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生活保護問題対策全国会議

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2016年11月11日 (金) 13:42時点におけるMatsu4585 (トーク | 投稿記録)による版
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生活保護問題対策全国会議事務局

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司法書士 徳武聡子
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特集ワイド:生活保護受給者への医療扶助削減 「健康管理強化」は誰のための政策?
◇自治体が申請者圧迫の懸念も 病気予防指導に人手回るのか
一見するといい政策のようだが、なぜかひっかかる。
政府が生活保護を受ける人の健康管理を強化する方針を決めたことに、だ。
受給者の生活習慣病の発症や重症化を予防し、医療費抑制につなげるというのだが、貧困問題に詳しい識者に話を聞くと、誰のための政策なのかという疑問が拭えないのだ。
「この政策が貧困からの脱出にどう役立つというのか。病気だけに着目しても意味がありません」。
雇用や格差の問題を研究する和光大教授の竹信三恵子さんは、「健康管理の強化」にこう憤る。まず、政策を説明しよう。
受給者が医療機関を受診した場合、窓口での自己負担はない。
国と地方自治体が費用を負担しているからだ。
これが医療扶助だ。
ただ、厚生労働省の調査(2014年度)によると、受給者の43%は何らかの障害やけが・病気を抱えており、医療扶助費は生活保護費の約半分を占める約1兆7000億円に上った。
この問題は、安倍晋三首相が議長を務める経済財政諮問会議でも検討課題に上がり、昨年12月に医療扶助費の削減を決めた。
これを受け厚労省は今年7月、医師や自治体関係者らによる検討会を設置し、具体策を詰めている。
各自治体の福祉事務所は、既に通院中の受給者に対し、職員が自宅訪問したり電話をかけたりして通院や服薬の状況を確認している。
政府は今後、健康診断の結果などを活用し、生活指導を強化して生活習慣病の予防につなげたい考えだ。
受給者は一般の人に比べ、糖尿病や高血圧、さらに「予備軍」の割合が高いとのデータも提示した。
竹信さんは「『受給者には病気を抱えている人が多い』と聞くと、『保護に頼って体がなまっているのだろう』などといった偏見を強めてしまう恐れがある」と懸念する。
その上で、こう指摘した。「実際には病気やけがで仕事を失い、受給者になるケースも少なくありません。
受給者のためを思うなら、それぞれの健康状態を問題にするよりも、なぜ生活保護に追い込まれたのかを把握し、貧困から抜け出すための支援をすべきではないでしょうか」 もう一つの懸念は、健康管理を盾に自治体職員が、受給者や申請者を圧迫する言動を取りかねないことだ。
「『健診を受けなければ受給を認めない』と威圧するような指導を誘い出すのが心配」と竹信さん。
生活保護の現場では、一部の職員が「なんで働かないのか」と申請者を追い返したり、受給者に対し差別的な対応をしたりして、何度も問題になってきた。
厚労省保護課は「生活指導にどんな配慮が必要なのかも議論し、自治体に通知したい」と説明するが、
竹信さんは「健康状態を知られたくない、生活を監視されたくないという理由で、申請をためらう人が出てくるかもしれない」と心配する。
政策の実効性に疑問を抱くのは、ケースワーカーの経験があり、生活保護制度に詳しい関西国際大の道中隆(りゅう)教授だ。
「受給者の病気予防は見過ごされてきた。実現できればメリットがある」と一定の理解を示しながらも「現体制で病気予防の指導に人手が回るのか」と語る。
ケースワーカー不足は深刻だからだ。
厚労省によると、受給者は、1995年度の88万人が過去最低だったが、景気低迷を背景に増え続け、2014年度は過去最多の216万人に。
これに対し、ケースワーカーは1人当たり90世帯以上を受け持つ計算だ。道中さんは「現場は支給額の計算などで手いっぱい。
今でさえ、生活実態をつぶさに見たり、体調を把握したり、といったことはできていない」と説明する。
このような状況なのに、業務が拡大しても適切な対応は期待できないというのだ。
高齢者の貧困生活に光を当てたベストセラー「下流老人」の著者で、聖学院大客員准教授の藤田孝典さんも、今回の政策への疑問を隠さない。
貧困に苦しむ人々の生活相談に応じる活動の経験も交えて語る。
「国の社会保障費削減の流れの中で、生活保護費が減額され、受給者は食費などを切り詰めざるを得なくなっている。
そんな状況で『健康管理をしろ』と言うのは酷だ」
実際、食費や光熱費に充てる「生活扶助費」は、13年から3年間で平均6・5%減額された。
引き下げに反対する訴訟も全国で起きた。もちろん、社会保障費が増える中、「医療扶助費の削減も仕方がない」という意見もあるはずだ。
だが、田さんは「僕はむしろ、生活保護への支出がこの程度の額で済んでいることに驚きます」と語り、三つのデータを示した。
一つは、人口に占める受給者の割合「保護率」だ。
日本の14年度の数値は1・7%(厚労省調査)だったが、弁護士らでつくる「生活保護問題対策全国会議」の調べでは、フランスは5%台、ドイツやイギリスは9%台(いずれも10年)と、日本より高い。
また、国内総生産(GDP)の規模に占める生活保護(公的扶助)費の割合も、日本は先進国の中では低い。
経済協力開発機構(OECD)の07年のデータによると、加盟国平均が2・0%なのに対し、日本は0・6%。
米1・2%▽独3・3%▽仏4・1%▽英5・0%――と比べても、日本の公的扶助に対する支出は経済規模の割に少ない。
藤田さんが重視するのが、前出の全国会議が算出した「捕捉率」。
生活保護基準以下で暮らす世帯のうち、実際に受給している世帯の割合を示す数字で、07~08年時点で、日本18%▽独64%▽仏91%▽スウェーデン82%――だった。
「日本は生活保護を『恥』と感じ、受給しない人が多いことも一因ですが、必要な支援が十分行き渡っていないのです。
ここからさらに費用を削ること自体に無理がある」。
藤田さんはそう指摘した上で「健康管理の強化より、貧困対策を」と訴える。
「つまり『川上』の対策です。低額の年金で困窮する高齢者や安定した仕事のない若者は増えている。
住まいの提供や雇用対策などを進め、彼らが生活保護を受給せず、自立して暮らせるようにすること。
それが結局は生活保護費の削減につながるはずです」
受給者の生活は決して楽ではない。
それなのに「生活保護バッシング」がやまないのはなぜか。
竹信さんは「病気や災害などで突然、貧困に陥る恐れは誰にでもある。でも、今の日本はセーフティーネットが弱く『転落したら終わり』という、安心感のない社会。だから社会的弱者をバッシングして、その恐怖を見ないようにしているのではないでしょうか」と語る。
生活保護制度は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条に基づいて設けられた。
受給者の健康管理は、この理念を実現する道と言えるのか。
〔◆平成28(2016)年9月12日 毎日新聞 東京夕刊〕 
 

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