ニュースタート事務局
ニュースタート事務局
運営団体 | 認定NPO法人ニュースタート事務局 |
代表者名 | (役職名 代表)北澤久実 |
所在地 | 〒279-0011 千葉県浦安市美浜1-3 ※〒272-0122 市川市宝2-10-18 事務局 |
TEL | 047-307-3676 |
FAX | 047-307-3687 |
URL | https://www.newstart-jimu.com/ |
特色(方針・創立趣旨) | 若者の再出発を応援する「家族をひらく」活動を1994年から開始。家族だけの閉ざされた人間関係から離れて他人と繋がることと(親離れ子離れ)、体験不足を補います。人間体験・社会体験・仕事体験を通じて自然と仲間ができ、人の役に立つ喜びを感じます。この希望が就労への大切な原動力となり、まずは嫌でない仕事を見つけて再出発を果たしていきます。「仲間・働き・役立ち」でのニュースタートを応援しています。 |
活動内容・活動日・活動形態 | ①家族をひらく訪問活動(レンタルお姉さん・お兄さん) 不登校・ひきこもり・ニート等社会とのつながりを失った若者の自宅を訪問し、就学や就労など次のステップへの橋渡しを担う。全国どこでも訪問サポート。 |
スタッフ(運営体制) | 常勤14名、非常勤7名、ボランティア10名、その他31名 |
利用料金 | お問い合わせください |
見学の時期・受入れ相談・予約方法 | ・無料見学会(毎月第2、第4土曜日) ・なんとかしよう親の会(不定期) ・個別相談(毎月第2、第4土曜日) ・オンライン個別相談(毎月第2、第4土曜日) ・保護者面談(日程は相談に応じて) ・いずれも、電話にて資料請求後、要予約。 |
対応者・支援者 | 心理専門職(カウンセラー)、当事者・体験者、その他(専任スタッフ) |
支援対象者のの想定年齢と男女別 | 男女どちらも可、原則18歳~ |
必要経費 | お問い合わせください |
出版物 『希望のニート』 『勝ち負けから降りる生き方』 『ニートがひらく幸福社会ニッポン』 |
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情報更新年月 | 2021年5月 |
「引きこもり」の9割は外出 多様な実態綴った支援者の思いとは?(レビュー)
久世芽亜里・評「一筋縄ではいかない」
『コンビニは通える引きこもりたち』 久世芽亜里[著]新潮社
「引きこもり事情」とその対処法を解説した新書『コンビニは通える引きこもりたち』が刊行。
引きこもり支援のNPOで働く久世芽亜里さんが、本作を執筆した想いを語った。
* ***
引きこもりと言えば、自室や自宅にこもり、外に出ないもの――。
そんな風に思っていませんか?
実際は、9割近くが近所のコンビニ程度の外出はしており、自宅から出ない人は少数、自室からもめったに出ないという人は稀です。
引きこもりは、昨年起きた2つの事件(登戸通り魔事件、元農水事務次官長男殺害事件)や「8050問題」が取り上げられたことなどから、大きな注目を集めています。
引きこもりという言葉自体も20年以上前から使われており、十分に浸透しています。
ですが様々なイメージや事件による報道が先行し、その実態が正しく理解されているとはとても言えません。
そこで本書ではその理解を進めるべく、引きこもりに関する様々な事柄を、支援現場に居る立場から書かせていただきました。
私が所属する「認定NPO法人ニュースタート事務局」は、1994年から25年以上、引きこもりなどの若者の支援活動をしています。
訪問活動と共同生活寮の運営がその中心で、これまで1600人以上を支援してきました。
私はそこで年間約150組(今年はかなり減っていますが)の親御さんの対面相談や、ブログやメールマガジンなどの文章での発信を担当しています。
本書のキーワードは、引きこもりにまつわる「多様性」です。
コンビニに通える人から、自室からもほぼ出ずに親も何年も姿を見ていないという人。
学生時代のいじめがきっかけという人から、10年同じ会社に勤めていた後に引きこもりになったという人。引きこもり半年という人から、30年という人。
親子で外食に行き仲良く会話する人から、親を骨折させるほどの暴力をふるう人。
健康な人から、精神疾患や発達障害がある人。
引きこもりと一括りにされますが、その実態はとにかく多様です。
私自身が相談を受けたケースや、団体として支援したケースを元にした事例を入れることで、その多様さがイメージしやすくなるようにしてみました。
多様な実態には多様な支援によって対応するしかありませんが、それゆえに親が迷ってしまうことはよくあります。
うまく解決できない親には、言いがちな言葉と定型的な考え方が共通してあります。
そうした状態から抜け出すためにはどうすればいいのか。
私たちの支援の実態から、親に求められる「変化」と「覚悟」についても記してみました。
本書は、引きこもりをあまり知らない方に向けて、なるべく客観的な視点で全体像を伝えることを目指して書きました。
正しい理解が、この大きな社会問題の解決への第一歩となるはず、と信じています。
[レビュアー]久世芽亜里(認定NPO法人ニュースタート事務局スタッフ)
新潮社 波 2020年10月号 掲載
〔2021年2/3(水) Book Bang〕
多様化する引きこもり 9割がコンビニOK、20年働いた後に引きこもる人も
『コンビニは通える引きこもりたち』(久世芽亜里・著、新潮新書)の著者は、1994年から引きこもりなどの若者の支援をしている「認定NPO法人ニュースタート事務局」のスタッフ。
訪問活動と共同生活寮の運営が同法人の業務の中心で、これまでに1600人以上を支援してきたという。
本書ではそんな経験に基づき、引きこもりと彼らを取り巻く状況について説明している。
ところで「引きこもり」という言葉を聞いて多くの人は、「ずっと家の中にいて、外に出ない人」を思い浮かべるのではないだろうか?
正直なところ、私の中にもそんな印象が少なからずあった。
ところが著者によれば、それは間違いであるようだ。
だとすれば、勝手なイメージと乖離した“リアルな“引きこもりの実態とはどのようなものなのだろうか?
アキラ君(仮名)は現在22歳。小さい頃から人間関係が苦手で、友人があまりいないタイプでした。
大学に入って間もなく不登校になり、そのまま中退。その後何もしないまま、約3年が過ぎています。
両親は働いているので、日中は家で1人。昼頃に起きて、家にあるものを食べながら、リビングでテレビなどを見ています。
両親が帰宅する夕方頃からは、自室でパソコンに向かい、ゲームをしたり動画を見たりして過ごします。
廊下で親と顔を合わせて話しかけられると、普通に返事もします。
家族が寝静まってから用意してある夕飯を食べて、そのまま夜中までパソコンです。
バイトしてみたらと親には言われるのですが、一度も働いた経験がなく、応募する勇気も出ません。
週に何度かは近所のコンビニに行き、もらっている小遣いでお菓子や飲み物を買います。
たまに電車に乗って、少し遠くまで服などを買いに行くこともあります。
年に2、3回は、好きなアイドルのコンサートに出かけます。(11~12ページより)
これは特殊な例ではなく、よくいる引きこもりの生活。
統計上でも、引きこもりと言われている人の9割弱は、近所のコンビニ程度の外出はできているのだという。
ずっと自室から出ることがなく、親が部屋の前まで食事を運び、食べ終わったら食器を廊下に出しておく。
親もそれを取りに行くだけで、何年も我が子の姿を見ていない――。
外出はできて、買い物時には店員と必要最低限の話はし、道端であった近所の人とも挨拶程度はするけれど、親しく会うような友人はいない――。
どちらも引きこもりと呼ばれる人たちのあり方だろうが、一般的には前者を思い浮かべる人が多いのではないか。
しかし実際の引きこもりは、後者のタイプが大半だというのだ。
さらに言えば、かつての引きこもりに見られたような暴力を振るタイプも少ない。
<きっかけは不登校というイメージも誤り>
また、引きこもりのきっかけは不登校だというイメージも根強いが、それもまた違うそうだ。
引きこもりの相談で一番多いのは、「学生時代はなんとかやってこられた。
就職やバイトの経験も少しはあるが、うまくいかずにやめてしまい、結局引きこもった」というケースだというのである。
だとすれば若い人と同じように、年齢を重ねた人たちが似たような道筋をたどったとしても不思議ではない。
事実、“高年齢引きこもり“も増えている。
ハジメさん(仮名)は現在50歳。大学を卒業し、バブル期に就職しました。
仕事内容はかなりブラックだったようで疲れ果て、7年後に一人暮らしから実家へ戻ります。
今度は運転手として就職し、あまり残業もない仕事で13年勤めますが、ケガをして退職することに。
その後は派遣社員として倉庫で働き始めます。
ですが、派遣法が変わった影響で3年で雇止めにあいます。
そこから5年間、仕事はしていません。(24~25ページより)
当初はまた職探しをしたものの、年齢制限に引っかかったり、面接で落ちたりと失敗続き。結局は、親への罪悪感を抱きながら引きこもることになった。
この年代の人たちの相談について著者が指摘しているのは、彼らに共通する“独特の閉塞感“だ。
なにしろその親も高年齢なので、親が相談に出向くことが難しい場合も少なくない。
また、その下の世代にあたる40代は就職氷河期世代。ほとんどの人は希望の職に就けたという経験を持たず、時代の閉塞感をそのまま引きずっているということだ。
そしてもうひとつ。高年齢引きこもり以外で、著者がもうひとつ心配している「見えにくい問題」が、女性の引きこもりだ。
内閣府の調査では、女性の引きこもりは15~39歳では36.7%、40~64歳では23.4%、全体では29.6%が女性だということになります。
私たちが受けている相談での女性の割合も、だいたい2割くらいですが、この2割には深刻なケースが多いのです。(28ページより)
引きこもりになった経緯や傾向もさまざまだが、特筆すべき点は母親との距離感。
母親とやたらに仲がいい人、よすぎて束縛というレベルになっている人、甘えから暴言暴力に至っている人など、母親と適度な距離感を保てている人が少ないという。
それにしても、なぜ女性の引きこもりは少ないのか。
興味深いのは、この点について著者が「仮説ですが」と前置きをした上で「家事手伝い」が関係している可能性があると指摘している点だ。
内閣府の調査でも、就労状況についての問いに「専業主婦・主夫」や「家事手伝い」と回答した人は、引きこもりに含めていないという。
つまり、男性なら引きこもりと呼ばれるようなケースも、女性だと家事手伝いとみなされる可能性があるということだ。
ましてや仲がよ過ぎるのであれば、家族がそのことをさほど問題視しないことも考えられる。
<引きこもり問題縮小化に向けた著者の提言>
かように引きこもり問題は複雑で、引きこもっている人たちの年齢や考え方も多種多様。
ましてや親の世代と彼らとの間には、社会との関わり方や価値観にも大きな相違がある。
また、これから先、引きこもりの人がさらに増えていくことも十分に予想される。
決して極論ではなく、身内の誰かが将来的に引きこもりになることもあり得るだろう。
では、われわれは彼らとどう接していけばいいのだろう?
なかなか答えが出そうもないこの問題について、著者は次のような意見を述べている。
引きこもりの問題はゼロにはなりませんが、100万人という現状からは脱することができるはずです。
それには、引きこもりの多様化を認識し、支援の多様化を推し進めるとともに、生き方の多様化の定着が必要です。
このスピードが、引きこもり問題縮小化のスピードにつながります。
そのためには上の世代は子ども世代の生き方を否定しないことが大切ですし、スピードを速めるには上の世代から積極的に歩み寄り、認める必要があります。
そうやって、時代の変化のスピードを速めるのです。(204~205ページより)
もちろんそれは、決して簡単なことではないはずだ。
しかし、長く引きこもっている人の多くは、生きる途中でつまずき、動けなくなっている状態にある。
だとすれば、そんな人たちに寄り添い、手を差し伸べることも必要ではないか。
そして、彼らの生き方や考え方、失敗体験などを認め、受け入れることこそが必要ではないだろうか。
〔2020年11/2(月) ニューズウィーク日本版【印南敦史(作家、書評家)】〕