レンサ球菌咽頭炎
レンサ球菌咽頭炎
咽頭炎で強迫性障害やチックに レンサ球菌だけでなく、非レンサ球菌も関連
レンサ球菌咽頭炎は、突然の発熱と激しい喉の痛み、全身の倦怠感が襲う感染症だ。
冬に多いイメージだが、実は初夏と冬に2つの発症ピークがあるという。
このレンサ球菌咽頭炎が、精神障害の発症に一部関連する、と過去の研究で報告されている。
そして今回、デンマークのコペンハーゲン大学などの研究グループにより、レンサ球菌はもちろん、それ以外の咽頭感染でも強迫性障害やチック障害などの精神障害の発症リスクが上昇することが分かったという。
詳細は、5月24日発行の医学誌「JAMA Psychiatry」(電子版)に掲載されている。
100万人超を対象とした大規模研究
強迫性障害は、自分が望まない不快な考えが頭から離れず、その苦痛や不安から逃れようと衝動的に行動してしまう精神疾患。
過剰に手を洗う、鍵を閉めたか何度も確認せずにはいられないといった人は、強迫性障害が疑われる。
また、チック障害は、まばたきや首振り、鼻鳴らしなど、突発的に不規則な体の動きや発声を繰り返してしまうもの。
小さな子どもに多く、自然に治ることも多いと言われている。
強迫性障害もチック障害も、原因ははっきり解明されていない。
しかし、まれにレンサ球菌の感染が関与していると考えられるケースがあり、そうした場合を「レンサ球菌感染性小児自己免疫神経精神障害(PANDAS)」と呼んでいる。
これまで実施されてきたPANDASに関する研究は、規模が小さい上、結果もまちまちだった。
そこで研究グループは、レンサ球菌の咽頭感染と、強迫性障害やチック障害を含めた精神障害の発症リスクとの関連について調べることを目的に、今回の研究を実施した。
まず、研究グループは、デンマーク全国登録簿から、18歳未満の子ども106万7,743人(男子54万7,922人、女子51万9,821人)のデータを選び出し、最長で17年間追跡した。
また、デンマーク国内のさまざまな登録データを使って、レンサ球菌の検査状況や、精神障害、強迫性障害、チック障害の診断状況を確認した。
その結果、対象となった子どものうち63万8,265人がレンサ球菌の検査を受けていた。
そのうちの34万9,982人が、少なくとも1回はレンサ球菌「陽性」の結果だった。
レンサ球菌検査で「陽性」と出た子どものうち、実際に何らかの精神障害を発症したのは1万5,408人。
その発症リスクは、「陰性」の子どもに比べ1.18倍高かった。
非レンサ球菌でもリスク増
また、レンサ球菌検査が「陽性」だった子どもは、「陰性」の子どもに比べて、強迫性障害の発症リスクが1.51倍高かった。
同様に、チック障害の発症リスクは1.35倍高かった。
そして、非レンサ球菌性の咽頭感染だった場合と比較したところ、レンサ球菌性咽頭感染の発症後に何らかの精神障害、強迫性障害を発症するリスクは高まった。
しかしながら、非レンサ球菌性であっても、咽頭感染症にかかった後に、何らかの精神障害、強迫性障害、チック障害を発症するリスクは上昇していたという。
研究グループは、「レンサ球菌性咽頭感染症を発症すると、精神障害、特に強迫性障害とチック障害のリスクが上昇することが示された。
しかしながら、非レンサ球菌性であっても、レンサ球菌性ほどではないものの、咽頭への感染で強迫性障害の発症リスクが高まることが分かった」とし、「小児における急性発症の精神神経症候群を診断する際の判断材料となりうる」と本結果を評価した。
〔あなたの健康百科編集部 2017年06月22日〕