Center:2006年12月ー「読売プルデンシャル福祉文化賞」を受賞
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「読売プルデンシャル福祉文化賞」を受賞
情報検索の今後に役立ちます
〔『ひきコミ』第39号=2006年12月号に掲載〕
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2006年11月10日、「読売光と愛の事業団」から連絡がありました。
不登校情報センターの「不登校等支援者の情報検索制作」に対して2006年度読売新聞社の「読売プルデンシャル福祉文化賞」の奨励賞に選ばれたというものです。
受賞理由などは後日、正式に伝えられることになっています。
昨年度の例でみると、大賞(副賞100万円)が3団体、奨励賞(副賞10万円)が6団体です。今年も同規模だろうと思います。
この賞は応募によるもので、その応募書類をここに記載しておきます。
〔活動を始めたきっかけと活動内容の概要〕
不登校、ひきこもりの人と家族を支援しながら、全国の支援団体の情報収集と情報提供を、主に出版物の形で行ってきました。
出版物には『不登校・中学生のためのスクールガイド』(東京学参)、『登校拒否とカウンセリングルーム』(桐書房)、『不登校・引きこもり・ニート支援団体ガイド』(子どもの未来社)などがあります。
情報提供の方向を広げようとするなかで、ホームページを利用しようと考えつづけ、その実現に向けて動き出したのが2004年秋です。
ひきこもり経験者の中でホームページづくりに関わる人で、不登校情報センターのホームページに「多チャンネル」という名称の支援団体のウェブサイトに、全日制高校、定時制高校、通信制高校、カウンセリングルームなどに加えて、保健所、児童相談所、ヤングジョブスポット、ボランティアセンターなどの公共機関を追加し、現在約4000団体・機関の情報が入っています。
これらの支援団体の情報をさらに多面的に提供するために「イベント情報カレンダー」「新聞記事」「出版物」などの新たなウェブページを企画し、それらも充実しつつあります。
さらに、不登校、ひきこもりと家族の人からの問い合わせに答えるものとして、双方向の情報交換(情報提供)を可能にするための試みも始めました。
2006年に入ってからはアクセス者のうち、特に当事者の感覚をとり入れた「引きこもり生活辞典」、文通を求める個人情報誌「ひきコミ」のweb版なども立ち上げています。
〔活動を通して得た成果〕
対人関係が不安で、自己否定感が強い人 たちですが、ホームページづくりのなかでも自分のできる部分を分担し、柔軟なシステムのなかで、ゆっくりした時間帯の中では、業務に就くことは可能です。
この取り組みが積み重なれば、引きこもりの人たちによる独自の職場づくり=就労ができると確信できました。
〔今後の活動予定と抱負〕
将来は、不登校、ひきこもり、ニート、高機能・広汎性発達障害を中心とするあらゆる支援団体・機関、当事者グループの情報に関するインフラスラクチャー的役割をめざします。
特に心理専門職と当事者がめぐり合う必要性は高まっており、その必要性にこたえるものをつくりたいです。
〔推薦者/推薦理由〕
NPO法人不登校情報センターは、設立以来、不登校や引きこもり等、対人関係に不安を持つ人と、その家族に対する支援を行うとともに、広く区民に対し、不登校や引きこもり等への理解を求める活動を行ってきました。
中でも不登校や引きこもり等に関する相談や、ホームページを活用した情報収集・情報提供は、不登校や引きこもり等の当事者や家族にとって、自立・自活への取り組みの一つとして、大きな役割を果たしています。
またこのほかに、不登校やひきこもり等の人への訪問サポートや、引きこもり経験者等の就業活動や仕事起こしの支援など、不登校や引きこもり等の人たちが、自立した社会生活を送ることができるような活動に幅広く、取り組んでおり、地域の福祉向上に対する功績も顕著であることから、今回の応募にあたり、強く推進いたします。
山下美實(社会福祉法人 葛飾区社会福祉協議会 常任理事)
この推薦をお願いするためにHさんと一緒に行ったときのことを思い出しました。
「大賞になったらどうしますか?」とHさんがきいてきました。もちろん半分以上は冗談ですが、私も一瞬おろかにも「あっ、可能性としてはそれもあり得るな」と思いました。
しかし「それほどのものでもないだろう」と答えました。
それは想定外のことでしたし、奨励賞をもらえるかどうかさえ白紙だったわけですから・・・。
何事も欲張りすぎてもよくないようです。それは焦りになりますから。
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この奨励賞の受賞の意味は小さくないと思います。
受賞理由はまだわかりませんが、私の側には、2つの面で有効に働きます。
これは副賞の10万円以上の意味があります。
これは助成金ではない点も大事な面です。
1つは、いくつかの事業に対する助成金申請を行っています。
これらに有効に作用する可能性を感じます。
それはこの賞が助成金ではなく活動全体を評価しているからです。
とくに、不登校情報センターの仕事起こしでは“情報提供”が活動内容の中心です。
ここが評価されたわけです。
読売新聞社が直接に関わっていますから、何らかの形で新聞発表になるでしょう。
電話連絡があったときも「この件に関して記者が取材に行きます」といっていました。
ですから「多チャンネル」等の不登校―ひきこもり支援団体の情報提供ウェブページが広く知られる機会になるのです。
もう1つは、不登校情報センターのホームページを“収入を生み出す装置”すなわち生産財にする取り組みを有利に展開できることです。
この取り組みの基盤である情報提供方式が一つの社会的な評価を得たという前提ができたことになります。
この条件をどう生かすのかは、私たちの今後の取り組みにかかっているわけですが、強力な支柱ができた感じはします。
たとえば「不登校・引きこもり・発達障害等の相談先探し情報インフラ」という企画を準備しています。
この相談先はおそらく数千件くらいあると考えて調査中です。
こちらで「ここは何らかの対応・支援をしている」とわかっていても、それに相手がどう答えてくれるのかは、こちらの信頼性によります。
その信頼性は、内容面で安心できるのか、継続的にやっていけるのか、そこに掲載すれば自分の相談室にとって現実に有利に働くのか、などいろいろな要素を含むものです。
これら全体について一つの評価を、いわば社会を代表する第三者機関みたいな方式で表わしたのが、今回の「読売プルデンシャル福祉文化賞」の受賞です。
不登校情報センターにとっては、この条件をどう有効に生かした取り組みができるのかが問われていくことになります。
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不登校情報センターのホームページを、情報提供の形で本気で活用し始めたのは2004年秋のことです。
そのときは情報本『不登校・中退のためのスクールガイド』[2005年版]で情報収集したデータを元にWさんに苦労してもらいました。
現在のこのホームページへのアクセス数(カウント表示)の出発は、その作業が一段落した2004年11月21日になっています。
このころが、ホームページへを不登校情報センターの取り組みの枠を超えた、支援団体(当時はフリースクールなどの教育系)の情報提供に活用し始めた時期です。
それから1年後の2005年9月、不登校情報センターの事務所が現在のところに移転した直後に、新たな試みを始めました。
「検索サイト制作グループ」をつくり、このホームページを「生産財」(収入になる装置)に育てようと考え始めました。
その意味するところは、NPO法人不登校情報センターを、引きこもり経験者が収入を得、生活手段にできる職場にする方向のなかで、ホームページを共通の土台にしようとすることです。
そのうえで、メンバー一人ひとりが自分の得意分野、あるいは趣味や関心を、モノやサービスの形にして、共同のSOHO(ミニ事務所)にすることです。
昨年9月~10月ごろ、この「検索サイト制作グループ」を立ち上げるときに私が話したことは、2006年度内に「それが成り立つかどうか」を判断できる状態にもっていきたいというものでした。
今年もあと2か月足らずになりました。
そこにとびこんできたニュースが、今回の受賞ということになります。
しかし、私はこの受賞を特に当てにしていたわけではありません。
ホームページはかなり充実してきました。
アクセス数は今日では月間9000件に達し、1年前の4倍程度になりました。
ホームページへのリンクも 100件以上が有料です。
トップページの広告も5件です。
そのほかいくつかの企画をつくり、ホームページ上に生かされています。
これらがホームページを生産財に育てているのです。
このホームページの生産財に育っている過程を、今回の受賞は評価してもらった、ともいえるわけです。
この道をさらに進み、充実させることに確信が持てるのです。
今できることを地味にコツコツと積み上げることによって、道は開けてくる一つの証拠のような気がします。
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不登校情報センターの理事会で話し合うために私は、1つの提案を行っています。
基本的な考え方は以上に述べたことと同じですが、要点を列記しておきましょう。
(1)「ホームページを生産財にする条件づくり」の目標―これは4点あって、1日当たりのアクセス件数を1000件にする。
トップページの広告を10件にする、不登校情報センターにホームページを使用するために支払いをする支援団体を1000団体にする。
そして「これらの支援団体にとって役立つ、ホームページ上の企画を新たに提案していく」というものです。
(2)このホームページを「生産財」にするには、その条件づくりに投資的な要素が必要です。
現在は「あゆみ仕事企画」とホームページ制作グループが、低収入のな かで作業をつづけています。
この社会的な意味を考えたときには、これは社会的な支援を必要としています。
これを現在は「助成金」申請の形でアピールするこ とが可能であると考え、いくつかの助成金申請をしています。
(3)「あゆみ仕事企画」のメンバーが各人の特技やできる 分野を具体化し、将来はSOHO化する準備をすすめる。
SOHOとは小規模・家内的事業所というほどの意味です。
いま、内容の十分・不十分はともかく「あゆみ仕事企画」や「お仕事・引受中」のウェブページに載っているものには、次のものがあります。
・ホームページ制作、「カット・アイコン」の発行、経理事務の補助、テープ起こし、体験発表(ミニプロダクション)CG制作、ヘルプデスク業務。
このうち(1)項と(2)項は、主に私が関与することになります。
(3)項については、私の関与は受け身的なものです。
できる人が積極的に提示してこないかぎり、何の前進もないと思います。
行きすぎになってもいい、一人の思いすぎにすぎなのかもしれない。
それでもそれを提示してみなくては、事態は変われません。
そういう全然、まとまらないものにあってもいいので、それをもって相談に来ることを期待しています。