性暴力
性暴力
施設の子供間 性暴力の調査 厚労省、実態把握へ 国への報告規定なく
厚生労働省は、児童養護施設などの子ども間で起きた「キスをする」「身体を触る」といった性的な暴力に関する初の実態調査を開始した。
施設内での子ども間の暴力事案については法律上の規定がなく、自治体などが把握しても、国に報告したり、事実を公表したりする仕組みが整っていないため、表面化しにくい実情がある。
同省は年度内に調査結果をまとめ、対策につなげる。
調査は、全国の児童養護施設のほか、一時保護所や、保護された子どもを家庭で預かる里親などを対象に、アンケートで実施している。
2017年度に起きた子ども間の性暴力について、全てのケースの発生時期や場所、具体的な内容や発覚の経緯などを聞く。
性暴力には「身体的な接触」のほか、「裸を撮影する」「入浴時にのぞく」なども含まれ、子ども全員の入所前の家庭環境なども聞き取る。
2月中に結果を回収し、集計と分析を行う。
児童福祉法は、児童養護施設の職員による子どもへの暴力事案は、都道府県に公表するよう求めている。
一方で、子ども間で起きた性暴力を含む暴力事案は、法律上の規定がない状態となっている。
関係者の間では以前から、実態解明や対策を求める声が上がっていたが、今回の厚労省の実態調査は、三重県内の児童養護施設で多数の性暴力事案が起きていたことが判明したことがきっかけだった。
同県名張市内の施設に入所していた女児が11~12年にかけて、入所中の少年から性的な暴力を受けていたことが発覚。
女児側が起こした裁判で、同県が提出した証拠資料などから、県内の施設では、08~16年度の9年間に軽度なものも含め、計111件の性暴力が起きていたことが明らかになった。
厚労省家庭福祉課は「まずは実態を把握し、問題が起こった背景を解明して予防につなげていきたい」と話している。
親元などから保護された子どもは、全国に約4万5000人おり、このうち約2万6000人(17年3月末時点)が児童養護施設で生活している。
〔◆平成31(2019)年1月29日 読売新聞 東京夕刊 〕