがなくても入居できます」という旨の宣伝をしているのを見つけた。
着の身着のままで足を運ぶと、管理人から「まず生活保護を受けてください。それが入居の条件です」と説明された。
言われるまま、自治体の窓口で生活保護を申請。
担当者からは、申請までの経緯を尋ねられたものの、働くよう促されることなどはなく、支給はすんなりと決まったという。
コウキさんはしばらく月十数万円の生活保護を受け、ゲストハウスはそこから家賃を徴収した。
しかし、支給日に窓口で出会うのが高齢者や身体の不自由な人が多いことに気が付き、しだいに健康な自分が生活保護を利用することに「うしろめたさ」を覚えるようになったという。
このため、コンビニで働き始めたが、過重労働のせいで体調を崩して辞めた。
失業中、ゲストハウス側から「ハウスの清掃をするなら、家賃を相殺してあげる。ただし、役所には内緒にするように」と言われた。
違和感を覚えながらも、従ったという。
典型的な貧困ビジネスである。
ホームレスや失業者に声をかけて生活保護を申請させ、法外な家賃や食費を搾取する――。
コウキさんが東京に移ったちょうどその頃、こうした共同住宅やゲストハウスが社会問題になり始めていた。
私がそう指摘すると、コウキさんは戸惑うようにこう言った。
「生活保護の仕組みも意味もよくわからなかったんです。初めてのことだったし。あのときは、ずいぶん簡単におカネがもらえるんだなと驚きました。今考えてみると、申し訳ないと思います。でも、積極的に貧困ビジネスの片棒を担いだ、というわけじゃないし……」
コウキさんはこれまで恐喝や放火未遂などで、少年院や刑務所に複数回にわたって収容されたことがあるという。
バイト先の上司から受けたパワハラの仕返しにカネを脅し取ったり、給料天引きに嫌気が差してコンビニを辞めた日、むしゃくしゃして段ボールに火を付けたり――。
「今は後悔と反省しかありません」。
10年前、コウキさんが地元を離れたいと思ったのは、刑務所を出所した直後。
犯罪を繰り返すにつれ、父親や兄との関係が悪化したからでもあった。
5年前にネットカフェで初めて幻聴が聞こえたのも、刑務所から出たばかりのことだったという。
一方で、コウキさんの物腰や口調は終始穏やかだった。
喫煙者と聞いていたが、私がたばこを吸わないと知ると、長時間にわたる取材にもかかわらず、1度もたばこに火を付けようとしなかった。
■「生活保護は俺の命綱です」
コウキさんは「ストレスを限界までため込んで、爆発するところがあるみたいです」と自身を分析する。
そして、家族への気持ちをこう打ち明けた。
「父親からは『いつか人を殺すんじゃないか』とあきれられたけど、俺からは(育ててくれたことへの)感謝の気持ちしかありません。
兄は、連絡先を聞いても教えてくれません。でも、それも俺のせいだから、仕方ないです」
取材中、コウキさんが薄い色が入った眼鏡を外し、目元を見せてくれた。どす黒いクマがあった。
「昨日も眠れなかったんです。昼間は頭が痛くて、気持ちが悪くなります。働けない体になって初めて生活保護がどんな人に必要な制度なのかわかりました。生活保護は俺の命綱です」。
誰のせいなのか、という話をするならば――。
彼が犯した罪は別にして、悪いのは、いじめの加害者であり、それを放置した学校や教師であり、アルバイトから搾取する会社であり、生活保護を食い物にする貧困ビジネス業者である。
不当な働き方を強いられたときには、行政機関や労働組合に相談するという手段があるし、生活保護の利用中に収入申告しないことは不正受給である、と指摘することは簡単である。
しかし、彼はこれまでの人生の中で、どこでそれらを学べばよかったのか。
つい先日、コウキさんは担当ケースワーカーと相談し、行政の保護施設から賃貸アパートへと引っ越した。
社会復帰に向けた第一歩である。
まだカーテンもない室内は、どこか心もとない。室内にあるのは、布団一式とわずかな衣類だけ。
隅にはコンビニ弁当の空箱が5、6個積まれていた。
洗濯機がなく、手洗いして窓際に干したというタオルからは生乾きのにおいがする。
とにもかくにも、コウキさんの新たな生活が始まった。
本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
〔2018年6/27(水)東洋経済オンライン 藤田和恵 :ジャーナリスト〕

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