非正規社員
非正規社員
非正規 雇用期限なしに 人材をつなぎ留め
契約社員やパート・アルバイトなど期間を定めて雇用する非正規社員を、無期雇用の契約に切り替える企業が増えている。
2018年4月から勤続年数で5年を超える非正規社員は無期雇用を申し入れできるようになり、対象は400万人以上に上る。
18年4月を待たずに無期雇用を認めることで有能な人材を囲い込む動きが加速してきた。
13年4月に施行された改正労働契約法に基づき、企業は無期雇用を希望する勤続5年超の非正規社員を正社員などに転換できる。
職務や勤務地を限定した正社員や、契約期間だけを無期にすることもできる。
さらに人手不足も深刻化し、人材確保が難しくなっている。
独自のルールで非正規社員をより待遇の良い正社員などに切り替えて人材の定着につなげる企業も相次いでいる。
コールセンター大手のベルシステム24は10月から、約2万2千人の非正規社員を無期雇用に切り替える。
働く人は勤務期間が6カ月を超えた段階で無期雇用を申し入れることができる。
コールセンター業界は慢性的な人手不足が続いている。
改正労働法が定めた5年よりも短い6カ月働いた人を無期雇用に転換し、人材確保につなげる。
日本生命保険はすでに勤続年数を問わず、有期雇用の社員約1000人を無期雇用に転換した。
パートタイムの従業員約6000人についても、18年4月から勤続年数が5年を超えた段階で希望があれば無期雇用に切り替える。
非正規社員の比率が高い小売業でも、法定の5年より短い勤続期間の非正規社員を無期契約に切り替える企業が目立つ。
高島屋は販売部門などで契約期間が1年を超えた約3200人の契約社員などを無期雇用に転換した。
有給休暇を消化できなかった場合に翌年に繰り越せる制度も設け、待遇も正社員に近づけた。
J・フロントリテイリングも契約社員約1800人のうち、契約期間が1年超の約1600人を無期雇用に切り替えた。
無給だった産前産後などの長期休職も有給にした。
福利厚生の人件費負担は増すが「安心して働ける環境を整えて人材確保につなげる」。
宝飾店のスタージュエリーは18年4月からの無期雇用転換を見据えて、契約社員の給与を正社員と同じ水準にした。
人件費は6000万円増える見込みだが、従業員の定着率が高まり生産性向上につながると見ている。
企業は非正規社員を人件費や業務の調整弁として、景気変動などに合わせて人員を増減させてきた。
今後は無期転換や正社員化で人件費といった固定費が増え、企業の収益を圧迫する可能性もある。
生産性を高めてコスト上昇分を吸収し、競争力の向上につなげられるかが問われる。
〔◆平成29(2017)年7月14日 日本経済新聞 電子版〕
大企業で働いても貧困 年収200万以下 3年で2割増 非正規雇用の急増で
資本金10億円以上の大企業で、1年を通じて働いても年収が200万円以下というワーキングプア(働く貧困層)が急増していることが、本紙調査で分かりました。
国税庁「民間給与実態統計調査」によると、資本金10億円以上の企業からの給与所得者で年収200万円以下の人が2012年の116・9万人から、15年の140・6万人へ1・20倍に急増しました。
株式会社だけでなく個人企業やその他の法人を含めたすべての事業所では、同じ期間に年収200万円以下の人は1・03倍でした。
全規模の企業に比べて大企業でワーキングプアが急激に増えていました。
背景にあるのは、大企業における非正規雇用労働者の急増です。
12年の149・0万人から15年の194・8万人へ1・31倍に増加しています。
同じ期間に、すべての事業所での非正規雇用は1・14倍の増加でした。
正規雇用労働者と非正規雇用労働者の賃金格差も、大企業ほど大きくなっています。
15年の調査では、すべての事業所の場合、非正規雇用労働者は正規雇用労働者の賃金の35・2%の額を受け取っていました。
一方、資本金10億円超の企業では、非正規雇用労働者は正規雇用労働者の27・1%しか受け取っていませんでした。
〔◆平成28(2016)年12月4日 しんぶん赤旗 日刊〕
政府 賃金差の説明義務化検討 正規と非正規 経済界、強く抵抗
政府は「同一労働同一賃金」の実現に向け、企業が正社員と非正規社員で賃金差を設ける場合、従業員への説明義務を法律に明記する方向で検討に入った。
来年の通常国会への関連法案提出を目指すが、経済界には抵抗感が強く、政府は働きかけを続けたい考えだ。
安倍首相は29日、政府の「働き方改革実現会議」(議長・首相)の会合で「賃金差は特に大企業で顕著で、是正の必要がある。
法改正についても議論してほしい」と述べ、同一労働同一賃金に意欲を示した。
現在、非正規の賃金は正社員の平均6割弱とされ、政府は欧州並みの7~9割を目標としている。
厚生労働省などは年内に開かれる同会議の次回会合に、一定の賃金差が許容される事例などを示すガイドライン(指針)案を提示する方針だ。
指針や法律への説明義務の明記は、「実効性を担保する上で欠かせない」(同省幹部)とみている。
ただ、企業側は人件費増を警戒しており、経団連の榊原定征会長は29日、記者団に「賃金は単に労働内容だけでなく、様々な要素を総合的に判断している。日本の雇用慣行は尊重してほしい」と語った。
〔◆平成28(2016)年11月30日 読売新聞 東京朝刊〕
首相「非正規の処遇改善を」 働き方会議
安倍晋三首相は29日、首相官邸で開いた働き方改革実現会議で、「非正規の処遇全般について目を向けていく必要がある」と述べ、
基本給や手当などの賃金に加えて福利厚生や教育、研修についても非正規の待遇改善を促した。
「同一労働同一賃金」に関しては、来月半ばに同会議でガイドラインを示し、労働契約法など関連法の改正を目指すよう指示した。
首相は「賃金の差は特に大企業において顕著で、是正する必要がある」と強調した。
基本給などの賃金は正社員、非正規の雇用形態によって一概に決めず、職務や勤続年数、配置転換の有無などの基準を定めて評価する仕組みを取り入れる。
正社員と非正規で差が生じる場合は、どのような差が合理的か非合理かを示す事例をガイドラインに盛り込む。
政府はこれらを踏まえた労働契約法、パートタイム労働法、労働者派遣法の改正案を早ければ来年の通常国会に提出する。
経団連の榊原定征会長は会議後、記者団に「今の給料の決め方が日本の競争力の源泉だ」と語り、同一労働同一賃金の導入に関して、現在の雇用慣行に留意すべきだとの認識を示した。
待遇差についての説明責任を企業に求めるかどうかについては、政府と経済界で調整が続いている。
政府は国内の労働市場の約4割を占める非正規の処遇改善をはかるため、同じ仕事には同じ賃金を払う同一労働同一賃金の導入を打ち出している。
現在は正社員の6割程度しかない非正規の賃金水準を、欧州並みの8割ほどに引き上げたい考えだ。
〔◆平成28(2016)年11月29日 日本経済新聞 電子版〕
正社員、1年で74万人増 非正規上回る 総務省調査
企業が正社員を増やしている。
総務省が29日発表した10月の労働力調査によると、正社員は前年同月に比べ74万人増え3405万人となった。
非正規は31万人増の2028万人だった。
正社員の増加が非正規を上回るのは2カ月連続だ。
企業は年末の繁忙期を前に、待遇のよい正社員でないと人手が集めにくくなっている。
厚生労働省が同日発表した正社員の有効求人倍率(原数値)は0.92倍と過去最高になった。
全体の有効求人倍率(季節調整値)も1991年8月以来となる1.40倍の高水準に達している。
10月の完全失業率は前月と同じ3.0%。
総務省の同月の家計調査によると、実質消費支出は前年同月比0.4%減だった。
正社員化による待遇改善が続けば、消費の活性化につながる可能性がある。
〔◆平成28(2016)年11月29日 日本経済新聞 電子版〕