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Center:1997年11月ー不登校は教育制度を変える

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2018年2月7日 (水) 18:52時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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不登校は教育制度を変える

〔『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』の「はじめに」の部分。
1997年11月、東京学参発行。2011年8月転載〕

この本の出版を企画した最初の意図は、後期中等教育(高校教育はその中核をなす)を構成する、さまざまな制度や実質的な取り組みを紹介することでした。
“高校教育の複線コース総ガイド”とでもいう企画でした。
というのも不登校生や高校中退生の進路の相談をしている私は、全日制高校だけが高校教育ではない、もっと違う方法があることを日常的に紹介しているからです。
それらは制度として研究され、いろいろな形で、学校として、教育機関としてすでに実在しています。
しかし、書名は『不登校・中退生のための高校・同等学校ガイド』としました(実は初めの意図が完成まで影響していて、一部の教育機関は「不登校・中退生のため」とは言い難いものも含まれています)。
理由がいくつかありますが、“いろいろな形”というなかには、まだ見きわめきれないものがいくつかあること、“複線コース”という表現になじみがないこと、わかりづらいことが、特に大きいな理由だと思います。
いまなら、これならわかるだろうと判断して、この書名を選びました。
私には、単線型学校制度(小学校→中学校→高等学校)と複線型学校制度を比べて、二者択一的にどちらがいいのかを判定することはできません。
ある本によると、複線型学校制度は、「エリート学校系統と民衆学校系統に分断され、戦前の日本のように身分・階級・性別などで進路を予め決めてしまう弊害がある」ので、戦後の教育改革により改められました。
その結果生まれた単線型学校制度は「教育の機会均等に功を奏した反面、受験競争の激化を招いた」ということです(『教育問題情報事典』紀伊国屋書店、1993年)。 
これを文言のそのまま受け入れるわけではありませんが、問題の所在の中心点を衝いているように思います。だから複線型あるいは文部省のいう“多様化”の推進は、反動的な教育制度に向かうもの、という批判も理由のあることだと思います。
その一方、全日制高校に入れない、退学をしたいという生徒の身になって現実をみれば、複線型が反動的方向にすすむから単線型で遂行すべき、という意見にも同意しかねます。
戦前の反動的教育制度の期間を含めた明治以来の百年を超える学校制度全体が、問い直されているのだと思います。
高校教育(より正確には後期中等教育)のところで複線化していくと本当に戦前のような社会階層に分かれた学校選択がすすむのだろうか? 
そんなことに関係なくすでに学校選択は社会階層によって相当程度分断されているのではないのか?
  単線型学校制度だけが理由で受験競争が激化したとは思えないが、ではこの競争の激化はどうすればいいのか? 
不登校生や高校中退生には後期中等教育をどのように保障していくのか?
……私にはこれらのことが疑問というよりは切迫したテーマとして提示されています。
不登校生や高校中退生の多くが、その高校教育のところでひっかかっているために社会的なハンディキャップを負う状態になっているのです。
この若者たちの当面する問題を解決しながら進むしかないのです。
この打開の方策を政府や自治体に求めていくやり方も一つの方法です。
私はそれを行政的(ofiicial)解決策と位置づけます。
しかしそれが唯一の道ではないし、唯一の道と考えることは無策につながるとさえ思います。
さいわい教育機関で働いている方の発意によって、あるいは有志の方の努力によって、すでにいろいろな形で対応がされています。
私はそれを社会的(social、public)解決策であると位置づけます。
ここに紹介した高校・同等学校は上の二種類の方策として生み出されたものと考えています。
多くの人たちの力で、ともかくここまでたどりついたのです。
その努力を認めないわけではないし、私なりに正当に評価しているつもりですが、現状に満足しているわけではありません。
受け入れているといっても受け入れの程度や内容には満足していません。
本当のところは受け入れようとしない圧倒的多数の全日制高校にはそれ以上に満足していません。
これは不登校生や高校中退生に日常的に関わっている人たちの共通する気持ちであろうと思います。
しかし私はそういう不登校生や高校中退生に希望を見出しています。
真実のところで日本の教育制度のもつ保守性を打破するのは、彼ら彼女らだと思います。
自らは困難な状態におかれ、なかには文字通り身動きもならない状態にいるなかで、彼ら、彼女らは意識を超えた大きな働きをしています。
彼ら、彼女らは日本の学校制度だけでなく、それを生み出し、支えている社会制度そのものを揺さぶっているのかもしれません。
その彼ら、彼女らとその家族が、この情報本を利用されるように心から願っています。
紹介する本はこちら⇒◎

 

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