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ページ名 任意団体サピア (発達障害にニュース、当事者の会・フリースペース・オンライン)
「これ」「あれ」理解できず…大人の発達障害、どうすればいい? オンラインで当事者会
就職後など、成人してから発達障害が判明する「大人の発達障害」。
最近よく耳にする言葉だが、どのような人々が、どのようなことで悩んでいるのか。
職場に当事者がいる場合、周囲はどのように接すれば良いのか。当事者や識者の話から考えたい。
任意団体「サピア」は2014年に発足し、大人の発達障害の当事者会を埼玉、神奈川、東京で開いてきた。
当事者は仕事や日常生活で「失敗しないように」と常にプレッシャーを感じていたり、周囲に障害を明かしていなかったりする。
当事者会は、気兼ねなく話せる憩いの場になっている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、現在はオンラインで開催する。
10月11日午後、オンライン当事者会に約20人が集まった。
6人の「スピーカー」が自己紹介した後、雑談やその日のテーマについてトーク。
他の人は「リスナー」として、画面に文章を表示させるチャット機能を用いて感想や質問を送る。
話題は仕事や相談先、人付き合い、旅行などさまざま。
難しい仕事を先延ばしにしてしまい、うまくいかず「無力感を感じる」という声や、「趣味のコミュニティーに参加しようとしたが、人付き合いがうまくいかなかった」という声も。
参加者は「私も」などと共感し、自分なりの対処法を紹介し合った。
スピーカーとして参加した30代の事務職の女性は、ADHD(注意欠陥多動性障害)の特性があるが、職場では明かしていない。
「他の人も失敗をしていると思い、安心して話せた。
いつか職場でも自分の特性について言えたらいいのかもしれない」と話した。
発達障害は、生まれつき脳の一部の機能に障害がある、ADHDやASD(自閉スペクトラム症)、LD(学習障害)などの総称。
サピアの参加者に特に多いのはADHDとASDだという。
ADHDは集中力が続かない、ケアレスミスをしやすい、じっとしているのが苦手――といった特徴がある。
ASDは対人関係やコミュニケーションが苦手で、強いこだわりがあるなどの特徴がある。
大人の発達障害は、就職や結婚相手との共同生活など、成人後に複雑な仕事を任されたり、複雑な人間関係を築いたりすることで表面化する。
当事者会に参加した神奈川県の会社員の30代男性も、受診のきっかけは職場の先輩に診断を勧められたことだった。
大学卒業後、産業機器のメーカーで機器の設計図を描くなど設計・開発の仕事をしている。
「指示と全く違う図面ができている」と周囲から言われたが、自身では全く分からなかった。
入社3年目までは「そのうち仕事を覚えてくるよ」と周囲がフォローしてくれたが、だんだん言葉をかけられなくなり、見放されているように感じた。
20代後半だった頃、ASDとADHDという診断を受けた。
耳で聞いた情報を処理することが苦手だったことも分かった。
「これ」や「あれ」といった指示語の意味する内容が分からない。
「前に使った資料を参考にして」と言われた時、「前」とは何月何日の資料か、資料のどの部分を参考にすればいいか分からない――。
診断を受けて、初めてどんなことが苦手かを知ることができた。
男性は上司などに自身の特性を説明。仕事の説明をする際は口頭に加えて文書化してもらい、後から目で見て分かる形で残してもらうようにした。
また、作業手順を丁寧に説明してもらっている。
その後、以前よりスムーズに仕事ができるようになった。
それでも、初めて人に会う時などは今でも「障害に気付かれないように振る舞わなければ」とプレッシャーを感じる。
当事者が集うサピアは心安らぐ場所だ。
「参加する誰もがある程度不得意なことがある。
当事者と話すことでつらさがなくなり、生活が良くなると思う」と言う。
◇発達障害の主な特徴
■自閉スペクトラム症(ASD)
・コミュニケーションが苦手
・対人関係を築くことが難しい
・興味関心の偏り、こだわりの強さ
■学習障害(LD)
・読む、書く、計算するなどの能力が全体的な知的発達に比べて極端に劣る
■注意欠陥多動性障害(ADHD)
・集中できない
・じっとしていられない
・衝動的に行動する
※発達障害情報・支援センターと厚生労働省「e―ヘルスネット」のウェブページより
〔2020年12/9(水) 毎日新聞【中川友希】〕