抗菌薬の不適切使用
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半分は不要な抗菌薬。処方医師の特徴は? カナダの風邪症状の高齢者18万人を分析
感染症の原因となる細菌を殺したり、その増殖を抑制したりする働きを持つのが抗菌薬だが、効果が期待できないにもかかわらず風邪などの非細菌性の感染症に対して抗菌薬を処方する医師は依然として多く、こうした抗菌薬の過剰処方は大きな問題となっている。
カナダの研究グループが、非細菌性の急性上気道感染症患者の半数に抗菌薬が処方され、抗菌薬を不適切に処方する医師には幾つかの特徴があると医学誌「Ann Intern Med」(2017年5月9日オンライン版)に発表した。
抗菌薬の不適切使用は今や深刻な問題
風邪を早く治すため抗菌薬の処方を望む人も多いが、風邪の原因のほとんどはウイルス。抗菌薬は効かない。
不要な抗菌薬を飲むことで、かえって耐性菌などの深刻な問題がでてくることもある。
抗菌薬が効かない薬剤耐性を持つ細菌が世界中で増加し、すでに、耐性を持つさまざまな細菌が確認されている。
さまざまなガイドラインで「非細菌性の急性上気道感染症に対して抗菌薬を使用すべきでない」とされているにもかかわらず、ウイルス感染に起因した気管支炎や副鼻腔炎、感冒症状などに抗菌薬が処方されることは珍しくない。
しかし、こうした抗菌薬の不適切な処方は副作用や医療費の増加、薬剤耐性菌の拡大などに関連することが指摘されている。
約半数に抗菌薬が処方されていた
本研究は、医師8,990人が風邪、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎・気管支炎、急性気管支炎のいずれかと診断した非細菌性の急性上気道感染症患者18万5,014人(平均年齢74.6歳)を対象とした。
抗菌薬を必要とする場合が多いがん患者や介護施設の入居者などの高リスク者は、研究対象から除外した。
初回の受診から30日以内に抗菌薬を処方された患者の割合を調査した。
抗菌薬とは、アミノペニシリン、セファロスポリン、マクロライド、フルオロキノロンの経口薬などである。
対象患者の診断で最も多かったのは風邪で53.4%だった。
次いで急性気管支炎(31.3%)、急性副鼻腔炎(13.6%)、急性咽頭炎(1.6%)が続いた。
なお、これらの抗菌薬が10日分を超えて処方されている例は、慢性疾患に対する処方である可能性が高いため除外した。
その結果、対象患者の46.2%(8万5,538人)に抗菌薬が処方されていた。
処方されていないグループと比べて処方されているグループでは「急性気管支炎の割合が高い(非処方19.3% vs. 処方45.3%)」「急性副鼻腔炎の割合が高い(同10.6% vs. 17.1%)」「過去1年間に抗菌薬の処方歴がある割合が高い(同27.7% vs. 34.2%)」といった特徴が認められた。
不適切な抗菌薬を処方する医師の特徴はー
処方した医師8,990人については、卒後11年以上24年以下の中堅または卒後25年以上のベテラン医師が80.7%を占めており、58.8%が男性で、21.3%がカナダまたは米国以外の国で医学教育を受けていた。
また、診察する患者数が1日当たり25人以上の医師が53.2%を占めていた。
分析の結果、卒後11年未満の医師と比べて、卒後11年以上24年以下の中堅医師および25年以上のベテラン医師では抗菌薬を処方する割合が高かった。
また、カナダ・米国で医学教育を受けた医師と比べて、これら2カ国以外で医学教育を受けた医師では抗菌薬を処方する割合が高かった。
さらに、1日当たりの患者数が25人未満の医師と比べて、25人以上の医師で抗菌薬を処方する割合が高かったという。
〔あなたの健康百科編集部 2017年06月06日〕