とりで
とりで
所在地 | 山口県岩国市 |
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長州飛耳長目 7市16カ所に拡大「子ども食堂」「貧困」の枠を超えて 資金・物資・人員確保が悩み/山口
「子ども食堂」が県内でも広がっている。
地域の子どもに無料や低額で食事を提供する市民らの取り組みで、12日現在、山口、下関など7市の16カ所にある。
貧困対策にとどまらず、地域づくりなど多様な役割が期待されるが、課題も少なくないという。
岩国市のNPO法人「とりで」の活動から現状を探った。
「いただきまーす」。トレーの上には熱々のカレーと新鮮なサラダ。子どもたちは自由に座る場所を決め、友達やボランティアと食べ始める。
9日、とりでが運営する岩国市内の子ども食堂。
笑顔で食べ終えた子どもたちは、片付けを済ませると「遊ぼう!」と声を掛け合い飛び出していく。
午前11時から午後2時の間、常連の近所の小学生を中心に利用者は90人を超えた。
とりでは2016年、児童養護施設指導員だった金本秀韓(しゅうかん)さん(35)らが設立した。
毎週土曜日、市内2会場で交互に子ども食堂を開く。
子どもは無料、大人は500円。
食堂以外に学習・朝食支援もあり、主婦や社会人ボランティアがそれぞれの特技を生かして支えている。
12年ごろ東京で始まったとされる子ども食堂は困窮世帯向けと思われがちだが、ここは「誰でも参加できるオープンなスタイル」(金本さん)を常に意識して、習い事帰りのグループなど、気軽に立ち寄る子どもも多い。
「貧困家庭に限ると支援が必要な人ほど利用に抵抗感がある。誰でも来るのが普通なら、課題を抱える子も利用しやすく、ニーズに気付いて踏み込んだ支援ができる」
これまで、とりでを利用した子どもは計228人(16年5月~17年8月)。
このうち約2割は一人親家庭、約3割は就学援助受給家庭で育つ。
会話の中から問題を見つけ、支援につなぐこともある。
同時に多くの子どもにとって食堂は貴重な遊び場だ。
近くの平田小3年、重村佳里南さん(8)は「友達に会える。だから来る」と屈託ない。
とりでが地域の小学校に配ったチラシを見て足を運んだ40代の母親は「子どもが最初は緊張していたけど打ち解けた。いろんな人と関わる良い機会と思う」。
金本さんは、子どもが学校、家庭以外の大人と交流することで、地域づくりに結び付くと期待する。
一方、子ども食堂は全国共通の課題を抱えているという。
5月に県立大で講演した運営者団体「こども食堂安心・安全向上委員会」代表の湯浅誠・法政大教授が挙げた資金や物資、人員の確保だ。
とりでが受ける市の補助金も3年期限で利用できるのは今年度まで。
今後は企業と協定を結び、県ファンドなど各種助成金の活用が継続に不可欠となる。
ボランティア頼みの人員も安定とは程遠い。
その中で、金本さんが重視するのは地域や学校との連携だ。
当初は無料提供を不審がられ、学校にチラシ配布を断られたが、回を重ねて信頼を勝ち取った。
「学校の信頼は、食堂が本当に地域に根付くためにも必要だ」と力を込める。
地域の子育て家庭をサポートしながら、真に支援が必要な子どもに手を差し伸べる模索が続く。
〔◆平成30(2018)年6月18日 毎日新聞 山口版【坂野日向子】〕