つだ小児科
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子ども医療費、助成広がる 131市町村、独自の通院費 /北海道
子どもの医療費の自己負担分に対し、助成を拡大する自治体が道内で増えている。通院医療費については6年間で3倍近く増加。多くの自治体が少子化対策や子育て支援の充実を強調するが、対応のばらつきや、自治体間の競争が過熱しているとの指摘もある。
□「小3まで」「22歳まで」対象様々
「はい、見せてね」。小樽市のつだ小児科(津田哲哉院長)で今月、かぜをひいて受診する市内の小学2年生中村一汰(いった)君(8)に母親の幸恵(さちえ)さん(40)が付き添っていた。一汰君の受診は2年生になって3回目。1年生の時も2~3カ月に一度は受診し、1回につき支払うのは薬代も含めて2千円ほど。それが8月からは千円以内になった。幸恵さんは「とてもありがたいです」。支払額が減ったのは、小樽市が8月から、小学生の通院費への助成を始めたからだ。患者(1人親世帯や生活保護世帯を除く市民税課税世帯)の自己負担額が3割から1割になる。対象児童は約3500人で、市はこの分の助成額を今年度は約4千万円と見込む。子どもの医療費のうち患者の負担分は、就学前が2割、小学生以上が3割だ。道内では全自治体が一律に道の補助を受け、入院は小学生まで、通院は就学前までの自己負担の一部を軽減。多くの自治体はさらに独自の制度を設け、患者の自己負担をゼロにしたり、減らしたりしている。道などによると、こうした自治体は2010年4月には179自治体のうち計45市町村で、助成する対象が「中学3年まで」が24だった。ところが今年4月時点では、少なくとも131市町村が対象を広げた。「中3まで」以上は全市町村の67%の120市町村で、南富良野町の「22歳まで」というのもある。120市町村のうち、24自治体は4月以降に対象を拡大し、今金町は就学前までだったのを一気に「18歳(高校3年)まで」に広げた。自己負担分について、町内の飲食店などで使える「地域商品券」などで還元する自治体も9町ある。厚生労働省の14年の全国調査では、「中3まで」以上に助成した自治体は、全市区町村の65%の1134市区町村だった。芦別市は今年8月、助成の対象を「小6まで」から「中3まで」に広げた。市内の中学生は177人で拡大分の予算は400万円を見込む。助成拡大は、昨年4月に初当選した今野宏(ひろむ)市長(68)の選挙公約だ。1958年のピーク時は7万5千人いた人口は、現在は1万4600人になった。今野氏は朝日新聞の取材に、理由を「子育て世帯の経済負担の軽減を図るため」と説明した。小樽市の場合も、森井秀明市長(44)が市長選の公約で、子育て支援策として「小学生までの医療費無料化」を掲げたことがきっかけだ。助成拡大は人口減少の歯止めや地域の担い手として、子育て世代に住んでもらいたいためだが、ある自治体幹部は「周りが高校生まで助成しているのに、うちだけ『助成は小学生まで』というわけにはいかない」と近隣との「横並び競争」だと打ち明ける。一方、道内の人口3万人以上の自治体で、小学生以上に助成しているのは旭川、函館、帯広など8市だけで自治体による「格差」もある。人口約17万人の苫小牧市では、昨年12月の市議会で、助成対象を「就学前」から「小3まで」に広げる条例案を一部の議員が提出。だが、新たに6千万円が必要で、「問題は財源」との理由で否決された。ある首長は「地域によって差があるのはおかしいという意見も根強い。一律に国が助成してくれるとありがたいのだが」と話す。
□有効性や費用対効果の分析必要
西村淳・北大公共政策大学院教授(社会保障論)の話
現状は「隣町が助成している以上、うちもやらないと」という競争になっていて、市町村が何のために医療費の助成をしているのかが、非常にあいまいだ。親や保護者が本当に求めているのは、地域に小児科がないことや医師不足を解消する「小児医療体制の確立」ではないか。「少子化対策」「子育て支援」という打ち出しもあるが、自治体は政策の有効性や費用対効果を分析した方がいい。
〔11月1日・貧困ネット、◆平成28(2016)年10月20日 朝日新聞 北海道朝刊〕